何とも衝撃的な曲で、出だしは僕の好きなScritti Polittiのようなメロディーで曲が始まり、突然打ち込みサウンドみたいなクリアで鋭い切れ味のメロディーとボーカルに切り替わる。このボーカルの切れ味はあのDirty Loopsの曲を初めて聴いた時の印象に極めて近い。しかし、衝撃を受けたのはそれだけでは無い。それでいて曲が次々と複雑に転調するだけでなく、テンポも激しく変わって行く極めて追いかけ辛い複雑なメロディー構成で、何とも言えない“心地良い違和感”を覚えた。 果敢に攻めていくその曲には正直度肝を抜かれた。
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これを打ち込みでやっているならいざ知らず、ライブバンドとしてこのクオリティーの演奏が出来るのであれば、途轍もないテクニックである。なかなかこういった複雑ながらもメロディアスなロック、或はポップを手がけるアーティストは他にいないのではないだろうか。ある意味斬新で、“変態的な音楽”である。単に曲が複雑なだけでは無く、突然予想もつかないような美しい(僕の好きだったバンド、『Level 42』のような、哀愁漂うメロディー)が現れたりする。上手く説明出来ないが、ちょうど自由自在なジャズセッションに、歌詞も同期しているような感じで、1曲の中で様々な変化を楽しめる独特なサウンドなのだ。基本として、ジャズを踏襲しているのかもしれないが、もはやジャンル的にも全く型にハマっていない独特な音楽観。これは完全に癖になる音楽である。
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このKINDO (カインド)というバンド、調べたらどうやらデビューは2006年頃らしく、以前はThe Reign of KINDO (ザ・レイン・オブ・カインド)というバンドだったらしいが、最近シンプルにKINDOにバンド名を省略・変更したらしい。ヨーロッパな雰囲気も漂う曲風だが、どうやらアメリカのニューヨークで立ち上げたバンドらしい。これまでのアルバムはピアノを中心にフィーチャーされており、ジャズ的な要素が強かったようだ。
そして、今回初めて聴いた最新シングル、『Human Convention』が収録されたニューアルバム、『Happy However After』を早速ダウンロードしてみた。KINDOに改名されて初めてリリースとなるアルバムである。
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シングル『Human Convention』の変態度合は凄いが、その他の曲も、何とも複雑ながらも美しい曲に仕上がっていることか!ちなみにこのアルバム、70年代のプログレバンドかのような、どことなく古臭いジャケットアートはあまり好みでは無いので、恐らくジャケ買いはしなかっただろう。
アルバム収録曲は下記全11曲。
1) Human Convention
2) Catch The Gleam
3) Let Me Be
4) One In A Million
5) Smell Of A Rose
6) Return To Me
7) About Love
8) Colder Than December
9) Obsolete
10) City Of Gods
11) Poor & Hungry King
どの曲も驚くほど斬新で美しいのだが、特に美しいのは2曲目の『Catch The Gleam』と9曲目の『Obsolete』。バラード曲ではあるが、その1曲の中にバラエティー豊かな変化が付いており、どの曲も甲乙つけがたい高レベルの楽曲。1曲1曲の潔さも素晴らしい。変に延々と同じメロディーを繰り返すようなことも少ない。ある程度のパターンを繰り返したら、スパッと潔く曲が終わるのだ。この点も、それぞれの曲を印象付けるのに一役買っているように思う。
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それにしても、久々に切れ味の良い変態音楽に出会ったものだ。複雑ながらも、人の心を掴む真似出来ない楽曲とその独特な組み立てと展開、ジャズの香りに彩られたメロディーの圧倒的な美しさ、切れ味の鋭いボーカル。これら全てを支える演奏技術力の高さ。多少好き嫌いが出るかもしれないが、恐るべし才能を持つバンドが出現したものだ。ぜひ一度御試聴あれ!過去にリリースされたKINDOのアルバムもこれからじっくり聴いてみようかと思う。