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最近読んだ小説レビュー Vol.28 【ネタバレ少しアリ】

2007年02月09日 | 小説レビュー
ここ最近、読んでいないストックの小説を減らすために読んでいってるんですが、最初の頃のような楽しみで読むというスタンスが薄れ、消化試合のように一冊一冊こなす、みたいな感じになってきてる。これはいかん。

でも、辻仁成の『ミラクル』を読んで、ちょっとは昔の頃を取り戻せたかも。


『ミラクル』/辻仁成

<感想>
この作品との出会いは、高校か中学、どちらか忘れたけど国語の教科書だった。お母さんを知らない子供アルの「お母さんとは何か」を模索し、探し始める話だったことだけ記憶にあり、古本屋に行ったら100円だったので、懐かしくなった買った。

改めて読んだら、やっぱり教科書になるようなシンプルな構成、シンプルなストーリー、シンプルなメッセージで、すごくわかりやすく、そして切なくも微笑ましい話だった。読んでよかった。

アルは「お母さん」というものを全くしらない。感覚で云えば、僕たちが「宇宙人」を知らないのと同等くらいに。だから、「許してくれるのがお母さん」という情報だけで赤の他人のお母さんにわざとイタズラして、「許してもらえたらこの人が僕のお母さんだ」という直感的行動は見ていてちょっと泣きそうになる。

父のシドは、とっくに死別している母の事をアルに言い出せず、少しでも安心させるために「雪が降ったらお母さんが帰ってくる」と云う。だから、雪が降る前に雪の降らない街へ移動する日々が続く。そのたびにシドは心を痛める。

ラストはあえて言わないけど、最後、アルは成長する。その光景はやっぱ泣けてくる。お母さんがすでに死別していることを本人は知らないから尚更。その時、シドの行動と読者がリンクします。そして微笑ましく思える。

この作品は、僕は教科書の時は子供のアル目線で読んでいた。けれど、今回は同時にシドの、大人目線でも読むことができたので、感情が高ぶった。こういうハートフルな話も久々に読んでみるものだな、と思いましたね。マンネリ化しつつある読書のいいカンフル剤になったと思う。

この小説は内容的には短編以上中編未満で、文章も読みやすいので、おすすめです。新品でも380円ですし。

そして、教科書で一度読んだ事のある人は、プラス懐かしめます。




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