コロナ禍では持病のある高齢者には安楽死カードを

新型コロナウイルスが発生し、所謂エクモを若い人に高齢者が譲るカードが取りざたされています。

『意思カード』です。

新型コロナウイルス感染症に罹患すると、『水の中でもないのに溺れる感覚』にとらわれ、呼吸不全を起こすといわれています。

高齢者はその段階で絶命するのでしょう。

決定的な治療薬も、有効なワクチンも存在しない厄介な疾病。

高齢者だってエクモを付けてもらって最後まで頑張りたい。

でも、若い人に優先的に装着することが当然のように論議されているのは、『病気を持っている高齢者は早く死んでくれ』という風潮があるからです。

高齢者だって命が惜しい。

人工呼吸器をつけてもらえず、得体のしれないクスリを漫然と投与され、溺れる感覚の中で最後の瞬間を迎えるのは嫌なのです。

ましてや『意思カード』などという曖昧な『苦死カード』を渡されてベッドの上で苦しみながら死ぬのは生存権の侵害では。

ならばいっそコロナウイルスに限って『安楽死カード』を認めるべきでしょう。

 

今日、京都の52歳(当時)のALS患者が薬剤を投与されて死亡し、2人の医師が逮捕されました。

ALS・・・最終的には自らの意思は眼の動きのみでしか表現できず、人工呼吸器や胃婁で命を長らえざるを得ない、原因不明の進行性の疾患です。

https://www.nanbyou.or.jp/entry/52

女性患者はまだ、電話など掛けられる状態だったのでしょう。

難病は家族や医師に苦痛を伴う選択を迫ります。

義母がグループホームに入所中、深夜倒れて脳出血で意識不明に陥って運ばれた搬送先で、医師は胃婁の増設を勧めました。

意識がないのに胃瘻造設？

立つことも歩くことも発語することも困難になる障害患者に胃婁を増設することは、本人にとっても家族にとっても拷問に近く、意思の疎通のできなくなった患者に安易に胃婁を増設する現在の医療体制には問題があると、かねてから考えていました。

人間としての尊厳を失っている植物状態の患者に、養分のみを与えて生きながらえさせるのは悲惨です。

義母を見舞いに行くと、半分開いている目で『早く何とかしてくれ』と訴えられているようで、本当に辛かった。

ALSの女性患者は、まだ自分で意思表示ができるうちに、医師に依頼して安楽死を選択したのでしょう。

また、依頼を断らなかった医師は、患者の苦痛を取り除くという医の本来の姿を全うした、仁徳をもった医師ではないかと、蟷螂は思います。

唐沢版『白い巨塔』のラスト間際の法廷シーンで、里見先生が『人はみな、いつか死ぬものです』と言い、『医療の現場で大切なのは、その死までの期間を患者がどのように生きるか、医師がそれをどのように手助けできるかに尽きると思います』とつづけます。

つまり、最後の瞬間を覚悟を持って迎えられるかどうかが、本人にとっても家族にとっても大切なことだというのです。

2人の医師は、おそらく十分患者と話し合い、医師は逮捕も覚悟の上だったのでしょう。

蟷螂が心臓手術で麻酔をかけられたとき、あっという間に意識を失い、目を開いた時には手術が終わっていました。

ALS患者の女性も、なんらの苦痛もなくあの世へ旅立ったのではないでしょうか。

少し早すぎる、しかし、天寿を全うできたと蟷螂は思います。

そこで蟷螂は新型コロナウイルスのこの時代、持病を持っている高齢者には『意思カード』よりも『安楽死カード』を持たせることが必要なのではないかと、強く思っている次第です。