あのブルース・リーが『中央公論』の4月号に約10ページの記事が掲載された。中央公論と言えば、保守的な評論や小説を取り扱う、戦前から続く総合雑誌として有名だが、僕は全く縁がなく、手にとったことはこれまで全くなかった。しかし、今回ブルース・リーの記事が載ったということで、初めて購入してみたのだ。ブルース・リーがついにこの雑誌でも取り上げられることになったのはかなり画期的なことである。
記事のタイトルは、『ブルース・リー人気が日本で衰えないわけ』と題して、ブルース・リー研究家ちゃうシンイチーと、主に中国の社会事情を取材しているジャーナリストの中島恵の対談という形式になっている。特別に僕にとって新しい情報はなかったものの、取り上げているテーマはなかなか興味深いものがあった。
今もブルース・リー人気を支えるのが思春期に映画を観た世代(僕も若干上の世代)の存在や、80年代にジャッキー・チェンが登場したことで、カンフー映画としてはブルース・リー冬の時代となったものの、やっぱりブルース・リー映画、そしてブルース・リーという存在が如何に不変であったかと改めて気づかされたことなど、かなり共感出来る内容となっている。
またアメリカで生まれ、香港で育ったブルース・リーが、如何に自分のアイデンティティと戦っていたか、中国、そして香港でのブルース・リーの捉え方など、さすが中国研究の中島さんとの対談だけあって、ユニークな切り口で語られていた。
ブルース・リーは単にアクション映画俳優ではない。アクション俳優でもあり、武道家でもあり、哲学家でもあり、そして東洋人としても、一人の表現者、アーティストとしても英雄であった。僕が昔から思っていることだが、ブルース・リーは現代史の教科書や、偉人伝に出てきてもおかしくない英雄であり、偉人だと常々思っており、まさに中央公論でのこのような取り上げられ方は、間違いなくそれを証明するものであると感じている。