砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

No 50

2005年03月11日 | ログ
♯はじまり

偶然は必然かは問題ではなく。
彼らは出会ったし物語はそこから始まった。

♯歌う

歌姫と学者。
それが彼らの関係。
歌が彼らの出会いであり絆であり。

♯水面

歌姫の歌は静かな水面に波紋を起こす。
遠く遠く。
彼女の歌は世界を廻る。

♯海

魚が歌う。
泡を波を。
波紋にのせて、ゆらりゆらりと。

♯風

風はそれを喜んだ。
彼の一族は返礼として海と歌姫に塩の香りを送った。

♯音

風が吹き音が届く。
その不可思議な共鳴に、本棚の塔に住まう学者は始めて歌を素晴らしいと感じた。

♯銀色

歌の翌日。
学者の街は数十年ぶりの雪に見舞われた。

♯夢の砦

学者は歌の主と出会いたいと願った。
状況はそれを許さなかった。
信念は諦めを許さなかった。
そうして男は深雪を掻き分け旅に出た。

♯羽根

歌姫は歌う。
音程に飛翔の願いを。

♯夜

学者が街を出て初めての夜が来た。
彼は一人、瞳を閉じる。
寂しくなどなかった。
学者は最初から一人ぼっちで生きていたから。

♯旋律

ふと、口ずさむ。
あの日届いたフレーズ。
記憶の旋律を口ずさむ。

♯夜明け

気がつけば夜明け。
学者は立ち上がる。
口笛を、口ずさみながら。

♯言の葉

歌姫の歌に歌詞はない。
彼女は誰かに捧げる言葉など知らなかったし
捧げる相手もいなかったから。

♯波

廻る廻る。
想いを乗せて。言葉を乗せて。
二つの波は行ったりきたり。

♯しずく

気がつけば涙した。
理由はまだ、分からない。

♯色彩

待つ人は淡く、儚く。

♯春

いつの間にか花が咲く季節。
旅は果ても見えずに続き、男は歌を追い求める。

♯夏

恵みの季節。
旅は果てなく見えずに続き、男は歌に恋焦がれる。

♯秋

収穫の季節。
旅は果てなく見えずに続き、男は歌に癒される。

♯冬

凍えの季節。
旅は果てなく見えずに続き、男は歌を諦めない。

♯雨

長い長い雨だ。
凍えそうな雨だ。
いつか止む、終わりある雨だ。

♯蒼

空があった。
海があった。
ただ、蒼があった。
学者は迷わずに足を進める。
この先に歌がある。

♯鈴の音

歌姫の歌に伴奏が加わる。
彼女の歌に楽器はいらない。
鈴の音は、まだ見ぬ誰かへの道案内。

♯神様

学者は神を信じない。
歌姫は神を信じない。
神様は神を信じない。

♯金魚

果てない蒼を手ですくい
紅い魚を水槽へと流す
学者は彼に名前をつけた

♯アジアの風

私の体に風が吹く
彼の体を風が凪ぐ
二人の風が近づいて・・・・・

♯ため息

誰もこない
誰かくる
希望し失望その繰り返し
重ねるほどに息をする

♯月

空に星は上り
二人の歌が同じ空に響く
届くだろうか、あの月に
届くだろうか、あの人に

♯夢

夢を見た。
美しく、壊れそうな女の子だ。
夢を見た。
自分を探して旅をする男の人だ。

♯遠い

枯れるほどに歌う。
迷わぬように、夢が遠くへ逃げないように。
枯れるほどに、求めて歌う。

♯はかない

歌姫の喉は花の音を失い
学者の体は壊れかかっていた
世は儚く、人は儚く、けれど・・・・・

♯旅

旅をする。
足を壊し、腕を壊し。
旅をする。
光を失い、瞳を失い。
それでも男は旅をする。

♯時

そして物語が始まり10年が経った。

♯森

長い長い森を一人の旅人が越えた。
彼の口笛は既に失われた音だけれど。
彼の心は失われることなく前へと進む。

♯結晶

想いは硬く
触れらば砕け

♯振り子

近づき離れ
近づき離れ
けれど遅々と
けれど遅々と
二人の振れ幅は近づいていく

♯吐息

枯れた唇はもう歌を歌えない
吐息だけ。
だから学者で吐息で歌う。

♯太陽

陽が昇る
陽が落ちる

♯鳥

いつか彼女の歌で羽ばたいた鳥は
その体に無数の傷を負いました
羽は朽ち、翼は折れ
鳥は地面へと落ちました。
硬い砂。
触れる掌。
私を助けた人間は、私に名前をくれました。

