雨の海岸線を、バスはゆく。ローソク岩などゆきすぎて、古平町の海が雨模様の中に現れる。
白鳥古丹の詩を心に浮かべながら、静かに流れゆく海を眺めていました。
「一穂の海」
黄金色に輝く海。
一穂の海といえば、積丹のコバルトブルーの海です。
でもこの日海が見せてくれたのは、輝くばかりの黄金の海でした。
あんなに降っていた雨がやんで、
いつの間にか夕景が広がってゆき、ハッと息を飲みました。
一穂の言葉の、水晶のような美しさをここに感じたのです。
今回は吉田一穂の童話も読みます。https://bit.ly/3qsub33吉田一穂 童話集 「海の人形」.
この中から「十二夜物語」を。また、一穂短編の「マクベス夫人」もやります。
あヽ麗はしい距離 つねに遠のいてゆく風景……
悲しみの彼方、母への、捜り打つ夜半の最弱音
吉田一穂 詩篇 I 海の聖母より『母』
ここで、小樽文学館で公演の「白鳥古丹-カムイコタン-」のフライヤーから転載します。
<公演に寄せて>
望郷は珠の如きものだ。私にとって、それは生涯失せることのなきエメラルドである。
(古代緑地【海の思想】より)
詩人、吉田一穂(よしだ いっすい)は北海道上磯郡釜谷村 (木古内町)の網元の家に長男として生まれた。積丹半島の古平町は、荒磯が見え隠れする段丘海岸。変化の劇しい青が輝く海と空の下、一穂は少年時代を過ごす。大正九年、一穂が二十二歳の時「ようし!詩を書こう。一生一度の生だ、自己を悔いなく生き切るために」と誓言、以後その一生涯を詩人として生きた。
一穂の詩の原点はこの「古平」にあると聞く。
「白鳥古丹」はこの時空に現存しない私のふるさと、と一穂は語る。「海の聖母」始め、ここから生まれた水晶の如き詩篇の数々を、生き生きと描きだすことができたら!そして我々は詩に耳を澄ませ祈るのです。一穂の言葉が、声とヴァイオリンの音色と共に「白鳥」の姿となり、未知から現れることを。内部の花を、開かねばならぬと。
おとがたり
朗読 : 長浜奈津子 ヴァイオリン : 喜多直毅
北海道ツアー2020 『啄木と一穂を訪ねて』
9月3日(木) 《函館》
漂白の歌人:石川啄木『啄木といふ奴』~A Guy called Takuboku~