ジェイン・オースティン「エマ」読み返し終わりました。
この記事も感想と合わせてアップするつもりだったのですが,
思いのほか長くなってしまったので分けましたw
感想の方は近々,相関図とともにお伝えしたいと思います。
英以外の文学にも関係するので迷いましたが,このカテゴリーに入れちゃいました。
再読したら確認してみると言っていた誤訳の件ですが,
私の間違いのようでした。一部はね。
岩波文庫・工藤政司訳でいうと,下巻138ページ目。エマの心の声。
「まあ,呆れた!フランク・チャーチルがいじくりまわした絆創膏を綿にくるんでしまっておくなんて,よくも思いついたものだわ!」
これが,私はどう考えてもミスター・エルトンだと思ったのです。
これはエルトンに失恋したハリエットが,密かにとっておいた彼の持ち物を燃やす場面。
自分だったら例えばフランク(エマは少しフランクに恋した時がある)の絆創膏ということになるかなって意味かとも思いましたが、
「よくも思いついたものだわ」と繋がりません。ハリエットが思いついたという意味にとれますよね?
しかし・・・ まず2012年版を見てみると(私のは2002年版),やはりフランク・チャーチル。
まだ直っていないのかぁ・・・・・・ ・・・・・・
と,洋書コーナーへ足を向け,”his”とかいうぼやっとした表現を期待しつつ場面を探すと・・・
Frank Churchill !!!
ウッソダー ウッソダー ウッソダー
でも誰も言及していないみたいだし,いくらなんでも作者がそんなにハッキリと間違えるわけないので,
筋が通るんだろうなあ。
さて、最初はFrank Churchillと書いてあったことにかなりの衝撃を受けただけだったのですが、
よくよく読んでみると原文は
”Lord bless me! When should I ever have thought of putting by in cotton a piece of court plaister that Frank Churchill had been pulling about! ―I never was equal to this.”
ん? これは・・・自信ないけど、もしかして・・・
他の出版社の翻訳を確かめに、もう1度和書コーナーへ。
中公文庫(阿部知ニ訳)
「おお神様!フランク・チャーチルが引っぱりまわしていた絆創膏の切れはしを、
わたしだって綿にくるんでしまっておくべきでしたのに!―どうもわたしは、この点では負けらしいわ」
ちくま文庫(中野康司訳)
「あきれたわ!たとえば、フランク・チャーチルがいじりまわした絆創膏の切れはしを、
私は綿にくるんで大事に取っておけるかしら?そんなこと、私にはぜったいにできないわ」
わ か り や す い !
岩波がおかしいだけだったー!工藤さーん!
だからわからなかったんだよ!
「自分だったら例えばフランクの絆創膏ということになるかなって意味」の予想は当たっていたわけですね。
(エマはこのハリエットの行動を恥ずかしいと思っているので、「そんなこと私はできない!」と言っています。)
以前送った私の「ミスター・エルトンではありませんかねぇ?」メールを見ていないのか、
確認したけどフランク・チャーチル部分は誤訳じゃなかったからほっといたのか、知りませんが、
ちゃんと見直していれば今の訳で重版することなかったのに。誤訳に入らないですかね、これ?
あ、見直した上での修正無しだったらすみません。でも意味違いますよ?
「エマ」に関しては(というか私が読んだ「ノーサンガー・アビー」「分別と多感」も悪くなかったけど。)ちくま文庫さんのがいいかも。
中公文庫はエマとハリエットの会話すら、ですわ・ますわ・ございますわ口調でちょっと頭痛くなりそうです。笑
ちなみに上に挙げた部分だと、「この点では負けらしいわ」という訳は、私は好きです。「おお神様!」はちょっとどうかとも思うけど。
あと,2,3か所”白羽の矢”という語が出てくるのだけど,皮肉でなくプラスの意味だろうところなので,これも誤訳というか誤りですね。最近は良い意味が浸透しすぎだから,確かそれでもOKみたいな感じだった気もするけど。
本来は白羽の矢って嬉しくないものなんですって。ご存知でした?私はちょっと前まで知りませんでしたけど。
こんな記事がありました。
山田侑平氏の「岩波文庫 あの名著は誤訳だらけ」というのが
2002年4月号の文芸春秋に掲載されているそうです。
公で誤訳を並べたてられて,そこまでされても無視(むしって打ったら蟲って出てきた)するとか,
よくないですねぇ。こら読者のメールなんて蟲されたに決まってるわ。
きちんとした文章を世にお届けしたいと思わないのでしょうか。
意外とプライドのない出版社さんなんですね。
信頼していたのでがっかりです。
やってしまった誤訳はともかく,指摘されたら改訂していただきたいですよね。
