昨年亡くなったあのマイケル・ジャクソンのニューアルバム、そのタイトルもずばり『Michael』がついに12月15日に発売された。前からこのニューアルバムの発売は公表されていたので本当に楽しみにしていたのだが、マイケルのこれまでの歴史を散りばめたジャケットのイラストもインパクトがあって印象的な仕上がりだ。
完全未発表の”新曲”を10曲も収めたアルバムで、オリジナルアルバムとしては『Invincible』以来実に9年ぶりのリリース。マイケルが生前に書き貯めていた楽曲から厳選した形で構成され、今回ニューアルバムとして発売されたのだが、ファンとして実際には期待と不安でいっぱいであった。新曲が聴けるのはもちろん嬉しいが、何だか変な継ぎ接ぎや間に合わせで集められたようなお粗末な内容だと困ると思う面もあった。しかし、発売された『Michael』は驚くべき完成度と各曲のクオリティーの高さ!久しぶりに興奮するアルバムに巡り合えた感覚だ。
マイケルの未発表曲という意味では、最後のライブドキュメンタリー映画となった『This Is It』のテーマ曲や、2008年に発売された『スリラー』の25周年記念版にも『For All Time』、『Got The Hots』が発表されているが、完全な未発表曲オリジナルアルバムとなって、死後に登場するのは初めてである。
まずは全10曲という構成。15曲以上収録されることや、変なinterudeのような繋ぎ曲も当たり前になった昨今のCD/デジタル時代からすれば、10曲というのは少ないといった印象だが、本来アルバムというのはアナログレコードの時代から10曲くらいが普通であった。あの名盤『Off The Wall』は10曲、そして最高傑作の『スリラー』は9曲の収録である。10曲であることで、全体が引き締まった印象を受ける。
収録曲全10曲は下記の通り。
1) Hold My Hand (Akonとのデュエット)
2) Hollywood Tonight
3) Keep Your Head Up
4) (I Like) The Way You Love Me
5) Monster (フィーチャリング50 Cent)
6) Best Of Joy
7) Breaking News
8) (I Can’t Make It) Another Day (フィーチャリングLenny Kravitz)
9) Behind The Mask
10) Much Too Soon
まずは1曲目の『Hold My Hand』。これはあのAkonとのデュエット曲。2008年にアルバム『スリラー』の25周年記念版を発売した際、Akonが『スタートサムシング』のニューバージョンをプロデュースしているのだが、この際にレコーディングされた、比較的新しい作品だ。Akonらしさがありながらも、マイケルの歌声が絶妙にブレンドされていて、心地良い傑作だ。
2曲目の『Hollywood Tonight』はテディー・ライリープロデュースによる本アルバムの”ダンスチューン3部作”の1曲目。ハリウッドを目指す15歳の女の子をテーマにした映画のストーリー的な作品だが、マイケルらしい曲風に、これまたテディー・ライリー印のニュージャックスイングが効いていて最高だ。どうやら2001年の前アルバム『Invincible』時に録音された作品らしいが、なぜ『Invincible』に収録されなかったのかと思ってしまうほど完成度が高い。
3曲目の『Keep Your Head Up』はリアーナ、ビヨンセの曲なども手鰍ッるプロデューサー、トリッキー・ステュアートが担当している。”上を向いて生きて行こう”と歌う前向きな応援ソングの歌詞や、コーラスが重なっていく後半は『We Are The World』や『Heal The World』などの曲にも匹敵する愛情たっぷりなミディアムバラードで、これまた完成度の高さに驚いてしまう。
4曲目の『(I Like) The Way You Love Me』はこのアルバムの中でも最高傑作と言える曲。ミディアムテンモェ心地良いバラードで、『Off The Wall』に収録された往年の名曲『Rock With You』にも通じるスローR&Bの王道的な曲で、途中マイケルらしい美しいメロディーが堪能出来る感動的な作品。
