ただ俺は、その時、「オミに前面に出てほしい」って言ったの。
リーダーとかメインとか。
チャンネルの看板のイケメンとして動いてくれなきゃ俺はやらない、って。
「…でも、今は二人でメインですよね? 」
「…うん…でもリーダーはオミでしょ?」
「あ…そうですね… 」
俺は照れ隠しに、
「で、なぜ音楽チャンネルじゃなくて心霊にしたんですか? 」
「二人で映像制作会社を経営しながらできるから。今なら色々わかるけど、当時は音楽ジャンルの料理のしかたもわからなかったし 」
…諦めたばかりのことに、向かい合うのもつらいですよね。すみません。
「それに、オミはホラー、俺は日本史好き。それを生かして動画を作り始めたんだ。〈礼霊ず〉としてね 」
…そこで…
カイさんの微笑みに…こういうところでは普通、安心しても許されると思うのだが…
「…でも…」
「えっ? 」
「俺はオミを恨んでる…」
「えっ? 」
「最初、バンドを組む時、オミがボーカルを引き受けてくれていたら、俺たちはプロのミュージシャンになれてたんじゃないかって思いが、今でも消えないんだ 」
突然のことに、俺は、何を言っていいかわからなかった。
「…オミを必死で説得したときの、放課後の教室の景色も忘れられないよ 」
一緒に苦労した親友で、仲良しイケメンYouTuberで売っている2人に、こんな裏があるものなのか?
俺は、頭がパニックになった。
「でも、それならなぜ、今、一緒に 」
オミさんは?
と俺が訊こうとしたのをさえぎって、カイさんは微笑んで言った。
「だから俺は、ずっとそばでオミの行く末を見届けたい。地獄の果てまでオミについてく。差し違えても構わない」