断片・スル、ナル、という

稽古日記からですが。

「気持ちと行為がぐるぐる回る。なにかを言葉にスルのとなにかが言葉にナル、ということがあるように、踊りにもスル踊りとナル踊りがあるように感じる。
スル踊りというのは、こうしたいああもしたい、という焦がれるようなことから始まるのだろうし妄想や欲が生きるというかんじで、意思の力や我がぐっと身体を押すのかと思う。→ 何回も繰り返し出来るが、それは逆に言えば、よほど繰り返し行ってみないと味わいが出てこない、ただ造形的なものだったり仮面みたいになってしまう気がする。悩まず安易に言葉にスルと、とたんに白けてしまうのと似ている。心に届く楽音を出すのが難しいのにも似ている。しかし自然音などは出そうと思って出すとは違って、生きた音だから訪れを待つしかない。
ナル踊りというのは色々な出来事や憧れや痛いものが積もりに積もって、心臓のあたりからたまらず動揺したり形を成すのか、ある特別な緊張感のなかでフツリと訪れ、そして、こわいほど一回しかない。再現しようとした時点で、それは別物になってしまう。無がアルかナイか考えた時点で無でなくなるのに似ているかもしれない。
どちらがどうというつもりはないけれど、スルとナルの関係というのはどういうことなのか、も、気になる。関係あるやなしや。男と女のような天邪鬼なことなのか、あるいは、果てなく追いあって音楽のフーガのような、響きになってゆくのかなあ、と思うことも、、、。」

ひきつづき稽古を。

櫻井郁也ダンスソロ新作公演 7/29〜30・公式サイト