砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

『十人の人間の生と死の話』

2004年08月30日 | ログ
【序】
この物語に意味はない。
多くの人間の生と死と同様に。

【壱】

十人の人間がいた。彼らは死に至る病を患った。

特効薬はこの世に一本。助かるのは一人だけ。

十人は議論を始めた。つまりは自分の有用性について語り始めた。

一人の大金持ちは自らの築いた富を語った。

一人の医者は自分が救ってきた患者の数を語った。

一人の吟遊詩人は歌によって与えた感動を語った。

一人の政治家は自分がいかに国に尽くしてきたかを語った。

一人の母親は自分を待つ子供について語った。

一人の宗教家は自分が選ばれし約束の民なのだと語った。

一人の若者が自分がこれから経験するであろう希望の未来を語った。

一人の救世主は私が生きることで千の国と万の民が救われるだろうと語った。

一人の死刑囚はもし自分が助からないのであればここにいる全ての人間を殺すだろうと語った。

九人の人間はかくして自らの有用性を語った。

ただ一人、部屋の隅にいた男だけが何も語らずにいた。


【弐】

彼らは三日三晩語り続けた。

時に相手を罵り時に相手を嘲笑いながら自分のことを話した。

そうして更に一月が経った。

話し合いに結末は見えなかった。誰もが生きたいと願っていた。

心は疲れていた。誰もが誰かを憎んでいた。

理由などなしに。生きたいという欲求がただ他人の死を願った。

一人語らぬ男が口を開いたのはそれから更に一月後のことだった。


【参】

男の声を聞いたのはみな初めてだった。

彼はこの状況に遭って一人語らぬ人だったから。

低い声だった。

「私は、これから死にます」

男は言った。死ぬと言った。

九人は驚いた。そして同時に悲しみ、喜んだ。

生の欲求は人の死を喜ぶ程に肥大化していた。

「私はこれから死にます」

男は繰り返し語った。そして残った九人に頼みがあると言った。

「死人に口なしと言います。だからみなさんが約束を破ったとしても私は何も出来ませんし出来ても何もしないでしょう。

 これはお願い事なのですから。」

男はそう言って一人一人に語りかけた。

「お金持ちのあなたへ。もしあなたが生き残ったならそのお金で私達に小さなお墓を立てて下さい」

「お医者様のあなたへ。もしあなたが生き残ったならその手でさらに多くの人を救ってください」

「歌うたいのあなたへ。もしあなたが生き残ったなら私達の歌を唄ってください」

「政治家のあなたへ。もしあなたが生き残ったならあなたの愛した国をこれからも愛してください」

「母親のあなたへ。もしあなたが生き残ったならお子さんより長く生きてあげてください」

「神を信じるあなたへ。もしあなたが生き残ったなら私達のためにあなたの神に祈りを捧げてください」

「まだ若いあなたへ。もしあなたが生き残ったならあなたの道を見つけて下さい」

「救い主のあなたへ。もしあなたが生き残ったなら救いを求める人を抱きしめてあげてください」

「優しかったあなたへ。もしあなたが生き残ったなら私はもう誰も憎まないで生きて欲しい」

何も語らなかった男は低く優しい声で九人に声をかけた。

そして一度優しく笑い目を閉じた。

かくして何も語らぬ男は何も語れぬ男となった。

更に一月が過ぎた。誰も語らぬ一月だった。
 

【四】

最初に言葉を吐いたのは金持ちだった

彼は八人に100ドル札を一枚ずつ渡してから旅立った。

「時は金なり」

彼はその一言のあと、死んだ

次に動いたのは医者だった

彼はかつて自分の受け持った一人の患者宛てに手紙を書いた

彼が初めて受け持ち死なせてしまった患者だった

「それでは、身体に気をつけて」

彼は七人に医者らしい一言を送り手紙を抱いたまま逝った

吟遊詩人は七日かけて歌をつくった

それは愛の歌であり 家族の歌であり 彼の歌だった

歌は終わり彼もまた死んだ

五人は彼の墓前に彼の歌を捧げた

政治家は一冊の本を書き上げた

国を愛した男の本だった

タイトルをつけぬままに彼は生涯を終えた

