数か月前、私はポッケのついていない短パンを探し求めてひとり、ショッピングモールをさまよっていた。
ズボンにポッケは基本的には必須である。
なぜそんな不便極まりないものを必死になって探し回ってたのか・・・ともかく、そう、とにかく私はポッケのない短パンが早急に必要であった。
いくかの店をまわったあと得たのはそういった類のものはありそうでないという事実のみ。ほとほと疲れ果てていた。
残念ながらなかったからはい、そうですかと済む問題ではない。とにかく確実に3日後までにはポッケのない短パンを用意しなければならない。
そのとき私はおなかも空いていてかなり追い詰められていた。
そんなときに目に留まったのが、催事場のラグビーワールドカップの特設ショップだった。
そのときはまだ大会開幕直前。「タイミングがあえばニュージーランドのハカは観たい」くらいの認識だったがせっかくなので
ユニホームを着せられたマネキンを見る。
桜のマークが可愛らしい赤と白のストライプ。おや?
私は気がついてはいけないことに気が付いてしまった。イケナイと思いながらもユニフォームの上着から、ズボン、つまり短パン部分に視線をやる。
ない。ポッケが・・・ない!
助かった!長い旅もここで終わり。
レプリカユニフォームである。少々―のちに少々ではない金額に震えた―良いお値段であることは間違いないだろうが、ここであったが百年目。
買ってはやくラーメンを食べにいこうと決意した。
特設ショップ内は幸い、店員さんのほかにお客さんも何人かいた。店員さんは他のお客さんの接客で忙しい。これ幸いと棚を物色する。
しかしいくらショップ内の棚を見回しても、ズボンがない。上着(シャツ)しかない。
おかしい。まさか売り切れてしまったか。私は焦った。棚を行ったりきたりする。やはりない。店員さんに聞こうとも思ったがそんなハードルが高いことは腹ペコな今は無理難題に近い。
そうか、上着のほうが高いからみなズボンに流れたのか・・・
しばらく棚をかき回したあと、いいかげん私は悟った。
それでとぼとぼとショップを後にする。これでまた振り出しに戻ってしまったと嘆きながら。
むなしくラーメンをすすりながらも、往生際悪く某フリマアプリでおさがりを検索する。
だが、不思議なことにレプリカユニフォームのズボンはどこにもない。
さすがにここで私も気がついた・・・もしかしてズボンのレプリカはそもそも売っていないのでは、ということに。
収穫ゼロの寂しい帰り道、あれこれ思いを巡らし、私なりのある持論に達した。
それすなわち「上着はセーフ、だがズボンをセットにするとアウト」
レプリカユニフォームも上だけきつければ「応援着」だが、レプリカのズボンまでセットで履いてしまうこと、
それはもはや「コスプレ」で、ある一線を超えることなのだ。
思えばプロ野球のグッズ売り場でもレプリカユニフォーム(上着)しか観たことがない。ズボン(パンツ)はない。
つづく
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