立正安国論12

　この法然の選択集をみるに、念仏の祖たる曇鸞、道綽、善導の誤った釈を引いて、聖道と浄土、難行と易行の旨を立て法華真言をはじめ総じて一代の大乗経六百三十七部二千八百八十三巻の一切の経文と一切の諸仏菩薩およびもろもろの世天等を信仰することを、みな聖道門、難行、雑行等に入れてしまって、あるいは捨てよ、あるいは閉じよ、あるいは閣け、あるいは抛ての四文字をもって一切衆生を迷わせている。そのうえに三国の聖僧や十方の仏弟子をもって、みな群賊といい念仏の修行を妨げる者であるといって、これらのせ聖僧に悪口を浴びせている。

　このことは近くは自分の立てている浄土の３部経に「念仏を称えれば必ず極楽浄土に往生できるが、ただ五逆罪と正法を、誹謗する者を除く」との誓文に背き、遠くは一代五時の肝心たる法華経第二比喩品の「もし人が信じないで此の法華経をき謗すれば、その人は命終わって後、阿鼻獄にはいる」との仏の誡文に迷う者である。

　　　　　　　　　

　　　　　　　　　明日に続く