四人は話し合った結果その本に題をつけた

題名は「私の愛した国」だった

母親は小さな花を育てそれを束ねて飾りを編んだ

「お願いします」

それだけ告げて彼女は逝った

宗教家は最後まで祈りを捧げた

「私と私の友人に祝福あれ」

やすらか笑顔であった

「悔しいなぁ・・・」

若者は残念そうに、本当に残念そうに笑って死んだ

救いの人は亡骸を抱き涙を流して死んでいった



最後に残ったのは一人の死刑囚だった

彼はただ「馬鹿なやつらだ」と呟き薬を飲んだ

そうして小さな花の首飾りを手に取りどこかへと旅立った


【終】

この物語に意味はない。
多くの人間の生と死と同様に。
だが貴方がこの物語に意味を与えてやることは出来る。
多くの人間の生と死と同様に。

ひどく限定的な五輪の話

2004年08月25日 | ログ
今ちょうどNHKで放送されてたオリンピックの新体操がヤバイ

エチオピアの19歳の人らしいんだけど

死人みたいな感じで腕が必要なだけの筋肉だけで構成されてるみたいで

それでいてキレイで

とにかくヤバイ

多分惚れた。いや惚れた

見てない人はどうにかしてこの今さっきNHKで流れたエチオピアの19歳の人を見ましょう

以上ひどく限定的な五輪の話でした。流してください

あー・・・検索してるのに見つからないよ畜生

日本選手の記事は腐る程見つかるんだが

海外選手含めた全出場選手のリストってネットにないのかしら?

私が無知なだけ?

あー、何かカヌー女子カヤックフォア500mで準決勝進出らしいです

こんなこと調べてなければきっと知ることもなかったでしょう。おめでとうございます

ていうか※カヤックフォアって何よ?



※「カヤックフォアとは」で検索してもヒットしない程にマイナーな単語
「カヤックフォア 用語」で検索すると「オリンピックにいらないと思う種目」なんてスレが出てくるのは秘密です

物語を読みました

2004年08月24日 | ログ
詩人:その言葉はあまりに美しく、現実は薄汚れていて

蜥蜴:ま、俺たちはどれだけ望んでも所詮この灰色の世界の住人だけどな

詩人:それでも私は本を読むよ

蜥蜴:いいんじゃない?現実見れる奴は沢山いるし。

詩人:我々は夢に呆ける愚か者か

蜥蜴:悪くない夢さ。ただ一行のエピローグにこんなにも心は踊っているのだから

詩人:確かにね。悪くない

蜥蜴:それじゃあおやすみ。

詩人:おやすみ。明日もまた、素晴らしい世界に出会えますように

はい博士君

2004年08月21日 | ログ
博士:ワショーイ!!ワショーイ!!

蜥蜴:騒々しいにも程があると思わんかね

博士:巷でワシが大人気じゃ!!ワシのワシによるワシがワシで・・・

蜥蜴:お前がバカなのは分かったからとりあえず落ち着け

博士:フッフー!!ヒッヒー!!

蜥蜴:どんな息遣いだソレは・・・

博士:まぁアレだね。尊敬したまえ

蜥蜴:一瞬の勢いでここまで傲慢になれる神経はある意味尊敬に値するね

博士:やっぱし!!やっぱし!!

蜥蜴:いや褒めてないから。その怪しげな小躍りをやめれ

博士:えー・・・ビールのCMで妻夫木聡もやってるじゃん

蜥蜴:いつから貴様は妻夫木聡と同格になった

博士:まるでワシがあの色男より格下と言わんばかりの台詞だね

蜥蜴:・・・まるでお前が妻夫木聡より格下ではないと言わんばかりの台詞だな

博士:えー・・・だってワシってばスゴすきだぜ

蜥蜴:普通の人は自分をスゴすぎとか言わない

博士:一味違うッ!!

蜥蜴:味を悪くしてどうする

博士:はい!!はい!!

蜥蜴:何だよいきなり手を挙げて

博士:当てて!!『はい博士君』って小学校の美人教師の声で当てて!!

蜥蜴:あらゆる観点から却下な要求だな

博士:この際、愛媛から上京した中学校の美人教師でもいいから!!

蜥蜴:何がこの際だ。ていうかむしろ難易度上がってるだろ

博士:はい!!はい!!『はい博士君』

蜥蜴:ひとり芝居か

博士:先生!!ワシ足し算ができます!!

蜥蜴:自慢にならねぇだろ!!

博士:妻夫木君はできません!!

蜥蜴:勝手に妻夫木を馬鹿にするな!!

