松田聖子の絶頂期とも言える1984年に、シングルのB面コレクションだけを集めたアルバム、『Touch Me, Seiko』がリリースされた。B面という響き自体が懐かしいが、B面コレクション企画アルバムとしては史上初めてオリコン1位を獲得したアルバムとしても有名だ。
このアルバムがリリースされた当時はちょうど米国に転勤となったタイミングで、カセットテープを購入して米国に持って行ったのだが、大きく生活環境も変わって現地でセンチメンタルになっていた時に聴いていたこともあって、アルバム全体、そして各曲がとても深く印象に心に残っているアルバムとなった。
このアルバムには、下記全10曲を収録。
- SWEET MEMORIES (作詞:松本隆/作曲・編曲:大村雅朗)
シングル「ガラスの林檎」収録(1983年8月1日)
- TRUE LOVE ~そっとくちづけて (作詞:三浦徳子/作曲:小田裕一郎/編曲:大村雅朗)
シングル「青い珊瑚礁」(1980年7月1日) B面
- Romance (作詞:松本隆/作曲:平井夏美/編曲:船山基紀)
シングル「風立ちぬ」(1981年10月7日) B面
- 蒼いフォトグラフ (作詞:松本隆/作曲:呉田軽穂/編曲:松任谷正隆)
シングル「瞳はダイヤモンド/蒼いフォトグラフ」(1983年10月28日)
- わがままな片想い (作詞:松本隆/作曲・編曲:細野晴臣)
シングル「天国のキッス」(1983年4月27日) B面
- レモネードの夏 (作詞:松本隆/作曲:呉田軽穂/編曲:新川博)
シングル「渚のバルコニー」(1982年4月21日) B面
- ボン・ボヤージュ (作詞:松本隆/作曲:呉田軽穂/編曲:松任谷正隆)
シングル「Rock'n Rouge」(1984年2月1日) B面
- レンガの小径 (作詞:松本隆/作曲:財津和夫、編曲:大村雅朗)
シングル「秘密の花園」(1983年2月3日) B面
- 制服 (作詞:松本隆/作曲:呉田軽穂/編曲:松任谷正隆)
シングル「赤いスイートピー」(1982年1月21日) B面
- Eighteen (作詞:三浦徳子/作曲:平尾昌晃/編曲:信田かずお)
シングル「風は秋色/Eighteen」(1980年10月1日)
- マドラス・チェックの恋人 (作詞:松本隆/作曲:呉田軽穂/編曲:松任谷正隆)
シングル「小麦色のマーメイド」(1982年7月21日) B面
- 愛されたいの (作詞:松本隆/作曲:財津和夫/編曲:大村雅朗)
シングル「野ばらのエチュード」(1982年10月21日) B面
『SWEET MEMORIES』は元々B面だったにも関わらず、サントリーCMで大ヒットしたことを受けて急遽両A面になったことでも有名。また、B面とは言っても、『制服』と『蒼いフォトグラフ』は聖子ちゃんの定番人気曲としてもすっかり有名になった。
このアルバムに収録されている10曲の内、明るいポジティブなラブソング『Romance』を除けば、どの曲も“別れ“、”失恋“、”片思い“などがテーマになっていることもあって、アルバム全体に切なく、感動的な空気感が充満しているのが特徴。前述の通り、ちょうど米国に転勤タイミングと重なりセンチメンタルになっていたこともあって、より一層心に刻まれた。どの曲も大好きなのだが、中でも特に好きなのは、『愛されたいの』と『レンガの小径』。『愛されたいの』は財津和夫作曲の本作だが、本当に切ないメロディーと歌詞の見事なハーモニーが何とも美しい名曲である。そして『レンガの小径』も、好きだった彼が遠くに行ってしまって、レンガの小径にあった”あなた“の家を訪れても既に誰もいないという悲しい別れの曲となっているが、ちょうと米国に行って友人や好きだった人たちと離れてしまった自分も感情移入してしまったものだ。この他、曲として異色なのは『わがままな片思い』。A面シングル『天国のキッス』を手掛けた細野晴臣の曲だが、彼らしいテクノポップなメロディーが何とも可愛く愛おしい1曲に仕上がっている。
今でもこのアルバムは良く聴いているが、聴くたびに当時の切ない思い出にタイムスリップ出来るので、自分の記憶上とても大切でかけがえのない“思い出”のアルバムとなっている。