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思い出の曲47: 鮮烈なシンセサウンド、a-haの『Take on Me』

僕が大好きな80年代の洋楽シーンの中でも、当時ひと際インパクトのある曲があった。それは1984年にリリースされたa-haの『Take On Me』という曲だ。恐らく多くの方が覚えている曲だろう。当時はまさにシンセポップも流行っていた時代だが、そんな中でもとりわけ音楽シーンに爪痕を残した曲だろう。

a-haはノルウェー出身の3人組グループ。『Take On Me』で登場した際は、アニメと融合したミュージックビデオも当時MTVで大きな話題を呼び、そして何よりもノリのいいシンセメロディーが素晴らしかった。爽やかで心躍るリズムながら、どこか米国のポップスとも違う、北欧ならではの哀愁が漂うメロディーが特徴だった。当時は他にもヴァン・ヘイレンの『Jump』、映画『ビバリーヒルズコップ』の挿入インスト曲としてチャートを駆け上がった『Axel F』など、インパクトのあるシンセ曲が多くヒットした時代でもあった。

そんなa-haのデビューアルバム、『Hunting High and Low』のLPレコードを先日ゲットすることが出来た。当時このレコードをアメリカで購入して持っていたが、実に41年ぶりに入手出来て感無量である。このアルバムはもちろん大ヒットシングル『Take On Me』が収録されているので購入したが、正直1984年当時アルバムへの期待があまりにも大き過ぎて、実際アルバムとして聴いた時に少し物足りなさを感じてしまった。恐らく全曲『Take On Me』のようなシンセサウンドでインパクトのある曲をどこか期待していたが、実際アルバムには『Take On Me』を超えるインパクトの曲が無かったので、物足りなく感じたのも致し方ないのかもしれない。

アルバム『Hunting High and Low』に収録されているのは下記10曲。

A面

  • Take On Me
  • Train of Thought
  • Hunting High and Low
  • The Blue Sky
  • Living a Boy’s Adventure Tale

B面

  • The Sun Always Shine On T.V.
  • And You Tell Me
  • Love Is Reason
  • I Dream Myself Alive
  • Here I Stand and Face The Rain

しかしこのアルバム、その後かなりの時間を経て聴き直す機会も何度かあり、1984年当時とはまた印象が大きく変わったという意味でも記憶に残るアルバムとなった。改めて聴くと、このアルバムはとても良く出来ているし、『Take On Me』以外の曲もシンセの小技が結構効いているのだ。当時アルバムからのセカンドリリースシングルとなった『The Sun Always Shines On T.V.』も、実は良く聴くと『Take On Me』に引けを取らない秀作であり、また美しく哀愁のあるメロディーという意味では『Take On Me』以上かもしれない。

また、『Hunting High and Low』も今聴くと切なく美しいバラードの傑作である。他にもバラード系だと『Living a Boy’s Adventure Tale』などもいい曲だ。かと思えば『Blue Sky』のようなシンセを効果的に使った曲や、アルバムで一番アップテンポな『Love Is Reason』はシンセポップの王道的なサウンドで、シングルカットもされた曲だ。

少し異色なのはどこか牧歌的な長閑なサウンドが魅力の小粒な『And You Tell Me』や、スケール感の大きなラストの『Here I Stand and Face the Rain』は特に印象深い。

アルバム全体としては比較的バラード寄りの曲が多いのも1984年に少し物足りなかった要因かもしれないが、大人になった今聴くと、このアルバムの北欧的で神秘的なサウンドは他には無い感覚で、ボーカルのモートンの声域の広いキレイでソフトな歌声がとても癒されるし、むしろバラード曲が多いことでより心に染みる。

a-haはこの『Take On Me』の大ヒットであまりにもインパクトを残し過ぎて、その後のヒットが続かないのではないかと当時思われた。まさに良くある“一発屋”のリスクもあったのかもしれない。しかし、その後も1986年のセカンドアルバムの『Scoundrel Days』、1988年のサードアルバム『Stay On These Roads』などもヒット。特にこのサードアルバムにも収録された007の主題歌『The Living Daylights』は『Take On Me』以来の大きなヒット曲となったので、80年代は比較的長くヒットチャートに曲を送り込んでいた。

『Take On Me』のキャッチーでキラキラした魅力はいつまでも色褪せない名曲だと思うが、アルバム(特にファーストアルバム)も改めてじっくり聴くととても新鮮に感じられ、また新たな魅力を再発見出来た思いである。

ちなみにa-haは一度解散したものの、2015年に再結成し、2022年にもアルバムをリリース。今でもライブ活動などを行っているらしいので、また来日の機会があればぜひ日本で観賞してみたいものである。

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