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亡くなった夫・大介に対する愛情が深すぎて、何も手に付かない主人公・香菜子。
そんな香菜子に「デイ・トリッパー」で過去へ飛んでみないかという話が持ちかけられる。
過去の自分の中に、現在の自分の意識が入るという。
もう一度大介に会えるのなら、と、香菜子は「デイ・トリッパー」で過去の自分の中へと飛ぶ。
「歴史が変わるようなことはするな」と、念を押されていたものの、すでに分かっている結末を変えたくなるのは当然のこと。
どうにかして大介に起きる悲劇を防ごうと、あれこれ試行錯誤する香菜子の姿にハラハラした。
あまりに大胆に動きすぎて警告を受けてしまったり、現代に戻されたり…。
それでも何度も挑戦しようとする香菜子を自然と応援しながら読んでいた。
ここまで愛する人がいるっていいなぁと思った。
わずかな結婚生活が破られてしまったその悲しみの深さを思い知らされた。
タイムトラベルものにはつきものの、「歴史を変えてはならない」に挑んだとも見えるこの作品。
教科書に載るような大きな歴史ではなく、一つの家庭のささやかな歴史。
かつてはしていなかった見送りをする、近所の人たちと世間話をする、そんなちょっとした抵抗がもたらす結末。
読後感は、なんだかさっぱりした気分になった。
「いいのか?」と思うような展開もあったけど、コレはコレで素敵な結末だったと思う。