文章を書く時に
頭に置いてある、という程大袈裟ではないけれど
気にかけている明治の作家がいる
志賀直哉「焚火」

文明はあらゆる限りの手段をつくして、個性を発達せしめたる後、あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み付けようとする。一人前何 坪何合かの地面を与えて、この地面のうちでは寝るとも起きるとも勝手にせよと云うのが現今の文明である。同時にこの何坪何合の周囲に鉄柵を設けて、これよりさきへは一歩も出てはならぬぞと威嚇かすのが 現今の文明である。
漱石「草枕」
谷崎のような美文、芥川のような緊張感のある文章には馴染めないけれど
志賀直哉の簡潔で目の前に絵が描かれていくような美しさ
夏目漱石の文章は
戦地に赴く知人を見送る停車場で動き始める機関車の表現からの展開
小説の神様と文豪には
遠く及ばないけれど
簡潔で思いが届けられる美しい文章を書いてみたいものです