しかし、この「昼食後の1時間分の昼寝」という、医者になってほぼ毎日の習慣と化していた睡眠がなくなることで、その分どこかにしわ寄せがくるのではないだろうかと心配にならないのでしょうか。
私もちょっと心配したのですが、どこにもしわ寄せはきませんでした。
昼食後に眠くならないまま夕方までずっと仕事をして、その後、いつもの居酒屋さんで夕食(野菜妙めと焼き魚、1杯のビールとその後は焼酎) を食べて帰宅しても、眠気は襲ってこないのです。その後は、焼酎水割りやウイスキーのハイボールを飲みながら仕事を続け(ちなみに酒のつまみは一切食べない)、午後u時すぎにスイッチが切れたようにベッドに倒れ込んで昏々と眠り、翌日朝5時に何事もなく起床(年寄りは朝の目覚めが早いのだ) するのです。
何日続けても、このパターンが続くだけで、不眠症になるわけでもなければ睡眠障害が起こるわけでもなく、その他の不愉快な症状も見られないのです。
それどころか、朝の目覚めが非常に爽やかなのです。
これは、二日酔いしなくなったからです。具体的に言えば、胃のムカッキと吐き気という、二日酔いの不快な消化器症状がないのです。酒量が過ぎれば、朝起きても「酒が残っている」症状はあるが、消化器症状は皆無なです。
ようするに、飲酒量は減らしていないのに、二日酔いだけが消失したわけです。
私は20歳になる前から酒の味を覚え(もうすでに時効成立と思うが)、以来、30年以上酒を飲まない日がないという休肝日なしの酒好き人間ですが、糖質制限を始めてから、ものの見事に二日酔いをしないのです。
二日酔いがないから、「スッキリ爽やか」な目覚めなのです。
じつは、糖質制限を始めたころ、宴会のシメの雑炊があまりに美味しそうだったので(目の前のふぐ鍋の雑炊を我慢できる人はそうそういないと思う)、それを茶碗1杯食べたところ、翌日に猛烈な二日酔い症状に苦しんだことがあります。韓国のチゲ鍋でシメに入れたインスタントラーメンを食べた暗も、寿司屋の宴会で最後にお寿司を1人前食べた時も、申し合わせたように翌朝は二日酔いになりました。
ようするに、二日酔いになるかならないかは、飲んだ酒の量ではなく、糖質を食べたかどうかだけなのです。これは医学的にも説明できるのです。食物が胃袋に留まっている時間のことを、胃滞留時間といいます。一般的には、胃滞留時間の短いものを「消化がよい食べ物」と呼んでいます。では、肉・魚とご飯・麺類では、どちらが胃滞留時間が短いでしょうか?
一般的には、「ご飯や麺類は消化がよい。しかしお肉は消化に悪い」と言われていますが、これが大間違いなのです。肉や魚などのタンパク質は、胃酸で速やかに消化されて小腸に送られるため、胃滞留時間は数十分程度です。逆に、ご飯や麺類は胃酸では消化されず、いつまでも胃のなかに留まっています。
ようするに、「ご飯やうどんは消化によい」と世間に流布している常識のほうが、間違っているのです。このことは、消化器内科や消化器外科の医者なら、日常的に実感しているはずです。
たとえば、緊急内視鏡検査では、普通に食事をしたあとの状態の胃のなかを見ることになるし、十二指腸潰瘍穿孔で急性腹膜炎が起きた時には、緊急開腹術が行なわれ、胃袋を切開することになります。そんな時、きまって目に入るのは、米粒と麺類と野菜です。
しかし、ステーキを食べた直後でも、肉の塊はどこにもないのです。かき消したように肉は姿を消しています。
これは一般の人も目にすることができます。泥酔して吐いている人のゲロを観察してみてほしい(もちろん、頼まれても見たくないものの1つがゲロであるが)。ゲロの中身は米粒、麺類、そして野菜だけであり、肉の姿はどこにもないはずです。
ついさっき焼き鳥や唐揚げを食べていたのに、それらはどこを見ても見つからない。ようするに、胃袋のなかの肉や魚はすみやかに姿を消すのに対し、いつまでも居座っているのはご飯と麺類、つまり糖質なのです。ここで話を二日酔いに戻します。
宴会で、「シメの雑炊・うどん」や、「酒のあとのラーメン」を食べたら何が起こるのでしょうか。そう、雑炊のご飯や麺類は何時間も胃袋に居座り続け、その間、胃袋はそれらを消化しようと胃酸を出し続けるはずです。
午後1時に「シメの雑炊」を食べ、自宅に戻って12時に寝たとしても、おそらく午前3時か4時までは胃酸は出続けているのです。
そして翌朝、目が覚めた時、逆流性食道炎特有の胃もたれ症状と、胃部の不快症状に悩まされるでしょう。
逆に糖質制限の場合、夜1時までステーキと焼き鳥を食べたとしても、30分後には胃袋は空っぽ状態になるから、胃酸はそれ以上出ず、朝起きた時も、逆流性食道炎のような症状は起きないのです。
「酒のない国に行きたい二日酔いまた三日目には帰りたくなる」という江戸狂歌があります。まさに、酒飲みの心の内を代弁してくれる名歌(? ) ですが、糖質制限を始めたことで毎日二日酔い知らずになり、「酒のない国に行きたい」と思うこともありません。
酒飲みというのは、酒は大好きですが、二日酔いは大嫌いです。
しかし、酒と二日酔いは不可欠の存在だと思っていたので、二日酔いになることがわかっていても酒を飲んできたのでしょう。
糖質さえ摂取しなければ、二日酔いの原因は酒ではなく糖質だとわかります。
お酒もウィスキーやブランデーなら制限がない - 糖質オフ効果 https://memo-note.com/off/2017/06/post.html