これからちょっと岩波さんの外国文学読むの怖くなっちゃうなぁ。
岩波「高慢と偏見」は特に引っかかるところはなかったのですが、ちくま版も読んでみたくなりました。
ちくまのオースティンは多分全て、中野康司氏の訳です。
私が読んだ2作品を考えると、たぶん岩波の富田彬氏よりも現代風じゃないかと予想されるけど
(古いお話なので古い言葉遣いは私は気になりません。というかむしろ好き。)、読みやすいのではと思います。
ただ、中野さんはあとがきがつまらんのです。。
誤訳というキーワードで調べると色々でてきて,ちょっと興味深いです。
岩波さんではないですが,新潮文庫の鴻巣友季子訳「嵐が丘」がひどいらしい。
私が持っているのはそれだよ。笑
でもこれ読んだときは興味もなく,なんとか読み終わろうとしていただけなので
全く違和感を感じなかったと思います。
今読んでも,私も日本語怪しいので気づかないかもしれませんが。。
(たとえば,”春先の雪”という意味の名残雪を,溶け残っている積雪という意味で使っているとか。)
それにしても、「岩波文庫 誤訳」で検索かけるとか、性格悪いな私。笑
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>画像 海ちゃん(「コクリコ坂から」)
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この記事も感想と合わせてアップするつもりだったのですが,
思いのほか長くなってしまったので分けましたw
感想の方は近々,相関図とともにお伝えしたいと思います。
英以外の文学にも関係するので迷いましたが,このカテゴリーに入れちゃいました。
再読したら確認してみると言っていた誤訳の件ですが,
私の間違いのようでした。一部はね。
岩波文庫・工藤政司訳でいうと,下巻138ページ目。エマの心の声。
「まあ,呆れた!フランク・チャーチルがいじくりまわした絆創膏を綿にくるんでしまっておくなんて,よくも思いついたものだわ!」
これが,私はどう考えてもミスター・エルトンだと思ったのです。
これはエルトンに失恋したハリエットが,密かにとっておいた彼の持ち物を燃やす場面。
自分だったら例えばフランク(エマは少しフランクに恋した時がある)の絆創膏ということになるかなって意味かとも思いましたが、
「よくも思いついたものだわ」と繋がりません。ハリエットが思いついたという意味にとれますよね?
しかし・・・ まず2012年版を見てみると(私のは2002年版),やはりフランク・チャーチル。
まだ直っていないのかぁ・・・・・・ ・・・・・・
と,洋書コーナーへ足を向け,”his”とかいうぼやっとした表現を期待しつつ場面を探すと・・・
Frank Churchill !!!
ウッソダー ウッソダー ウッソダー
でも誰も言及していないみたいだし,いくらなんでも作者がそんなにハッキリと間違えるわけないので,
筋が通るんだろうなあ。
さて、最初はFrank Churchillと書いてあったことにかなりの衝撃を受けただけだったのですが、
よくよく読んでみると原文は
”Lord bless me! When should I ever have thought of putting by in cotton a piece of court plaister that Frank Churchill had been pulling about! ―I never was equal to this.”
ん? これは・・・自信ないけど、もしかして・・・
他の出版社の翻訳を確かめに、もう1度和書コーナーへ。
中公文庫(阿部知ニ訳)
「おお神様!フランク・チャーチルが引っぱりまわしていた絆創膏の切れはしを、
わたしだって綿にくるんでしまっておくべきでしたのに!―どうもわたしは、この点では負けらしいわ」
ちくま文庫(中野康司訳)
「あきれたわ!たとえば、フランク・チャーチルがいじりまわした絆創膏の切れはしを、
私は綿にくるんで大事に取っておけるかしら?そんなこと、私にはぜったいにできないわ」
わ か り や す い !
岩波がおかしいだけだったー!工藤さーん!
だからわからなかったんだよ!
「自分だったら例えばフランクの絆創膏ということになるかなって意味」の予想は当たっていたわけですね。
(エマはこのハリエットの行動を恥ずかしいと思っているので、「そんなこと私はできない!」と言っています。)
以前送った私の「ミスター・エルトンではありませんかねぇ?」メールを見ていないのか、
確認したけどフランク・チャーチル部分は誤訳じゃなかったからほっといたのか、知りませんが、
ちゃんと見直していれば今の訳で重版することなかったのに。誤訳に入らないですかね、これ?
あ、見直した上での修正無しだったらすみません。でも意味違いますよ?
