世論に動かされない、ひとつの人間になる。
という言葉をきいて、深く頷いた。
ことし2月5日に亡くなられた日本画家の堀文子さんの言葉。
堀さんの描かれた花の凛とした美しさにも重なる言葉だった。
最後に出演されたというテレビ番組を観て、そのお声を初めてきいた。
関東震災のときに起きた排斥運動や虐殺事件のこと、2.26事件のこと、ベルリンオリンピックのこと、などをはじめ、1930年代半ばにかけての、世の出来事のこと、そのときの暮らしの風景、そして自らが感じていられたことごとをひとつひとつ鮮やかに思いだしながら話されたシーンがあって、そこに、とても強い、祈りのような思いを感じた。
あの1930年代が、今この私たちの時代に、どこか重なる状況や世相をもっていたことを思い出しながら、僕たちに警告をされているようにも思えた。
気がつけば警察や軍が学校や生活のなかに深く関与していたこと、いつのまにか多くの人がスポーツの勝敗や男女のスキャンダルに熱狂するようになっていたこと、そのような話にはどきりとする。
なにか似ている。やはりどこかしら今と重なる。
いつしか、役に立たないものが相手にされない世の中になっていた。
そして、美もそのようなひとつに、なっていた。
というお話もあった。これもやはり、いや、もっと。
僕は役に立たないことが大切だと思っている。
役に立つものばかり大切にする世の中なんて、とても窮屈で恐ろしい。
だけど、だんだん、今は、そうなっているのを、肌で感じる。
なぜこうなってしまったのだ、と、どこかで思う。
いま、敏感にならざるを得ないことが、ある。
堀さんの語られる言葉をじっと聴いていたのだが、その言葉に、言葉を発する声に、言葉と言葉の間合いに、目覚めを促されるような気持になった。
人の言葉を聴くことの、人が人に何かを語るということの、大切さを、あらためて感じさせられるのだった。
ながく絵を描いてきた方の言葉の一つ一つには、深い信念が宿っていた。
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