櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

がんばらないえねるぎー

2011-10-18 | アート・音楽・その他
佐野洋子さんの本を、ふと読んでいる。
いや、読んだと言うより、眺め入っている。
この人の本、眺めているだけでも、なぜかしら、落ち着くのだ。

100万回生き返って、やっと愛する家族を得た猫が、初めて愛しためす猫の死に、はじめて泣いて、永遠に死んでゆく。という物語を書いた人だ。

で、いまこれはエッセイ。
『がんばりません』って、とても久々。何回目かな。
ぱらりと頁をひらき、じんわり見つめて、またぱらり。
やっぱり、スッと力を抜いてくれる。ダンスみたいに。

佐野さんの本を読んだ最初がこれだったか、それとも『100万回生きたねこ』だったか。
忘れちゃった、もう覚えていない。
そう思うと『覚えていない』という本が目に入る。
なんだか大抵のことは描いている。
そういう作家なのだ、佐野さんは。
生きている限り、毎日があり、毎日がある限り、何かが訪れ何かが去ってゆく。
大事なものも愛しいものも、訪れては去り、去っては訪れ・・・。
駆け巡る日々のことごとを、さりげなく、きめこまやかに、すくいあげてくれている。
特別ではないけれど、大切な感触が、ページページから胸にくる。

「外国語って、まるで音楽みたいだね。
「嫌われて長生きしたくはなけれども可愛がられて死ぬよりはまし。
「あの頃、私は母さんがいつかおばあさんになるなんて、思いもしなかった。
「意味なく生きても人は幸せ。

いつしか、いくつかの本を求めていた。手の届くところに置くようになった。
本棚よりも、テーブルやソファ、あるいは普段のバック。
そして、くたびれた時には眺めていたりする。
眠れぬ夜、ため息の午后、やけに眩しい朝なんかも。
文章なのに、絵や写真のように味わっている。
がんばらないエネルギーが晴れやかに満ちてゆく。

がんばってね、がんばらねば、がんばるぞお~って言っている自分がいても他人がいても、
その都度ハイごくろうさま、わたしゃこのまま、がんばりませんから。って言えると気丈である。
このままで、いまのままで、いまを存分に・・・。

力を抜けば抜くほど、大事なものが見えてくる。
これまたやはりダンスみたい。

亡くなって、もうすぐ一年になる。
『死ぬ気まんまん』という、ものすごい題名の遺作をのこして秋空のむこうに行かれた。
本にも体温があると、教えてくれた人だった。

そう思い返しながら、佐野洋子さんの本を閉じて置く。
テーブルに置いて、枕元において、じっと眺めている。
この人の本、眺めているだけでも、いいえ、家のどこかにあるだけでも、
なぜかしら、落ち着くのだ。
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