♯花

花畑には世界の全ての花があり
私を助けた男はその中で最も美しい花と最も醜い花で冠を作りました。

♯悠久

果てがない旅が続きます
歌のない世界が続きます
男の旅は続きます。
蒼い魚と鴉を連れて。

♯螺旋

絡む絡む。
混ざる混ざる。
果てなく続き、子供を作る。

♯遺伝子

果てない旅。
歌のない世界。
男の旅が終わります。
体は砂に。
命はここに終わります。
来世も彼女を探すと誓って。

♯輪廻

体を失い
魂を失い
命を失い
全ては無へと還ります
学者であった命は旅を続けたいと望みます。
世界はそれを許しません。

♯宇宙

気がつけば世界はまっくら。
いいえ、世界は明るく、ただ彼だけが暗いのです。
廻る廻る。
意識は拡散し自我は拡散し歌は・・・・・

♯星

二人の男女は互いに焦がれ
そうして出会わず生命が終わる。
星はそれを悲しみ、一つの歌を歌います。

♯舟

まっくらの世界に海が出来ました。
波紋を浮かべる水面に蒼い舟が浮かびます、
道案内は鴉と金魚。
舟は境界線を越え、空へと昇り

♯飛翔

空を越え、塔が見えてきた。

♯おしまい

偶然は必然かは問題ではなく。
彼らはこうして出会ったし物語はそこから始まるだろう。
世界を廻る、あの歌の下に。




「詩的創作」のための50のお題


がぁ。

2005年03月09日 | ログ

どういう因果か昨日は畑仕事を手伝っていたので全身がいい感じに筋肉痛です。

リンク張るだけでアレですが一応紹介を。

人権擁護(言論弾圧)法案反対!

ここに来てくれる人達にとっては周知の事でしょうが何か普通にダメっぽい感じの法律ですね。

これ見ると何かされる度に先生に言うからー、とかオウムの如く言う女子を思い出します。

不当に差別される人は守られるべきなんですが

体制側によるワンサイドフォローに保護される人には哀れみすら覚えます。

先生に言った事で余計に嫌われたりしちゃうんじゃないのかなー。

書く人と読む人

2005年03月07日 | ログ

世の中の人間を二種類に分けるなら

与える人と受け取る人に分類できます。

基本的に世の中では前者の方が価値ある存在として認識されているし

私自身読み手は書き手に劣る存在だと考えています。

砂蜥蜴は本質的には読み手であり受け取り手であり

人から感動を受け取る種類の人間ですが

何となくそれが悔しくて色々Web界に非生産的なテキストを書き残してる訳です。

そう、悔しいのです。

非生産者は生産者に嫉妬する。

形あるものが欲しいのです。

だから書くのです。

そして読み手として生まれた自分は書き手としての自分の未熟さを嘆き嫌悪するのです。

うがー。

何でこんな事を書いてるのかというとここ一ヶ月程二次創作の小説を読み漁ってまして。

一時創作と違って二次創作はキャラクタの造形や背景はみな共通なので

書き手の実力がモロに出るんですよねー。

作品にインスパイアされて書いて死にたくなりました。




新記録

2005年03月07日 | ログ

このブログ始まって以来の最小閲覧者数

3/06(日) 24 pv 19 ip -位(148297 BLOG中) を記録しました。

前日は

3/05(土) 160 pv 67 ip -位(147391 BLOG中)

まぁ更新滞り気味なんで当然なんですけど

まさか開設した日よりもアクセスが少ない日が来るとは思ってなかったなぁ。

精進します。

世界が始まるその前に

2005年03月05日 | ログ
――ふと、目が覚めた。

ふかいふかい森の中。

たくさんの人達が踊ってる。

くるりくるり。

独楽みたいに。

ごうごうと。

松明の火が森を焼いていく。

たくさんの人達が歌ってる。

あかいあかい。

血の色みたいだ。

あかいあかい。

石榴みたいに。

月は空のてっぺんにのぼり。

たくさんの歌も気づけばとうに止んでいた。

僕はどうしたらいいか分からずに

ただ壊れた独楽を見つめていた。

そしてお姫様はやってきた。

黒いドレスのお姫様は

僕の顔を見て愉快そうに笑った。

――あなた。

   ――何がそんなに悲しいの?

――と

僕はお姫様に向かって言った。

――そんなの――分からない

――そう。君はまだ『子供』だものね。
   それじゃあ血と魂の約束をしましょう。
   決して破られることのない約束を。
   決して破ることの出来ない約束を。

あかいあかいうみのそこ。

僕と彼女は口付けを交わした。

決して破る事の出来ない約束を。

これが僕の最初の記憶。

これが僕の最後の記憶。



これはずっと昔の物語。

悲しい世界が始まる前の

悲しい悲しい

そんな夜の物語。

悦楽

2005年03月03日 | ログ
往く道に咲く小さな花に喜んで

僕らはそうして前を進む

帰り道枯れ果てた花を見て

僕らは悲しみ立ち止まる

時の流れは残酷で

立ち止まることは出来ても後戻りは許されない

なら、潔く前に進もう

もうすぐ春が訪れる

さぁ行こう

一本でも沢山の、野に咲く小さな花探しに