シルバーウィークに、念願であった東京椎名町にある『トキワ荘マンガミュージアム』を訪れる計画を立てたが、その前に予習の為、1996年に本木雅弘主演の伝記映画、『トキワ荘の青春』をブルーレイで購入。この映画は前から気になっていたのだが、観ていなかった。しかし、ちょうど今月初めてブルーレイ化されたので、まさにタイムリーである。
予習も充分した上で、シルバーウィーク最終日に『トキワ荘マンガミュージアム』に向かった。自宅からは田園都市線・半蔵門線で青山一丁目にて大江戸線に乗り換え、落合南長崎駅で下車。そこから『トキワ荘』は徒歩5分程度の場所だ。
トキワ荘とは、1950年代に手塚治虫、寺田ヒロオ、藤子不二雄(藤子F不二雄と藤子不二雄Ⓐ)、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、鈴木伸一、森安なおや、水野英子、よこたとくお等、日本の漫画界を切り開いた多くの漫画家たちが住んでいたアパートだ。みな、手塚治虫に憧れ、漫画家になることを夢見て上京し、次々とこのアパートに集結。それぞれがヒット作を飛ばして有名になり、やがてトキワ荘を後にする。ここで過ごしたのは長い人でも7年程度という短い期間だったが、これだけの才能が一同に集まっていたというのは奇跡的であり、今当時を想像してもワクワクしてしまう。高度成長期の日本でもあり、当時の活気は凄かったのだろう。
そんな伝説の『トキワ荘』は惜しまれつつ、老朽化の為1982年に解体されてしまったのだが、トキワ荘を復活させたいという多くのファンや関係者の努力により、昨年の7月に『トキワ荘マンガミュージアム』として再建されたのだ。当時メディアでも話題になった。当初オープンは昨年の春を予定していたが、コロナ感染の影響で開館が3カ月遅れた。開館した頃から、ぜひ訪れたいと思っていたが、コロナもあってなかなか訪れられずにいた。しかし、ついに今回初訪問をすることが出来た。
トキワ荘マンガミュージアムは、トキワ荘公園という公園の敷地内に再建された。実際にトキワ荘があった場所はもう少し南の場所だが、近くに再建する場所を確保出来たのは感動的だ。公園内には記念碑や周辺案内版などもあって、気分が盛り上がる。公園内の公衆トイレも漫画仕様で楽しい。
当時あった電話ボックスもトキワ荘の入り口に再現されていて昭和レトロな雰囲気が楽しい。
それにしても再建されたトキワ荘は良く出来ている。オリジナルの木造2階建トキワ荘を再現すべく、窓の周りの囲いなどもいい感じで錆びたような装飾がされており、とてもリアルに再現されているのだ。
開場時間の10時に予約していたが、一番乗りで入場するとまずは下駄箱で靴を脱ぎ、入館料の500円を支払っていざ2階へ。トキワ荘の名物は、まずこの2階に上がる大きな階段。きしみ具合まで見事に再現されているが、当時編集者が原稿の催促にこの階段を上がってくる際のきしみ音にみなドキドキしたという思い出の階段なのである。
2階はまず長い廊下が目に飛び込んでくる。そして想像していたよりも廊下の幅が広いのに驚いてしまった。階段から一番近いところに共同トイレがあり、その隣が炊事場。暑い夏は、ここの流し台でみな水浴びをしたことでも有名な場所だ。
そして炊事場の隣の部屋が、トキワ荘のアニキ的存在であった寺田ヒロオがいた部屋。そしてその向かい側に住んでいたのが手塚治虫である。藤子不二雄が漫画家になる為富山から状況して、手塚治虫に挨拶にこのトキワ荘を訪れるが、その頃から寺田ヒロオにお世話になり、手塚治虫が転出するのでその空いた部屋に藤子不二雄が入ったのである。
藤子不二雄の2人の部屋の並びには石ノ森正太郎、そして赤塚不二夫がのちに入居。どの部屋も4畳半とかなり狭いが、実際に部屋を見てみると、ある意味とても居心地の良い広さであるように感じた。日本人は貧乏性なので、あまり広い部屋よりも、適度に狭い部屋の方が落ち着くものだが、漫画を描くのに集中するには最適なサイズだったのかもしれない。
そして石ノ森正太郎の部屋の向かいには水野英子が7カ月間入居していた。水野英子は小学生の頃、手塚治虫の漫画を読んで衝撃を受け、漫画家になることを目指すが、最初の少女漫画と言われる『リボンの騎士』に影響を受け、手塚治虫の描くタッチなどにも似ていることから、女手塚とも呼ばれているが、日本の少女漫画を発展させた。それまで手塚治虫等の男性漫画家が描いていた少女漫画は、水野英子が描くようになってから、女性漫画家が描くようになったので、その意味では少女漫画のパイオニアであり、その後昼{恵子、萩尾望都に大きな影響を与えたのだ。
