空はうす曇り。
冷たい北風が今にも雪をはこんできそう。
クリスマスを間近に控えた冬の日の午後、
そんな空を見上げていたのもつかの間
わたしは急ぎ足でパン屋へ向かった。
ドイツの古い街の片隅にありそうな、
こぢんまりとしたそのパン屋には
たくさんの小さなクリスマス飾りがにぎやかく飾られていた。
でも、にぎやかなクリスマス飾りとはうらはらに、
人気のパン屋だけあって、棚にはもう
ほんの数種類のパンしか残っていない。
おじさんとおばさんの2人だけで作っているから
焼き上げられるパンの数にも限りがあって、
ま、しかたないかと、残っていたパンを品定め。
そうしている間にも、1人、2人、3人とお客さんが入ってくる。
のんびり選んでいたら残っている少しのパンがとられてしまいそうで、
ちょっと焦りながら目についたパンを次々とお盆の上に乗せ、
レジへと向かう。
先に並んでいた人、後からお店へ入ってきた人は
レジでパン屋のおばさんから「シュートレン」なるものを受け取っていた。
えぇ、もうシュートレンは残りわずかになっているんでございますよ。
さっきも、電話がありましてね、「シュートレンまだありますか!?」って。
残りふたつですー、後はご予約くださいませねーってお答えしたとこなんでございますよ。
パン屋のおばさんが、江戸っ子のような早い口調でお客さんに話しながら
手際よくシュートレンを袋に入れていく。
シュートレンはかわいいクリスマスカラーの細長い箱に入っていた。
生地にはドライフルーツやナッツ、マジパンが練り込まれ、
表面には粉砂糖がふりかけられている、ドイツのパン。
大きなサイズのシュートレンを、クリスマスまでのアドベント期間に
少しずつスライスして食べるのが本来の習わしらしい。
わたしはシュートレンが気になってしかたがない。
残りふたつと言われれば、よけいに気になる。
買ってしまおうかどうしようか。
自分の中の葛藤と戦いながらのろのろとお釣りを財布へ入れるわたしに、
パン屋のおばさんはパンを袋に入れながら早口で言う。
えぇ、えぇ、ゆっくりでいいんでございますよ。
忘れ物しちゃぁ、いけませんからね。
ほら、あの腕時計。
忘れていった人がまだ取りに来ないんでございますよー。
ははは。
おばさんの粋な口調がおもしろくて、思わず笑ってしまう。
会社に戻ったら、さっそくカマダイさんに話そう。
そう心に決めて、袋いっぱいにつめてもらったパンをかかえ
ゆっくりとお店のドアをしめると、
にぎやかなクリスマス飾りの向こう側に
手際よく、そして忙しそうに働いているパン屋のおばさんの姿が見える。
わたしは、きっと今ごろ、サンタクロースのお家でちょこまかと動きながら
忙しそうにクリスマスプレゼントの準備をしているであろう
妖精のトントゥを思い出していた。
これは、ほんの、1か月前のおはなし。
<やました>
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