5曲目の『Monster』はハリウッドや券\界の闇を歌ったものだが、驚かされるのが『HIStory』時代の批判的な暗い曲では無く、むしろアルバム『Bad』時代に見られた純粋なエンターテインメントとして、いい意味での曲の軽さと、音の構成における完成度の高さが特徴。テディー・ライリーらしいビートの効いた曲に、50 Centのエロいラップが絡まるが、全体的にマイケルの被さるコーラスが全てを包み込みながら早いペースで展開される。
6曲目の『Best Of Joy』を聴くと、思わず涙が出てしまいそうになる。そのシンプルな歌詞は、マイケルの純粋な心のつぶやきが伝わってくるような内容で、残された自分の子供に向けられた曲のようにも思えてくる。マイケルのハイトーンボイスが堪能出来る、メロディアスなミディアムテンャoラードで、やはりこのような曲がまた聴けることが本当に感動的である。
7曲目の『Breaking News』は、『Hollywood Tonight』、『Monster』と続いたテディー・ライリーのダンスチューン3部作のオオトリを飾る作品。明らかにテディーとわかるニュージャックスウィングのビートで始まる。マイケルは、『Leave Me Along』、『Tabloid Junky』など、これまでにもメディア/マスコミ、パパラッチなどを批判するテーマの曲をこれまでも多く制作しているが、これもその1つで、とても私的な作品である。アルバム『Dangerous』期の作品かと思ったが、どうやら2007年頃に制作されたらしく、比較的新しい。
8曲目の『(I Can’t Make It) Another Day』は、何とあのレニー・クラヴィッツとのコラボ作品。レニーらしいラフなギターサウンドが最高にシンプルで心地良いロックナンバーであり、その意味では『Beat It』『Dirty Diana』にも通じるタイプの曲だが、スケール感が007のテーマ曲かのような風格すら漂わせているから不思議だ。どうやら2001年のアルバム『Invincible』に元々収録予定だった曲らしい。
9曲目の『Behind The Mask』は最高に嬉しいサプライズであった。これはあのYMOの、名曲のリメイク版なのだ。どうやらこの曲は元々1980年頃から制作が検討され始め、坂本龍一にも話が入ってきていたようだ。アルバム『スリラー』への収録も検討されたが、どうやらスリラー全体の構成・雰囲気に合わなかった為、お蔵入りした模様。しかし、結局はこの未来的なロック曲を手鰍ッたことによって、R&B/ロックの『スリラー』から、よりロック色が強くなった『Bad』にうまく移行していくきっかけになった曲で、『Another Part Of Me』への影響も想像出来るのが面白い。
10曲目、アルバムの最後を飾るのは、とても穏やかなバラード『Much Too Soon』。アルバム中最も短い2分48秒の作品で、テラスのメ[チでャGムを読んでいるかのような穏やかな気持ちになる作品だ。この曲によって、マイケルの魔法のような作品の数々を振り返りながら、余韻を残しアルバムは締めくくられる。
とにかく、どの曲も無駄な”捨て駒”的な曲が無い構成。それぞれに個性があり、完成度が高い10曲が収録されているのが良くわかる。しかし、どの曲も制作・録音時期がバラバラの筈なのだが、この『Michael』がベストコレクション的な作品にならず、全10曲を一つのアルバムとしての統一性を持たせているプロデュース陣の手腕にも正直驚いた。よって各楽曲の完成度の高さも去ることながら、全体の統一感でもこのアルバムの素晴らしさと、関わった関係者の苦労とマイケルへの尊敬と愛情がひしひしと感じ取れるアルバムという点で秀逸の出来栄えである。また同時に、改めて天才マイケルの才能を痛感させられた作品であった。
まだまだマイケルの未発表曲がたくさんあるらしいが、今後も驚かされるような企画によって新作が聴ける機会があれば、ファンとしては嬉しい限りである。
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