バリ記 

英語関係の執筆の合間に「バリ滞在記」を掲載。今は「英語指導のコツ」が終了し、合間に「バリ島滞在記」を連載。

バリ記19 研修始まる

2019-12-23 11:11:42 | バリ記
2000年3月11日
研修始まる


 エステで働いてくれるスタッフがほぼ集まり、研修がスタートした。九日から日本語と英語の研修もスタートした。
 一ヶ月で必要な日本語と英語を教え込むのに、バリに来る前にテキストを作成した。エステの経験がないので、想像だけで作るのである。
 また必要な言葉だけを覚える、というのは無理がある。契機がないと憶えれるものではない。
そこで、僕が言った言葉を身振りする方法で30分ぐらい行う。例えば、
「手を伸ばしてください。」と僕が言うと、みんなは始めは何て言っているのかわからないのだが、何度も言い最後には手を伸ばす動作を示すと、「Te o nobashite kudasai」は「手を伸ばせと言っているんだ」と理解する。「右手を上げてください。」「左手を上げてください。」「両手をおろしてください。」「おかけください。」などなど、一日に十ほどの訓練をする。三十日すれば三百の聞き取りができるようになるはずである。
 次のコーナーでは役割練習を行う。電話や受付、応対などの練習をする。
つづいて「ひらがな」の読み方と書き方を指導し、関連単語をおぼえさせるのである。
インドネシア語は一切使わず、日本語と英語で同時に行う。
スタッフは二十代と三十代の女性ばかり。バリ出身者、ジャワ出身者。熱心で外国語をキャッチする感覚は日本人は及ばないように思う。言葉は耳から、ということをよく知っているのだと思う。2時間の集中レッスンは大変だろうが、みんなよく頑張っている。
ここまでスタッフを育成してゆくエステの店はないと思うから、たぶん彼女たちの村ではきっと良さそうな会社だと噂しているに違いない。
 バリでは噂は一日で広まるから、この波及方法を知っておくことが後々のために大切だ。
このホームページを見て、自分もエステ・マッサージを習いたいという申し出があったMさんがたいへんな助っ人で、僕の時間がすっかり空くことになり、今日はザ・レギャンというホテルとオベロイに僕らが作ったバリの花から作った香水を売り込みに言った。
 
 オベロイには何度か泊まり、好きなホテルのひとつだがザ・レギャンはオベロイよりも広々した感じはないが、ずっと現代的なホテルである。フロントからプールと海の境界がなく、波の向こうにさざめき立っている。波の音が遠くでするのではない。近くでするのだ。そこはオベロイと同じである。71室全部スウィートということだ。
「やっぱりバリにはリゾートで来なくては・・・」などと思う。

2000年3月12日
今日はゆっくり


 今日は、バリ島は朝から小雨が降り、昼になっても止みそうにもない気配だ。レギャン通り沿いにあるホテルのレストランで朝食をとっていると通りの雨の風景がおもしろい。
新聞売りの少年達は帽子だけをかぶり、雨の中を客を見つけるのに忙しい。傘をさして歩いているのは観光客だけだ。
 ちょうど日本の梅雨のようだ。もしかしたら、もうじき雨季が明けるのかもしれない。
久しぶりに今日は日曜日なのでゆっくりしている。
ちょっと頭に思い浮かび、興味があるとホテルのオーナーやスタッフに聞く。そして、またあれこれと思い浮かべる。
 例えば、バリの三大神ブラーマ(誕生の神)、ウィヌス(創造の神)、シワ(破壊の神)、この三神が調和して世界は守られるという。その象徴として何かがあるのだろうか、と思うと聞きにいく。すると、どの家にも三神の調和を表すオムカラというシンボルマークがあるのだ。キリスト教の十字架みたいなものだろうか。
例えば、バリの女性は、髪を洗うとき、どうするのだろうかと思う。すると、まず、ココナッツオイルで10分ほど髪と頭皮をマッサージし、次にシャンプーをし、洗い流して終わりだそうだ。ココナッツオイルの代わりに、ハイビスカスの葉をつぶして液をつくり、それを髪にふりかけマッサージするのだそうだ。
こういう一日は楽しい。人の声、鳥の声、雨音、ムッとする草いきれの匂い、目に入る涼しげな花。
ぜいたくな時間と空間である。

バリ記11

2019-12-23 10:34:46 | バリ記
2000年1月18日
悪霊


 例えば、アクエリアスホテルの場合、レギャン通りに面してホテルがあるにもかかわらず、通りからホテル内が見えないようにしている。わざと木や障害物を作り、見えないようにするのだ。これがあるために、ホテルなのか何なのかわからない。
クタ・パラディソもやはり通り沿いにフェンスがあって、車の出入り口が、そのフェンスの両横にあり、ホテルの玄関はちょうどフェンスの裏側になる。通りからは、玄関は見えない。
アクエリアスのオーナーに、あの植物や階段(フェンスになっている)をとってしまったら、ホテルとよくわかるのでないか、と言ったところ、笑いながら、「ノー、ノー」と言う。悪霊が入ってくるのを、その障害物が防ぐのだと言う。

 NHKのバリ特集で、ウブドの宮殿に入るところがあったが、門扉を開くと壁のような障害物があり、そこにランダの石彫があった。奥に進み、また扉をあけるとランダがいた。
 これは、単なる宮殿だけでなく、住居としての建物の場合、風水的な発想が信じられているのである。アクエリアスのオーナーは、ホテルの敷地内に住んでいるからそうなるのだろう。
たとえ、オーナーは住んでいなくても、大切な命を一時にせよ預かるのだから、ホテルも一様に同じである。僕らの方から見れば、何と非効率な、と思ってしまうが、彼らにしても本当はよくわからなく、そう言われているから、という説明になるのだろうが、これを科学的に証明してしまう日が来るかも知れないと思っているので(例えば、磁場の関係とか)彼らが正しいのかもしれないから、笑って、そうか、そうかとうなづくだけである。

 今日もまた推測に過ぎないが、バリならバリという島で、昔から信じられて行われているものは多く、その土地の”地球上の位置”そこから生ずる地理的風土と関係しているかもしれない。
 いつでも西方浄土に行けるように、西側をあけておくとか、北枕は死んだ時にするものだとか、日本にもいろいろな信じ方、言われ方があるが、それは宇宙の中の地球の自転や公転、対極のことなどから、なんとなくそこに生きる人々は知ってきたのかも知れない。
本当の理由こそわからないが、なんとなく感じ、知ってきた目に見えない力を、例えば一つの例として「悪霊」などと呼んだ。

 誰が気づき、誰が言い始めたのか、人間の生活の積み重ねとして、現在に至っている。
 不思議としか言い様がない。本当の理由はわからないのに信じつづけるということがである。馬鹿にしているのではない。本当に不思議な共同幻想である。