「エマ」に関しては(というか私が読んだ「ノーサンガー・アビー」「分別と多感」も悪くなかったけど。)ちくま文庫さんのがいいかも。
中公文庫はエマとハリエットの会話すら、ですわ・ますわ・ございますわ口調でちょっと頭痛くなりそうです。笑
ちなみに上に挙げた部分だと、「この点では負けらしいわ」という訳は、私は好きです。「おお神様!」はちょっとどうかとも思うけど。
あと,2,3か所”白羽の矢”という語が出てくるのだけど,皮肉でなくプラスの意味だろうところなので,これも誤訳というか誤りですね。最近は良い意味が浸透しすぎだから,確かそれでもOKみたいな感じだった気もするけど。
本来は白羽の矢って嬉しくないものなんですって。ご存知でした?私はちょっと前まで知りませんでしたけど。
こんな記事がありました。
山田侑平氏の「岩波文庫 あの名著は誤訳だらけ」というのが
2002年4月号の文芸春秋に掲載されているそうです。
公で誤訳を並べたてられて,そこまでされても無視(むしって打ったら蟲って出てきた)するとか,
よくないですねぇ。こら読者のメールなんて蟲されたに決まってるわ。
きちんとした文章を世にお届けしたいと思わないのでしょうか。
意外とプライドのない出版社さんなんですね。
信頼していたのでがっかりです。
やってしまった誤訳はともかく,指摘されたら改訂していただきたいですよね。
これからちょっと岩波さんの外国文学読むの怖くなっちゃうなぁ。
岩波「高慢と偏見」は特に引っかかるところはなかったのですが、ちくま版も読んでみたくなりました。
ちくまのオースティンは多分全て、中野康司氏の訳です。
私が読んだ2作品を考えると、たぶん岩波の富田彬氏よりも現代風じゃないかと予想されるけど
(古いお話なので古い言葉遣いは私は気になりません。というかむしろ好き。)、読みやすいのではと思います。
ただ、中野さんはあとがきがつまらんのです。。
誤訳というキーワードで調べると色々でてきて,ちょっと興味深いです。
岩波さんではないですが,新潮文庫の鴻巣友季子訳「嵐が丘」がひどいらしい。
私が持っているのはそれだよ。笑
でもこれ読んだときは興味もなく,なんとか読み終わろうとしていただけなので
全く違和感を感じなかったと思います。
今読んでも,私も日本語怪しいので気づかないかもしれませんが。。
(たとえば,”春先の雪”という意味の名残雪を,溶け残っている積雪という意味で使っているとか。)
それにしても、「岩波文庫 誤訳」で検索かけるとか、性格悪いな私。笑
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>画像 海ちゃん(「コクリコ坂から」)
さっき掲示板に投稿。
大学時代先生から教わったことではエドマンドバークの「フランス革命の省察」で岩波訳はバークが保守思想の真髄を述べているところをあえて誤訳することで自社のイデオロギーにとって都合のいい訳にしようとしていると小耳に挟みました。
意図的な誤訳!そんなこともあるのですね・・ある意味プライドのある出版社さん。。
都合のいい訳にするぐらいなら出版しないでほしい^^; 著者の言葉が読みたいのに。
シンプルな表紙やちょっとお堅い雰囲気なのが好きなのでこれからもお世話になりたいですが、考えてしまいますね。
私には中公はハリエットの考えに憧れのような気持ちを持っている。
ちくまは逆に軽蔑しているように読み取れます。
自分で訳してみたところ、
「神様!フランクがいじり回した絆創膏の切れ端をコットンに包んでとっておくなんて考え、私はいつ持つべきなのでしょうか(いつ持てばいいのでしょうか)!私がこれと同じだなんてありえない。」
となりました。
これだとちくまの訳と同じ意味になります。中公の訳はshould have thoughtで考えてwhenを無視した結果「考えるべきだった」としていますが、ここではwhen should I have+thought of puttingと考えるべきではないでしょうか。この場合thoughtは名詞です。中公はifを省略した時のshouldの倒置と勘違いしているようにも見えます。
どっちの訳がが正しいとしても、どちらか片方は誤訳と言えるのではないでしょうか?
コメントありがとうございます!
確かに、少し異なる読みとり方ができそうですね。
私は中公とちくまは、翻訳者の捉え方の違いだぐらいにしか思っていなかったのですが。
thoughtには名詞があるのですね!知りませんでした。。
私もtkさんのご指摘された中公さんの訳し方と同じ考えをしていました。
ご自分での訳もありがとうございます。
わかりやすかったです。文法的にはこうなるのですね!
確かにそう言われると正しい訳は1つしかない可能性があるのですね。
たまたまなのか、どちらも自然だったので気にしませんでした^^;
気持ち的には、私はエマがあきれていると思っていますが、これは読者さんが自由に解釈すればいいのでしょうね。
勉強になりました。ありがとうございます!!
実は私はドラマ版を見ただけで原作は読んでいないのです。
ドラマ版でこのシーンがあったかどうかは覚えていないのですが、全体を通じて私にはエマがハリエットにあきれていたという印象があります。
原作を読んだminacoさんもそういう印象だとすれば、やはりちくまの訳が適切なのかもしれません。
翻訳は難しいですね。
返信が遅くなってしまいすみません!!
ドラマ版ですか!映画もあるのでしたっけ?確か。
ちょっと見てみたいです。オースティン作品の映像は私は「プライドと偏見」「いつか晴れた日に」しか見ていないのです。
エマはハリエットが大好きだけど、やっぱりプライドが高いというか、自分を一番信じている感じがするので、ちょっとテンションがおかしくなると若干あきれる兆候があると思うのですよねー。
原語で読んだらまた印象が少し変わったりするのかもしれませんが。
気が向かれたら原作も試してみてください^^
ちくまさんが良いかな?笑
興味深いお話をありがとうございました!