僕は少女時代のユナが一番好きな女優だが、現在新宿のシネマートでユナの最新主演映画、『手紙と線路と小さな奇跡』が上映されているということで、先日足を運んだ。ミニシアターでもユナの新作が日本の映画館で観れるというのは何とも嬉しい限りである(韓国では昨年公開された作品)。
ユナはドラマでの主演は多いが、映画での本格的な主演は、『コンフィデンシャル/共助』(2017年)、『EXIT』(2019年)に続き、2年ぶりの主演作となった。『EXIT』も公開当時、横浜の映画館に観に行ったのが懐かしい。監督は、大ヒット映画『Be With You~いま、会いにゆきます』のイ・ジャンフン監督、待望の3年ぶりとなる新作でもある。
物語は実話に基づいており、最寄駅が無い為に線路を歩いて遠くの駅まで行かなければならない不便な韓国の田舎町を舞台にした、感動の物語となっている。行き来出来る道は線路しかないのに、肝心な駅が無い村。大統領に今日54通目の手紙を送ったジュンギョンの夢はたった1つ。それは村に駅を作ること。駅なんてとんでもないという原則主義の機関士の父テユンの反対にもめげず、姉のボギョンと共に村に残り、高校までの往復5時間の通学路を通うジュンギョンは、天才的な数学の才能に教師から一目置かれていた。そんなジュンギョンの非凡さを一目で見抜いたクラスメイト、自称“女神(ミューズ)”のラヒと共に説得力のある手紙を書くため正書法の講義、テレビに出て有名になる為の”高校生クイズ“1位の大統領賞獲得に向けた数学大会の受験など、駅の実現に向けて奮闘する物語だ。
舞台となったのは韓国東部に実在し、国内初の私設駅である両元(ヤンウォン)駅。道路が整備されていないため住民は隣町へ移動する際に線路を歩いて通らなければならず、住民からの請願により臨時乗降場として1988年に開業された。ホームなどの駅の設備は全て住民の負担で設置されたという実話をモチーフに描かれている。
登下校だけで5時間かかるため村に駅を作ることを夢見る数学大会1位の天才高校生ジュンギョンに扮するのは、『それだけが、僕の世界』のイ・ビョンホンの弟役をはじめ、最近では『ただ悪より救いたまえ』で数々の映画賞を受賞し、ヨン・サンホ監督が手掛けたNetflixオリジナルシリーズ「地獄が呼んでいる」にも出演するなど、圧倒的な演技力を誇るパク・ジョンミン。そして、ジュンギョンをサポートするクラスメイトである自称“女神(ミューズ)”のラヒ役に俳優としての目覚ましい活躍が続く少女時代のユナ。さらには『工作 黒金星と呼ばれた男』や『KCIA 南山の部長たち』などで素朴な雰囲気から強烈なカリスマ性まで自由自在にキャラクターに染まるイ・ソンミンが、ジュンギョンの父親で機関士のテユン役を務めている。韓国で最も小さな駅作りを通して描かれる夢への挫折と希望、人と人の絆が紡ぐラストは温かな笑いと、奇跡を巻き起こす物語だ。
ネタバレになるのであまり書けないのだが、この映画は単に駅を建設する村民の感動物語というだけでは無いのだ。ジュンギョンの姉、ポギョンにも実は衝撃の事実があり、また機関士をしている父との間にも辛い過去の物語が明らかになっていく。その意味でなんとも切なく、美しい家族の物語が映画の中心となっている。前半は比較的ジュンギョンとラヒのもどかしいラブコメな展開が楽しめる。しかし、後半は一転して予想外で感動的な展開となるのだ。脚本もなかなか素晴らしいと感じた。事前に全く予想していなかった衝撃の展開になるので、思わず驚いてしまったと同時に、かなり感動してしまった。
ユナは相変わらず美しい。やっぱりこんな可愛い彼女がいたら最高だろうと思いながら、いつもユナには見とれてしまう。ユナの美しさを満喫するにも最高の作品である。
全体的に燻し銀な作品にて、豪華さや派手さは全くない作品ながら、この物語をリアルに伝えるにはとても効果的であったと思えたし、ユナもまた良い作品に主演することが出来たと思う。もう一度観たくなる作品でもあり、DVD化されたら、ぜひ購入したいと思う。