「赤と青のエスキース」という
本を読んだ。
4つの連作短編とプロローグ、
エピローグからなる、青山美智子
の小説だ。
"エスキース"とは下絵のこと。
1枚の"エスキース"という題名の
絵画がつなぐ物語。絵画や美術に
関する話としても楽しめる。
中でも、良いなと思ったのは、
2つめの額縁のお話。あくまでも
主役になるのは絵だが、その絵に
完全な調和をめざす額縁の世界。
それぞれの短編の主役となる人物
は異なるけれど、いずれも不器用
な人たち。自分の気持ちと裏腹な
行いをしてしまったり、他人の気持
を見誤ったり。そんな不器用さを
描く視点は温かい。
絵画には近景、遠景という言葉が
ある。近景にフォーカスすると、
遠景がぼやけたりするのだが、
そうしたフォーカスの変化を上手
に使った作品とも言える。
どういうことかは読んでみての
お楽しみ。ただ、エピローグは
その種明かしの解説みたいで…。
ちょっと興覚めでありました。