餓死(うえじに)した英霊たち藤原 彰青木書店このアイテムの詳細を見る |
本書を読み返してみた。1977年の厚生省援護局のまとめによると、軍人・軍属・准軍属の戦没者は約230万名である。著者の推定によると、この内の70%の140万人が戦病死である。そのほとんどが餓死者である。
戦場で敵の銃弾に斃れるならまだしも、無謀な作戦のために、戦場で飢えて死んだのでは、兵士たちの恨みをどのように鎮魂したらいいのか。本書は著者なりのそうした兵士たちへの鎮魂の書である気がする。
第2章の3は「作戦参謀の独善横暴」には次のような記述がある。…責任は、もちろん最高統帥者である天皇とその補佐者である統帥部の長(参謀総長と軍令部総長)、そして各段階の軍司令官にある。しかし実際の経過をみると、作戦担当のいわゆる中堅幕僚層が、すべてのおぜん立てをして、作戦を動かしていたのであった。
前に読んだので、次のところに赤で線が引いてある。
参謀本部第一部長田中新一、陸軍省軍務局長武藤章、作戦課長の服部卓志郎、軍事課長真田穣一郎、作戦課戦力班長辻政信の名前が出てくる。
こうして田中、服部、辻のトリオが作戦部長、作戦課長、戦力班長として、参謀本部を開戦論にまとめ、ためらう陸軍省と引きずり、海軍内の主戦論者と呼応して、ついに無謀な対米英戦争に突入したのである。
許せないのは、服部と辻らの戦後の生き方である。両名とも戦犯の訴追を免れ、服部は占領軍(GHQ)の「歴史課」に採用となり、その後自分に都合のよい戦史を刊行している。辻は2度参院選に当選して議員を務めている。これは日本人自身による自前の戦争の総括が出来ていないからである。