竹林亭白房

六代目松鶴「たぬき茶屋」★落語

□本日落語二席。
◆三遊亭歌武蔵「子ほめ」(NHKラジオ第一『真打ち競演』)。
東京渋谷NHK放送センターCR505スタジオ、令和5(2023)年1月20日収録(2月11日OA)。

◆六代目笑福亭松鶴「たぬき茶屋」(日本文化チャンネル桜『落語動画』)。
大阪道頓堀角座※公演日時不明。
これはかなりレアなネタだろう。松鶴が演っているくらいだから、古典落語だと思うが、川戸貞吉『落語大百科』にも『増補 落語事典』にも項目がない。とくに、後者にこれがないということは主だった速記本のどれにもこれが載っていないことを表す。

上記に公演会場を道頓堀角座としたのは、松鶴がマクラで昔の茶屋の噺をしているときに、「この角座の近くにも……」と言ったので、嗚呼、これは昔の角座なのだなと知ったしだい。また、客の笑い声や演者の声がホールに響く感じからも、たぶん角座だと思わせるものがじゅうぶんわかる。

なお、六代目松鶴の「たぬき茶屋」は、2007年4月29日にABCラジオ『日曜落語なみはや亭』でかけたことがあり、こちらの公演情報は、道頓堀角座、昭和47(1972)年10月31日。もしかすると、今日聞いたものと同一音源の可能性もあるが、今となっては確かめるすべがない(所蔵MDコレクションのどこかに紛れているかもしれないが)。

廓噺のなかでも、男女の機微を描いたというものでなく、露骨に情交をネタとしたものだ。廓にあがるたびに、いつもいつも相方をかえてなじみを作らない男は、自身が脱腸であることを恥じるからだった。
そして、その日も、新しい女を茶屋の女将に頼んで部屋で待っていたが、なかなか来ないので寝たふりをする。そこへ入ってきた女は、男が空いびきをして寝ているので、「お客さんは、たぬきでっしゃろ?」と言葉をかけると、「わいの大きいのん、誰に聞いてん?」で落げである。

これは、所謂「狸の金は八畳敷き」という慣用句と、脱腸がどういうものかとの二重の知識がいる。今なら、両方とも仕込みが必要な気もする。演者にしてはそれがやっかいなのが敬遠されてあまり演じられていないのかもしれない。ちなみに、この昭和の中ごろと思われる高座で、何の仕込みも松鶴は入れていないが、落げで笑いが起っているので客に意味はちゃんと伝わっているようだ。昔は脱腸が多かったのだろうか。それにしても、消えてなくなるのは惜しい落語だという気はする。
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