芝居を観るのは街を呼吸することに近かった。
とここに書いたことがある。唐十郎さんの芝居のことだ。本当にそうだった。初めて観た記憶は鮮明で、未だ爽快さが残っている。40年ほど経つが、揺さぶられた感情に年月の影響はない。(記事)
紅テント、そう呼ばれていた。夕暮れ時、新宿の花園神社に紅色のテントを建てて芝居を打つ。状況劇場という名が正式だったが、まさに状況そのものが生々しくそこにあることを体感した。
見知らぬ人同士が膝を抱え肩を寄せ合うように座ると、平手打ちのような始まり方で言葉の嵐になる。時に声が掠れるほど叫び歌い、ふいに天幕が飛ばされ新宿の喧騒が雪崩れ込んでくる。
行くたびに胸騒ぎがした。芝居が終わっても胸騒ぎはおさまらなかった。絶え間なく呼び交わし合う声。声から言葉が咲き乱れ、言葉とは熱なのだと思い知った。人と人のエネルギーが、何かを起こし続けるのだった。
もう一度、観たかった。
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