年明けの1月5日、BS-TBSで『イチローvs.松井秀喜~今だから話せる本音対談』が放送された。野球レジェンドであるこの2人が面と向かって対談するのは2004年に対談して以来20年ぶりというから驚きである。
今回の対談のきっかけは、昨年2024年9月23日に東京ドームで行われた「高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」の試合が行われ、イチローのラブコールにより、松井秀喜がイチロー選抜のメンバーとして参加したことで実現したもの。当日の試合では、イチローがピッチャーを務め、松坂大輔も参加。松井は序盤に足を痛めながらも最終回に豪快なホームランを放ち、記憶に残る試合としてニュースでも大いに盛り上がったが、イチローと松井の対談は、試合の翌日に収録された模様。
対談では今回イチローが松井に声をかけた経緯や、メジャーリーグ時代に2人が色々と近いところですれ違いながら、どこか運命的に繋がっていたことが伺えるエピソードもあり、かなり広範囲な話題をカバーして興味深いものだった。他にも再会したお互いの印象や、今後もイチロー選抜での再共演の実現はあるのかなどの話題も。そして、現役生活を振り返って、それぞれの立場から当時の状況や心境を聞き合いながら、日本でプロ入りした時のプレッシャーは?MLB挑戦を決めたときに迷いはなかったのか、一番苦しかった時期とは、引退を決めた理由は?…などについて本音で語りあうやりとりが、かなり興味深かった。更には日米の野球の知られざる裏側や、お互いのバットの違いやバッティング技術・スタイルの違いなどについて、実際にバットを持ちながら解説しあう場面もあった。
今では大谷翔平が世界で注目されるスーパースター選手となり、日本人野球選手としては最も有名な選手になったのではないかと思うが、やはり僕としては、時代的にはイチローと松井が野球界の大スターであり、2人が日本、そしてメジャーリーグで活躍した時代が一番印象深い。イチロー51歳、松井50歳ということで、歳も近い2人は共に日本の野球界を代表するスターになったわけだが、お互いにバットマンとして非凡な才能を持ちながら、そのキャリアやプレイスタイルは色々な意味で対象的であったが、お互いにリスペクトを持ちながら、どこか近いところで意識し合う関係であったことが良くわかる対談であった。
誤解を恐れずに言えば、星稜高校からジャイアンツの4番、そしてヤンキースを歩んだ松井は生まれながらのホームランバッターとして、常にサラブレッドな人生を送ってきた。対談で松井は自分を育ててくれた長嶋監督に対する思いを語っていたが、言わばジャイアンツ、ヤンキースという名門を背負う運命を課せられた4番バッターであったことを改めて痛感。
これに対して、イチローは高校時代やドラフト時は松井に比べると地味な存在だったが、オリックスで開花し、ストイックに努力をコツコツ積み上げていく形で、最終的にメジャーリーグも通じて前人未踏の記録を達成していき、頂点まで駆け上がったという印象が強い。イチローは日本では国民栄誉賞を辞退し続けているが、今年はメジャーリーグでは野球の殿堂入りすることが決定している。一方で松井は日本の国民栄誉賞を長嶋監督と共に受賞というのもなかなか興味深い対比で、2人のこれまでのキャリアやキャラクターを表しているとも言える。プレースタイルも、ホームランバッターの松井に対して、ヒットを量産するバット職人、打率・打点・盗塁・守備などオールラウンダーとしての才能をいかんなく発揮したイチローという違いは、本当に2つの理想的なバットマンのスタイルをそれぞれ体現したような存在の2人であったと思う。
今回2人の対談は、ソファーでのメイン対談の他に、上記東京ドームの試合前に行った会食の模様なども放送されたが、お酒を飲みながら2人ともとてもくだけた感じでラフに話しているシーンなども多く紹介されたのはかなり貴重。この2人がこのような空気感の中で対談しているというのはなかなか感無量であり、2人とも今では引退した立場で、特にライバル・利害関係のない中で、肩の力も抜けたカジュアルな場だからこそ、本音で話せている様子がとても新鮮であった。
昨年は野球界がすっかり大谷一色となっていたが、今回の対談を見て、レジェンド/イチロー&松井の活躍で盛り上がっていた頃が懐かしく思い出され、とても良い番組であった(やっぱり、BSの番組は結構面白い!)。