![]() | 指導者の条件―人心の妙味に思う (PHP文庫 マ 5-8)松下 幸之助PHP研究所このアイテムの詳細を見る |
本書は、松下幸之助さんが「みずからの座右の書として、折りにふれ読み返し」たというリーダーの指針の書です。古今東西の優れた指導者の心得102ヵ条(特に仁術における心得)を、松下さんご自身の言葉を添えて各2ページずつ記した、まさに百読に堪えうる価値ある作品です。
まだ読んでいる途中ですが、あるページを読んだ時、松下さんの無意識の言葉遣いに驚かされました。
表題「心を遊ばせない」の本文に、「指導者は体は遊ばせていても心は働かせていることが大事である」、指導者は「四六時中仕事をしなくてはならないということではない」が、「心まで休ませ、遊んでいるということであってはならない」、「心はつねに働いていなくてはいけない」と語っているのです。
普通の経営者であれば、「頭を働かせる」と表現しても全く違和感のないところですが、松下さんは「頭」ではなく「心」を働かせろと、強調するでもなく全く自然に語るのです。人の上に立つからこそ、人一倍に「心」が大事なのでしょう。指導を受ける側に立てば、理屈だけで構成された指導より、思いやりや愛情を持って考えられた指導の方が遥かにやる気が出ますから。
「理屈で人は動かない」と言われるように、「頭」で理解できても「心」が動かなければ、成果を生み出す行動につなげることは難しい、そのことを痛感していたからこそ「心を働かせる」という表現が生まれたのだと思います。