我が町にはもう一か所秘境がある。奥鍋谷と山を隔てた谷合から潺を100m近い標高差を登ったところにある蟹淵である。流れ込む川は無いが、湧き水によりいつも水を湛え、流れ出る水は、細い登山道が谷合につけられている谷の潺となって下っている。
蟹淵と水の流れ出口
ここも奥鍋谷と同様、一昨年の豪雨により山崩れを伴って水が溢れ、植林の杉や登山道も押し流されたままになっている。
昨年は登ることが叶わなかったが、今年は立ち入り禁止ではなくなったので意を決して11日に様子を見に行った。登山道はすぐに無くなり、それ以上登るには巨大な倒木を避け、谷を埋めている2m近い巨岩の落石の合間を縫ったり、よじ登ったりして上るしかない。ちょっとした沢登りである。半分くらい登ったところで、大きな倒木や岩に阻まれ半分諦めかけた。ただ、登りの距離は今までの経験で理解しているので、クマ鈴を鳴らしながら岩をよじ登り、蟹淵入口が見えるところまで登ることができた。前方の障害物は、樹齢100年は越すと思われる大きな杉の倒木と背丈に迫る巨岩、一瞬、もうだめだ、やめようと思ったが此処で諦めるわけにはいかないと、気を取り直し何とか登れるところを探して蟹淵の入り口に到着できた。普通だと20分くらいで登れるところを1時間もかかった。
蟹淵の標識が目に入った。
蟹淵の標識
少し傾いていたが倒れずに立っていたので少し安堵して池を見渡すと、幸いどこにも崖崩れがなく、一昨年迄見て来た静かな池の水面であった。
蟹淵入口から奥を見る
この池の奥にはルリイトトンボが生息しており、交尾時に作るハート形が美しく人気がある。またモリアオガエルが多く産卵することでも有名である。池の周回路を通って奥に回るとルリイトトンボが美しい姿を見せてくれた。
ルリイトトンボ
水草の底が見えるほどで水の濁りもほとんどない。
例年と変わらない蟹淵の水草
数はまだ多くはなかったが連結したペアも見ることができた。
連結したルリイトトンボ
さらに探すとハート形連結ペアも見つけることができた。
ハート形連結ルリイトトンボ
そのうち水面より弱弱しく飛ぶ個体が岸に飛んできた。
羽化したばかりのルリイトトンボ、下程、翅が乾燥している
オスかメスかは俄かには判断しにくいが、オスが先に羽化しメスが遅れて羽化することを考えれば多分メスであろうと思われる。
ルリイトトンボの写真も撮れ、池の無事に安堵し、帰りはモリアオガエルの卵を探しながら池を一周してみたが、今年はなぜか数が少なく1個しか見つけることができなかった。大雨の何らかの影響があるのかもしれない。
モリアオガエルの卵
下りがまた大難儀であった。登りの際少し状況を把握したので、できる限り危険が少なく易しそうなルートを選んで、半ばずり落ちながら下りた。下りにも1時間かかった。
なんとか岩の難所を抜けたところでミドリシジミを見つけた。
オオ(?)ミドリシジミ
正確な同定は難しいが、今のところオオミドリシジミだと思っている。強行軍に対するご褒美だと受け取っておきたい。また、無事下山できたことに感謝したい。もちろん、慣れない方がこのような行為をすることは絶対禁物である。かくいう私も妻から登山禁止を宣告された。それから3日間、今度は肉離れではなく筋肉痛が続いたが今朝には回復した。懲りない私である。