ヨーロッパの小さな村。緑にかこまれた古いチャペルで、一つの音が鳴り続けている。時折、訪れて去ってゆく旅人を迎え入れ、また送り出してゆく音。
『できるだけ、ゆっくり』と題された音楽の演奏が、ドイツ東部の廃教会で続いている。
全編300年以上かかる演奏というのだから、大変なことだ。
でも、このプロジェクトは、その存在自体とてもロマンチックだなと、思う。
ゆっくりゆっくり、一つの音を響かせながら、世代を越えて受け継いでゆく。
この曲を作曲したJohn Cageについてのドキュメントが放送され、
そのなかで演奏の情景も少しだけだが紹介された。静かで、優しい風景だった。
少し息を入れることが出来た。
全体をCage氏の楽曲で構成してダンスの舞台を行った事があった。
15~6年くらい前だったと思うが、それから今までのあいだ、Cage氏の音楽は、内面で響き続いている感じがしてならない。
とりわけ、例の『4'33"』。
音を鳴らさない事になっているのに変かもしれないけれど、なんか、とりわけ…、…。
「一、休止。二、休止。三、休止。」(『4分33秒』)
白い紙に、ただ、そう書かれただけの楽譜を引っ張りだして眺めた。じっと眺めながら沈黙していた。沈黙しながら、沈黙の音楽のことを思う、その、少しユーモラスで少し哀しいような、はかない数分が、15年前よりも随分と短くて名残りおしくなっている。
もっとゆっくり時間がすぎてゆけばいいのに。なんて思う。
以前は、4分33秒の沈黙のなかで、微かに聴こえる自然音も音楽に聴こえてくるのが楽しかった。それが今、内耳の奥で、もっと別の、音と呼んでいいのかどうか分からない音が重なってゆく。
空気や鼓膜を振動させる音、空気にも鼓膜にも触れないけれど確かに心のどこかを振動させている音ならぬ音。そして、音が重なるにつれて、拡がり深まりゆく沈黙。
一、休止。
二、休止。
三、休止。
たった三行の、音を鳴らさない楽譜を眺めながら、
もっとゆっくり、できるだけ、ゆっくり……。
そんな声が聴こえてくる。
そんな声を聴きながら、世代を越えて音を奏で続けられている、もう一つの音楽を思う。
Cage氏の楽曲『できるだけ、ゆっくり』のサイトには、こんな言葉が書かれている。
「この音楽には、一度も聞くこと
がない、という聴き方もある」
ウフフ。
そういえば、『0分00秒』という曲も、あったっけ……………。
『できるだけ、ゆっくり』と題された音楽の演奏が、ドイツ東部の廃教会で続いている。
全編300年以上かかる演奏というのだから、大変なことだ。
でも、このプロジェクトは、その存在自体とてもロマンチックだなと、思う。
ゆっくりゆっくり、一つの音を響かせながら、世代を越えて受け継いでゆく。
この曲を作曲したJohn Cageについてのドキュメントが放送され、
そのなかで演奏の情景も少しだけだが紹介された。静かで、優しい風景だった。
少し息を入れることが出来た。
全体をCage氏の楽曲で構成してダンスの舞台を行った事があった。
15~6年くらい前だったと思うが、それから今までのあいだ、Cage氏の音楽は、内面で響き続いている感じがしてならない。
とりわけ、例の『4'33"』。
音を鳴らさない事になっているのに変かもしれないけれど、なんか、とりわけ…、…。
「一、休止。二、休止。三、休止。」(『4分33秒』)
白い紙に、ただ、そう書かれただけの楽譜を引っ張りだして眺めた。じっと眺めながら沈黙していた。沈黙しながら、沈黙の音楽のことを思う、その、少しユーモラスで少し哀しいような、はかない数分が、15年前よりも随分と短くて名残りおしくなっている。
もっとゆっくり時間がすぎてゆけばいいのに。なんて思う。
以前は、4分33秒の沈黙のなかで、微かに聴こえる自然音も音楽に聴こえてくるのが楽しかった。それが今、内耳の奥で、もっと別の、音と呼んでいいのかどうか分からない音が重なってゆく。
空気や鼓膜を振動させる音、空気にも鼓膜にも触れないけれど確かに心のどこかを振動させている音ならぬ音。そして、音が重なるにつれて、拡がり深まりゆく沈黙。
一、休止。
二、休止。
三、休止。
たった三行の、音を鳴らさない楽譜を眺めながら、
もっとゆっくり、できるだけ、ゆっくり……。
そんな声が聴こえてくる。
そんな声を聴きながら、世代を越えて音を奏で続けられている、もう一つの音楽を思う。
Cage氏の楽曲『できるだけ、ゆっくり』のサイトには、こんな言葉が書かれている。
「この音楽には、一度も聞くこと
がない、という聴き方もある」
ウフフ。
そういえば、『0分00秒』という曲も、あったっけ……………。