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最近読んだ小説レビュー Vol.29

2007年03月21日 | 小説レビュー
最近、生活ががらっと変わり、まだ読んでない小説が十数冊も残ってるんだけど、なかなか手がつけられない。

綿矢りさの『夢を与える』も長編やからなかなか進まない。

だけど、少しずつではあるけど、何とか読んでます。


『エスケイプ/アブセント』/絲山秋子

絲山さんの小説は以前、「エソラ」という特別編集のオムニバス本で見かけた事はあったんですけど、全部ひらがなで挑戦されていたので、「こ、これはさすがに読むのが辛い……」という理由で断念しました。

で、今回、ジュンク堂でサイン本が売ってて、「おぉ、これはレア」と思い、さらに帯のキャッチコピーの「悪いな、おれは必死だよ。でも必死って祈ることに少しは似てないか」に惹かれて買う事にした。

まず最初の1,2ページ読んで、文章のセンス、テンポが気に入った。読み進めるうちに、以前の「オールひらがな書き」といい、この人はかなり引き出しを持ってるなと思った。で、テンポが軽やかなので、すぐに読みきった。

感想としては、「こんな純文もありなんだ」というもので、純文というフィールドの中の表現の広さを改めて知った。

タイトルセンスも音楽の両A面シングルを彷彿とさせる感じで、内容的にも「エスケイプ」は兄目線、「アブセント」は弟目線、なので単なる短編集ではない事がわかる。

多分、絲山作品は、作品によって好き嫌いが分かれる部類だと思うけど、逆にハマれば次が読みたくなるタイプでもあると思う。現に、もっと絲山作品を知りたいと思った。


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『星へ落ちる』/金原ひとみ (『すばる2月号』掲載)



金原ひとみは『蛇にピアス』で出会い、『AMEBIC』でファンになった。とにかく常に新しく、新鮮でセンセーショナルな文章を読ませてくれる。「こんなんありかよ!」という僕が持つ先入観を毎回壊してくれるので、いつの間にか彼女の才能に惚れてる自分がいた。

攻撃的でネガティブな感覚を持つ主人公の作品が今までのカラーとなりつつあったんだけど、この『星へ落ちる』という短編ではそのカラーを壊している。

全く間逆の、むしろ主人公の純粋な恋心を描いていて、今までシュールに描かれてきた性的なシーンも全くない。引き出しの多さを見せる作品だと思った。

さらに同時期に『ミンク』と『ハイドラ』という短編を他誌で掲載されていて、それは読めてないんだけど、その二作の内容もこれまでの彼女の攻撃的なイメージが払拭されているらしい。

彼女は作品を発表するたびに新しい一面を魅せてくれるから、読む側も「次はどんなものを読ませてくれる?」と楽しみになる。単行本が待ち遠しい。



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