蔡國強氏の個展「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」で、とても深い感銘を受けた。
上掲は、この展覧会に先立つ6月26日いわきで行われたプロジェクトの新聞報道(LINK)だが、「ここの人々と一緒に時代の物語をつくる(展示紹介文より)」という氏の言葉が見事に反映して凄みを感じた。そしてそれは同時に長年にわたる積み重ねからこそ生まれてきた作品ゆえの美しさと力強さでもあると思った。
あきらめないこと、ブレないこと、とにかくやること、これらが芸術には最も重要な精神だが、この人の作品からはいつもこれらの人間的な力が強く感じられる。
30年前に四ツ谷の寺の地下で蔡國強の個展(1991年)を初めて見たとき、同じ時代を生きる人による作品の力に息をのんだ。その創作態度に、同じ時代を乗り越えようとする芸術家の生き様に、激しく背を押された。
あの時の作品も、今回の大規模な個展では再び紹介され、核の一つとして強い磁場を形成していた。続々と展開する傑作に瞠目しながら、ここでは一人の芸術家の駆け抜けてきた30年間という時の層を体験することもできる。巨大な空間に点在する爆発の痕跡は、生の痕跡にも重なっているように思えた。
また、2015年の個展『帰去来』で感じ書き留めた僕自身の言葉も、今回また強く蘇った。「私たち人間は、火を起こす力と火を消す力の両方を持つ存在であること。つまり、破壊者でありながら創造者であること。( LINK )」というような言葉だ。自分で思い書き留めた言葉というのは忘れてしまうことも多いのだが、やはり強い印象が残っていたのだろう。
ほかにも様々なことを思い出し、新たに思い、感覚感情が騒ぎ、そして考えさせられた。
火をめぐる思想のこと、世の中の流れのこと、自分自身の歴史のこと、蓄積されたものごとについて、経験について、行動について。
そして、この人がつくる作品から、目の前にある爆発の痕跡から、何かの生まれる力を信じよう、現在たったいま現れるものを祝福しよう、という声が聴こえてくるようだった。
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