クリスト氏が亡くなったことを知りました。心から尊敬している美術家の一人だったので、本当に残念でなりません。
1991年に日本とアメリカで同時に行われた『アンブレラプロジェクト』は、まさに感動的な出来事でした。日米の対照的な地域に高さ6メートル直径8.66メートルの巨大な傘を大量に設置し、同時にそれを開くのです。
アメリカではカリフォルニアの広大な放牧地に1760本の黄色い傘が、日本では茨城の常陸太田市から旧里美村へ至る広い人里に1,340本の青い傘が立てられました。田んぼや、川や、神社や、いろんな場所に大きな真っ青な傘が立てられ開かれたその光景は、まさに感動的だった。
他にもベルリン国会議事堂を梱包した『ライヒスターク』など、プロジェクトは常に巨大でしたが、つねに奥さまのジャンヌクロードさんと一緒に制作をし、スポンサーをつけたり助成金をとったりしないで自らのドローイングなどの作品を売ったお金だけでプロジェクトを進めていったときいています。
そして何よりも素晴らしいと思ったのは、クリストとジャンヌクロードの芸術が、常に「話しかける」ということから始まって「あきらめない」ことによって「時間をかけて」進行してゆくことでした。
先に書いた茨城のアンブレラプロジェクトでも、傘を立てる土地の地権者やそのご家族ひとりひとりに自分の言葉でお願いしてまわり、その熱意が信用となり、家を貸してくれる人さえもが出てきて、いつしか地域全体に話が広がり、プロジェクトが動き始めていったという記録を読みました。
夫婦が徹底的に力を合わせ、何年も何年も粘り強く交渉を重ねたり多数の困難を克服して共同作業を実現してゆくその姿に、僕は何度も何度も背を押されました。これからも、きっと背を押され続けるのだと思います。
フェイスブック5月30日付の声明文には、84歳で自然死だったと書かれていました。進行中だった最新プロジェクト"『 l ' arc de triomphe 』は、パリの凱旋門を梱包するもので、コロナ禍のせいで延期されていましたが、 2021年9月18日~ 10月3日に実行されるそうです。
※関連記事 クリストとジャンヌ=クロード夫妻の(2017)
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