ひとりの人間の心には
世界より広い別世界がひろがっているのではないか
と、僕はときどき思う。
いくら世界のことを知っていてもすぐそばの人の心を理解できない奴がいる。世界のことなんかよく知らないけれど誰か一人の心を深く理解している奴もいる。で自分はどうなのなんて、ちょっと思うこともある。
そんなことをふと思ったのは、春先に青山に出たときに寄ったジョン・ルーリーの展示のせいかもしれない。下はそのチラシの一部で書かれていることが気になり行った。ふた月ちかく前だけれどその場で感じた感じをおぼえている。
ルーリーは50代前後の人にはミュージシャンとして有名と思うし、ジャームッシュの映画を思い出す人も多いはず。だけど、この人の絵は作者が何者だったかということを忘れさせる。
それらを見たことで、胸の奥で渇いていたものが少し濡れた。同時にズキズキとするようなものも心に入ってきた。それから、不安になるような暗さが、絵のむこうがわからコチラを視ているようにも思えた。
美しいものの底には見知らぬものが棲んでいるのだろうか。と思った。どこかに連れていかれそうな感じもあった。深い水をのぞきこんだ時みたいな感情が、わいた。
イマをときめく現代アートの巨匠展も歴史に残る名作展も素晴らしいけれど、それらとは異なるストレートな衝動が、そして優しくかつ鋭いメッセージが、心に刺さった。
七夕までワタリウム。