博士:あとワシ、ピーマンが食べられません

蜥蜴:それはむしろ弱点だろ

博士:妻夫木君は水すら飲めません

蜥蜴:それは弱点とかいうレベルを超えているだろ

博士:てな訳でワシは世界最強

蜥蜴:世界にはお前と妻夫木しかいないのかよ

博士:妻夫木が世界代表ってことで

蜥蜴:本人の知らぬ間にそんな大役に任命するな

博士:むー!!全くもってああ言えばこう言う生き物だ

蜥蜴:それはこっちの台詞だ

博士:いいもん!!砂蜥蜴なんて放っておいてワシは帰る!!オウチに帰る!!

蜥蜴:勝手に空鴉の引き出しを開けるな・・・って何だこの異空間は

博士:世界移動マシーン!!

蜥蜴:時間移動でない辺りが著作権を意識してるな

博士:ばいばい!!ワシの世界へとララバイ!!

(ギューン!!)

蜥蜴:帰ったか・・・

(ドアの開く音)

空鴉:ただいまー。ビール買ってきましたよ

蜥蜴:お疲れ様。・・・悪いんだがこれからもう一っ走りして別の銘柄を買ってきてくれないか

空鴉:えー。外は暑いんですよ

蜥蜴:我慢しろ。我々から世界代表にささやかな報酬を贈ろうではないか

空鴉:?

扇風機が回ってるね

2004年08月20日 | ログ
博士:扇風機が回ってるね

蜥蜴:そうですね

博士:・・・・

蜥蜴:・・・・

博士:・・・・扇風機が回っているね

蜥蜴:そうですね

博士:・・・・

蜥蜴:・・・・

博士:あ゛ー!!ワシが折角話題を振ってやっているのに貴様という男はッ!!

蜥蜴:いやチョイスした話題が微妙すぎだろ。扇風機の回転に相槌以外、どういうリアクションを取れと

博士:もっとこう・・・・色々あるだろが!!

蜥蜴:具体的に言えジジイ

博士:えーと・・・・アレだよ

蜥蜴:どのアレだよ

博士:だからさー・・・・あのアレだよ

蜥蜴:君は具体的という言葉を理解しているかね

博士:ごめんなさい

蜥蜴:分かればよろしい

博士:けどさー・・・・扇風機って何で回ってるんだろうね

蜥蜴:・・・・それは非常に難解な哲学的命題だね

博士:こいつはクルクル回っても全然涼しくないのにね

蜥蜴:それが人間のエゴというヤツだよ。というか扇風機に心があるような発言はやめれ

博士:馬鹿野郎!!

蜥蜴:!!?

博士:扇風機だって・・・扇風機だって心を持った人間なんだッ!!

蜥蜴:いや人間じゃないだろ

博士:この分からずや!!

蜥蜴:何て理不尽な怒りなんだ

博士:お前もいつの日か分かるさ・・・アンドロイドだって生きてることを

蜥蜴:念の為に言っておくが扇風機はアンドロイドではないぞ

博士:その日まで・・・・さようなら、分からずやの爬虫類

(暗転)

(覚醒)

蜥蜴:む・・・夢か・・・

(ドアの開く音)

空鴉:ただいまー・・・って寝てたんですか。珍しい

蜥蜴:あぁ。少々未来のアンドロイド達と先鋭的な首脳会談をね

空鴉:はい?

蜥蜴:・・・・空鴉

空鴉:なんです?

蜥蜴:扇風機が回っているね

空鴉:・・・・そうですね

死神メール

2004年08月17日 | ログ
件名 死神メール

メッセージ

あなたは明日死にます

信じられないかと思いますが実際に明日死ぬのです

さようなら、名も知らない人よ

僕はあなたを殺したくはなかった

だけど僕にも僕の生活があるのです

一日のノルマを達成しなければ会社はお給料をくれません

だから名も知らぬ人よ

ごめんなさい、私はこれからもメールを送り続けるでしょう

一日一通

後悔と自責の念に駆られながら

僕は明日も同じようにメールを送信するでしょう

正しい平和の作り方

2004年08月14日 | ログ

僕らに今必要なのは

無理に手を繋ぎ笑いあうことではなく

ただ認め合うことだろう

僕らに今大切なのは

真の隣人愛を説くよりも

お互いに傷つけあわぬということを

ただ保証しあうことだろう

商品価値

2004年08月11日 | ログ
体にバーコードを貼ってみる

ピッ

レジカウンターには壱万円也と出る也

私は喜ぶ

身体いっぱいにぶら下げた値札を見せつけながら

100円ショップを我が物顔でのし歩く

さぁ跪け愚民ども


『現代に生きる裸の王様名鑑より 値札の王様』