見出し画像

銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

市川、荷風ひとり語り。2019.11.21 (水)


先日の”おとがたり公演”太宰治「人間失格 〜道化と狂気のモノロギスト〜」について、なかなか公演後記が書けないでいます。書くことはいっぱいあります。台本作りから、リハーサルのこと、本番。そして今回の公演が特殊に感じたのは、終わってからの事。登場人物をドライに見てはいますが残響が…。それは今度お話します。

そんな中、永井荷風のひとり語りの本番をむかえました。
このさりげない集まりではリクエストの「濹東綺譚」をやります。





ちょっと大袈裟なことを言いますが、太宰の作品で死を見つめながら絶望の深淵に立ち、冷気と湿気にじっくり浸された身体が、荷風の文体の中ですこし和らぐ感じ。そして風に吹かれながら、少しづつ身が落ち着いてくる気がしました。

登場人物の言葉を言うにしても
風景を語るにしても

どこかで乾いた風が流れている。文体がさらっとしてるのです。
味わい、情味というものも、どこかじわっと滲んでくるように感じます。

荷風は60才手前(58才)でこの作品を書いている。
人も違うのですがやはり年齢が違います。

太宰は39才で「人間失格」を書いてその脱稿一ヶ月後に入水。(深読みしてもどうかと思いますが、死んでこの世に作品を置き残したようにも思えます)あっ・・・引っ張られてはいけない(笑)

さて、荷風先生。
濹東の世界を読みつなぎ1時間15分ほど。



これは近年、おとがたりで再演を重ねていて
ヴァイオリンがあってこそ生きるラヴィラントは読まなかった。共演者の喜多直毅さんは様々な情景の描写が大変美しく、しっとり儚く、静かに冬の日の太陽まで淡く弾いて下さる。

今回はその代わりに、場面や言葉をえらびとって、ひとり語りでじっくり聞いて頂けるように工夫もしました。


ひとりで、ふたりで、この作品を語っているけれど、私が荷風先生がこの作品を書いた58才、いやそれよりもっと年を重ねた時、この作品をどんな感覚で語るのだろう。私が生きているのかもわからない、また耳を傾けて下さる方たちがいらっしゃるのかもわからない。世の中はうつろうものだから。電車の中そんなことを思っていました。



*江戸川を越えると市川。




そろそろ、「人間失格」のことも書かなくちゃ。書けるかな。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「永井荷風 朗読 ~荷風忌、他~」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事