トキワ荘が忠実に再現された建物の1階はミュージアム展示スペースになっており、2階からエレベーターで1階に移動。9月18日からは、『トキワ荘の少女マンガ』というテーマの展示会がスタートした。まさに『リボンの騎士』や、トキワ荘に住んでいた漫画家が当時描いた少女マンガが多く展示されており、かなり貴重な作品もあって見応えがあった(ここは写真撮影不可であった)。そう大きな展示スペースでは無いが、とても華やかで楽しい展示。今年12月まで開催される。売店で、今回展示されていた少女マンガのハガキを8枚と、水野英子のマンガ、『赤いくつ』の復刻版を記念に購入。
大満足の中、トキワ荘マンガミュージアムを後にし、トキワ荘公園の一角にある『ふるいち』というマンガお土産ショップに立ち寄ったが、ここで藤子不二雄の自伝漫画『まんが道』を解説した、『まんが道大解剖』という本を発見し、思わず購入。『まんが道』は以前ブログで取り上げたが、トキワ荘を語る上で、『まんが道』は外せない作品なのである。
トキワ荘マンガミュージアムの周辺には、トキワ荘ゆかりの場所がたくさんあって、散策するのがとても楽しい。まずはトキワ荘の住人がみな出前をとったり、良く食べに行ったりしていたことでも有名な中華料理屋さん、『松葉』。漫画にも度々登場するが、今でもこのお店が健在で、ファンには聖地の一つとなっている。僕もランチに立ち寄ってみることにした。
中はそう広くないが、壁には多くの漫画家のサイン色紙が飾られており、昭和の香りが漂う趣のあるお店だ。ここで、チャーハンを注文。大きなチャーシューのかたまりがゴロゴロ入っていて、とても美味しいチャーハンであったが、ここのラーメンやチャーハンを、手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎も食べていたと思うと感無量である。ある意味、普通に近所にある中華料理屋だったのだろうが、多くの漫画家の胃袋を支えたお店としてすっかり有名になってしまったのだ。でも、味はかなり良かった。
そして、『松葉』のすぐ近くに、実は元々トキワ荘があった場所がある。今は印刷会社のビルになってしまっているが、当時のトキワ荘の門柱が1本だけ残っているのには感動した。何だか当時の様子が少し想像出来る。そして敷地の一角にはトキワ荘のモニュメントが建てられていた。
また、トキワ荘の近くにあり、みんなが良くヒット祈願にお参りしていたという子育地蔵尊が今でも残っていた。
松葉から、トキワ荘通りを更に南下すると、古い建物をリノベーションした『トキワ荘通りお休み処』という施設があり、1階にはグッズショップ、そして2階にはトキワ荘の寺田ヒロオの部屋が再現されている。実はミュージアムには寺田ヒロオの部屋には特に展示物がなかったが、ここでは漫画家がみんなで寺田ヒロオの部屋に集まって飲み会をしていた時の様子が見事に再現されているのでここもミュージアムと合わせて必見である。
1階ショップで『トキワ荘のヒーローたち~マンガにかけた青春』という、豊島区が監修したガイドブックがあり、トキワ荘に関するかなり貴重な情報もあったので、記念に購入。住人だった漫画家みんなのキャラクターが表紙に勢揃いしているが、実は各プロダクションからの使用許諾を取るのがかなり大変だったようなので、貴重なガイドである。
ちなみに、映画『トキワ荘の青春』の感想だが、この映画はトキワ荘のアニキ分であった寺田ヒロオが主人公。本木雅弘が演じているが、映画全体的に大きな盛り上がりもなく、まるでドキュメンタリーのように淡々と描かれているところが逆にリアリティーがあった。そして仲間がどんどん売れっ子漫画家になっていく中、どうしても時代のトレンドに付いていけなかった寺田ヒロオの哀愁を、静かな演技で本木雅弘が見事に演じていたのが印象的であった。また、この映画には、当時はまだ無名に近かった阿部サダヲ(藤子F不二雄役)、古田新太(森安なおや役)、生瀬勝久(鈴木伸一役)など、今では健B者な役者としてすっかりお馴染みになった役者たちが出演しているのも興味深い。
今回初めてマンガの聖地、椎名町を訪れたが、トキワ荘の歴史を学び、そして当時の熱い漫画家たちの息吹を感じることが出来、何だか自分の創作意欲も駆り立ててくれる、そんな強力なパワースポットであった。また新たな展示の際に、再び訪れてみたい。
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