櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

バルテュス展

2014-06-19 | アート・音楽・その他
バルテュスを初めて観たのは『街路』。雑誌に掲載された小さな白黒写真だったが強く惹かれ、その年に運良く展覧会があった。まだご本人の存命中、1993年のこと。
当時の僕は最初の個人公演を打つ準備のさなか。『霧』というアンサンブル作品(7人のダンサー・俳優・ピアニスト・ノイズミュージシャン・電子音楽家による)をつくっていた。行き詰まりかけていたキツイ状態が、バルテュスの作品に触れて何かが急に動き出した記憶がある。血のめぐりを得たのか。あれから20年以上たってまた観たバルテュスは、さらに激しい刺激をくれた。
とりわけ、あれは奥様を描いたのだと思う未完の作品、着物をきた女性が立つ姿は人のアウラと空気空間色彩が光の繭のように見えた。
そして初めて見た舞台スケッチ。白と黒の狂いそうな踊り、それはアントナン・アルトーとの仕事。僕ら舞台人には伝説のアルトー『チェンチ一族』その舞台美術を担当したのがバルテュスだった。その下絵をついに見た。ツボ!

25歳のときアヘンを飲んで自殺しかけたバルテュスを救ったのは、たまたま遊びに来たアルトーだったというから、いまこうしてバルテュスの世界に触れることができるのも、アルトーのおかげだったのか。

上野のバルテュス展。間も無くおわるから混んでるかも知れないが、やはり必見と思います。さすがに壮観。代表作のほとんどが一同に会するこのような機会はまたあるかどうか。昨年のベーコン展に並んで、僕にとってはひときわ心に残る体験でした。

バルテュスの絵にはピエロ・デラ・フランチェスカ以来の霊統が息衝き、ヨーロッパの光と闇が溶け込んでいるのではないか。沈黙の深さ、モデルと画家のあいだに交響する時空の虚実皮膜、その定着は魔術的。しかし夢ではない、現実の世界にこそ戯れる生の陰影、この世は妖しく哀しい、その美を見抜いた眼球譚がバルテュスの軌跡か。バタイユの娘さんもモデルの一人。彼を巡る人々もまた奇跡のよう。

ショップにバルテュスの遺したポラロイド写真集が販売されていて、1冊10万円ほどもしちゃうけど、見せてもらった。これが、かなりのゾクゾクもの。
脳髄に焼き付きます。
丸の内の三菱ギャラリーで展示ありです。

三菱ギャラリー

バルテュス展HP

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