多峯主大岳山
多峯主山とは何を指すのか?多峯主山を登りながら、足達は考えていた。多くの峯の主なのであるから、地元の有力な山を指すのだろう?天覧山などを従えるという意味合いがあるのだろう?この山は明治天皇が指揮を執った天覧山を従えるのだ。一歩一歩登りながら、この山の偉大さを噛み締めるのである。水が一度も涸れたことのない池に出る。なんて神秘的なのだ。自然が生きている。命が継承されている。心に、ある反応が生まれた。阿頼耶識の誕生である。坂を登り、トイレで清め、まだ正体の掴めていない、山の中の山、それを拝もうと一頑張りする。頂上に出たとき、そこで富士が拝めるとあった。だが儂の見た山の中の山は、正に大岳山だったのである。
天高く、越える秋。田無駅から所沢駅に出、飯能駅へ、足達は何かを考えるかの如くこの地に来た。日本一高い山は富士山、日本一訪れる山は高尾山、そして、日本人が、登れる人が五割、登れない人が五割の山がある。大岳山、百名山ではなく二百名山、一等星じゃない北極星のようなこの山は、二百名山で、一番重要な山である。
それがである。儂は石川県が先祖の地で、そこの、白山は、なんと御前峰が一番高いのである。これは御前峰を一番尊ぶことこそが儂ら加賀勢の誉れと知った。ということは多峯主山より天覧山を尊べと言うことではないか? おお!天地がひっくり返ったぞ!