毎日新聞 12月26日[金]13時36分配信
理研調査委が小保方氏による不正と認定した図表類
新たな万能細胞として大々的に発表されたSTAP細胞の論文は、
公表から約11カ月を経てほぼ全面的に否定された。
理化学研究所の調査委員会は、STAP細胞は既知の万能細胞「ES細胞[胚性幹細胞]」由来と
ほぼ断定したが、混入の経緯は不明のままの幕引きとなった。
委員長の桂勲・国立遺伝学研究所長は「証拠がなく、[混入が]過失か故意かを断定できないので、
不正とは認定できない」と、
一連の調査の限界を口にした。
【大場あい、千葉紀和、清水健二】
【STAP論文「ほぼすべて否定」理研調査委が結論付け】
東京都千代田区で開かれた記者会見では、調査委員7人全員が登壇し、
3カ月余りに及んだ調査の結果を報告。
桂氏は「STAP細胞がなかったということは、科学的検証からほぼ確実だ」と
はっきりとした口調で述べた。
だが、ES細胞を誰が混入したのかの特定には至らなかった。
調査委は、論文著者の小保方[おぼかた]晴子氏[31]が
STAP細胞作製時に所属していた研究室の見取り図を示しながら、
混入可能な経路や鍵の取り扱いなどについても説明。
無人になる時間帯も多く、誰でも混入は可能だったと結論づけた。
「関係者に『ES細胞を混入したか』とぶしつけな質問をしたが、
全員否定した。
誰が混入したかが分からなければ、故意か過失かも決められない。
科学者として証拠がないとしか言えない」と、桂氏は唇をかんだ。
桂氏によると、小保方氏本人は混入の可能性を認めたが、
「私が混入させたことは絶対にない」と答えたという。
小保方氏は4月の記者会見では「混入が起こり得ない状況を確保していた」と主張していた。
一方、今回新たに認定された画像2点の捏造[ねつぞう]について、
小保方氏は意図的に行ったことを認めたという。
捏造が認定された図の一つは、増殖した細胞の数を点で示したものだったが、
「すべての細胞を数えたわけではない」と答えたという。
結果的に「おかしなことがいっぱいあるのに、[論文が]
非常に優れた研究者の目を通って表に出てしまった」[桂氏]
要因について、桂氏は、小保方氏が所属していた若山照彦・山梨大教授の研究室の問題を強調。
「生命科学の研究者は普通論文の元データをチェックするのに、若山研ではしなかった」と批判した。
一方で「特殊な研究室で起こったことではなく、どこの研究室でも起こりえる」とも指摘した。
「倫理教育も捏造改ざん盗用についての教育ではなく、
広い観点から責任ある行為を身につけるものでなければならない。
自然の謎を解く喜びと、社会的責任を果たすという科学者の基本を忘れてはならない」と訴えた。
STAP細胞問題を巡っては、理研の調査委員会がいったん画像データの不正を認定した後、
改めて別の疑義についての調査委ができるという異例の経過をたどった。
調査委報告後の記者会見で、理研の川合真紀理事は
「ここまでの事実が最初から予想されていたかというとそうではない」と弁明。
「調査委のミッションはその都度決めている。[二つの調査委]合わせて全貌が解明された」と、
対応が適切だったとの見解を強調した。