竹林亭白房

扇辰「団子坂奇談」★落語

これは、今日聴いた落語についてでなく、8月7日に「TBS落語研究会」の高座を録画視聴した際、ちょっとメモしておいたほうがよいのではと思ったことである。
扇辰の「団子坂奇談」は、これまでにも何度か聴いていた。初めてのときは、嗚呼、上方落語「腕(かいな)喰い」だとわかった。内容がちょっと怪異系のわりに、落げが拍子抜けするような妙な噺で、上方でも演り手は少ない。2011年以後、上方落語「腕喰い」を、当代の落語家で聴いたのは、林家花丸、林家愛染の二人だけである。ちなみに、同じ期間、東京落語「団子坂奇談」を聴いたのは、扇辰以外だと、入船亭扇里、桃月庵こはく。ただし、林家正雀が「腕喰い」として演じたものを一度聴いている。

扇辰は、「落語研究会」の高座の際、マクラでこれを師匠の九代目入船亭扇橋から教わったと言っていた。そして、その扇橋はこのネタを先代の二代目橘家文蔵から継承したと稽古のときに聞かされた由。

ただ、この奇妙な落語のもとを知らないでいたときに、楽屋で林家正雀と話していたときに、この落語のもとは岸さんだとわかったということだった。
岸さんとは、落語協会の事務員だが、そもそもは落語家で三遊亭市馬を名のった人だったとのこと。かわったネタを演る人で「茄子娘」なども手がけていたとのこと。

あとはWikipedia情報だが、この三遊亭市馬は、本名を岸正次郎と言い、七代目林家正蔵に入門した落語家だったようである。その後、七代目正蔵が没してからは、彦六の八代目林家正蔵に移籍。ここで、真打昇進して四代目三遊亭市馬を襲名したとある。しかし、理由は記されていないが、真打昇進の三年後に落語家を廃業して、落語協会の事務員になったとある。

おそらく、岸さんの三遊亭市馬が彦六の正蔵門にいた際、九代目入船亭扇橋や同門の林家正雀に「団子坂奇談」が継承されたものと推察される。

なお、川戸貞吉『落語大百科』では、「腕喰い」の項目に、昔十代目金原亭馬生がこれを演っていたと記されている。そして、九代目入船亭扇橋は「腕喰い」をもとに「団子坂奇談」をこしらえたとあるが、今回扇辰のマクラによれば、岸さんの三遊亭市馬から二代目橘家文蔵を経て、九代目入船亭扇橋へと伝わったものだとわかる。

ただ、岸さんの三遊亭市馬や二代目橘家文蔵は、演目を「団子坂奇談」としていたかどうなのか、そこまではわからない。ただ、林家正雀が「腕喰い」として演っているから、「団子坂奇談」として演目をかえ、内容にもいささか手を入れたという意味では、九代目入船亭扇橋が「こしらえた」のかもしれない。

□本日落語二席。
◆桂二葉「つる」(MBSテレビ『らくごのお時間』第160回※噺家八景SP)。
SkyシアターMBS、令和6(2024)年4月29日収録(らくごのお時間10周年落語会「噺家八景」昼席)※8月11日OA。

◆『笑点』大喜利:春風亭昇太(司会)/三遊亭小遊三・春風亭一之輔・林家たい平・立川晴の輔・三遊亭好楽・桂宮治(日テレ『笑点』第2922回※テレビ岩手開局55周年記念)。
岩手県盛岡市民文化ホール、令和6(2024)年7月20日収録※8月11日OA。
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