空と無と仮と

渡嘉敷島の集団自決 沖タイ連合と曽野組の仁義なき戦い 前編⑧

沖縄戦に「神話」はない──「ある神話の背景」反論 第7回①

  • 西山A高地に住民が集合したのは軍の意思によるもの
  • 将校会議は証言をそのまま記録しただけ

 第7回の要点は上記の二つになると思います。

 一つ目の軍による集合についてですが、住民たちは米軍の攻撃が始まると各々の避難小屋や洞穴に隠れていたのに、全てが軍の意思が働いていたからこそ、それをわざわざ退去させて西山A高地へ集合させたということになります。そしてそういった指示を出していたのは「ある神話の背景」に登場する駐在巡査であり、むしろ「かり出された」のである、ということになります。
 ちなみに駐在巡査は「ある神話の背景」にて「自決命令は聞いていない」というような証言をしていると同時に、駐在巡査について太田氏は自決命令を出した軍側の「共犯者」という主張をしております。

 また「西山A高地に集合」というのは、住民たちが実際に集合した場所とは違うということも付言します。厳密にいえば西山は北山(方言でニシヤマと発音)」で、その北山とA高地は別々の場所にあります。
 そういった意味では少々混乱しておりますが、1985年当時は自決場所が確定できなかった事実もあるようですし、「鉄の暴風」でも恩納川原で自決したという明らかな誤認もありますから、こういった間違いは仕方がないものではないかと思います。

 住民たちに「集合しろ」あるいは「移動しろ」といった指示が出ていたのは間違いありません。ただし人によってはそれが上記の巡査だったり役場の職員だったり、あるいは防衛隊員だったりとまちまちな証言が多く、どのような経緯で指示が流れていったのかは現在でも不明なようです。それだけ混乱していたということぐらいしか判明しません。

 そういったなかで太田氏の主張は「軍の意思があったからこそ住民は集合させられた」のであり、その意志の中には「自決命令」も含まれている、ということになるのだと思います。
 そして住民が集合させられたという事実は、その主犯でもある赤松大尉が知らなかったはずはないとして、彼がウソをつくことを糾弾しているということになりますので、以下、長いですがわかりやすいように引用いたします。


 「米軍上陸が三月二十三日(空襲が始まったのが3月23日──引用者注)で、その翌日、赤松隊は西山A高地(原文ママ──引用者注)に移動している。その陣地の位置がまた問題である。赤松隊長自身、その移動先の陣地の場所を最初は知っていなかったと『ある神話の背景』に書かれている。(中略)住民たちが、赤松隊(第三戦隊──引用者注)がどこに移動したか知るはずがない。ところが、住民が新陣地である西山A高地の赤松隊の陣地付近に集まってきたのは、赤松隊が陣地をそこに移動したその当日である。住民集結には誘導者がいたのだ。軍の意思が働いていたのだ。」


 ちなみに、ここでいう赤松隊(第三戦隊)はその「陣中日誌」や「戦闘詳報」等を読む限り、全部隊が整然と一斉に移動したのではないようです。各中隊規模の部隊が米軍の攻撃を受けながらそれぞれ所定の場所に移動しました。
 赤松大尉が直接指揮する戦隊本部は集団自決の前日である3月27日に所定の位置に布陣し、一部の部隊は集団自決後に完了したそうです。

 「ある神話の背景」における「自決命令は出していない」「陣地の場所も知らなかった」「住民の集合も知らなかった」という赤松大尉の証言に対して、全て嘘だという太田氏の反論が、この場においてその理由とともに掲示されました。

 太田氏が主張するように、赤松大尉が嘘を言っているのかどうかについては、この論争の核心部分でもあると思われます。従って曽野氏はどういった内容で再反論しているかについてということになりますが、具体的な内容については「「沖縄戦」から未来に向かって」を取り上げた時に言及します。

 ここでは個人的見解として赤松大尉が嘘つきかどうかの考察をしたいと思いますが、「自決命令は出していない」「陣地の場所も知らなかった」「住民の集合も知らなかった」に関しては、嘘ではない可能性が高いという仮説を提示します。

 その理由として、まず「陣地の場所も知らなかった」については、赤松大尉自身が陣地を知る必要性が自決直前までなかった可能性があることです。
 「住民の集合も知らなかった」については、集団自決直前まで住民を把握することは困難かつ、把握する必要性がなかった可能性が高いという仮説が提示できるからです。

 この点については当ブログ「誤認と混乱と偏見が始まる鉄の暴風」にて詳しく考察しておりますから、ここではこれ以上は言及いたしません。興味のある方は是非ご一読をお願いいたします。


次回以降に続きます。

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