タイ国経済概況(2020年5月)
1.景気動向
(1)タイ中央銀行は3月25日、2020年の経済成長率予測を前年比▲5.3%に、商業・興行・金融合同常任委員会(JSCCIB)は5月7日に同▲3.0~▲5.0%へと下方修正した。また、タイ中銀が4月30日に発表した3月単月の経済報告書によれば、新型コロナウイルス感染対策に伴う各種活動規制があらゆる経済活動に影響を及ぼし、中でも観光業は外国人観光客数が前年同月比▲76.4%の81.9万人、観光収入も同▲77.6%の395億バーツと大きく減少した。輸出額は同▲2.2%であった一方、輸入額は中国のロックダウン措置が緩和されたことで原材料等が増加に転じ、同+4.4%となった。
(1)タイ中央銀行は3月25日、2020年の経済成長率予測を前年比▲5.3%に、商業・興行・金融合同常任委員会(JSCCIB)は5月7日に同▲3.0~▲5.0%へと下方修正した。また、タイ中銀が4月30日に発表した3月単月の経済報告書によれば、新型コロナウイルス感染対策に伴う各種活動規制があらゆる経済活動に影響を及ぼし、中でも観光業は外国人観光客数が前年同月比▲76.4%の81.9万人、観光収入も同▲77.6%の395億バーツと大きく減少した。輸出額は同▲2.2%であった一方、輸入額は中国のロックダウン措置が緩和されたことで原材料等が増加に転じ、同+4.4%となった。
(2)タイ工業連盟(FTI)が4月23日に発表した3月の自動車生産台数は、前年同月比▲26.2%の14.7万台だった。前年同月マイナスは11ヵ月連続。内訳は国内向けが同▲35.3%の6.1万台、輸出向けが同▲17.8%の8.5万台。1~3月の累計生産台数は、前年同期比▲19.2%の45.4万台となった。また、同月の国内販売台数は前年同月比▲41.7%の6.0万台、輸出台数は同▲23.7%の9.0万台だった。1~3月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲24.1%の20.0万台、同▲16.5%の25.0万台となっている。
(3)FTIが4月23日に発表した3月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲18.5%の19.5万台だった。内訳は完成車(CBU)が同▲18.0%の15.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲19.9%の4.4万台。1~3月の累計生産台数は、前年同期比▲8.1%の62.0万台。また、同月の国内販売台数は前年同月比+12.5%の14.7万台、輸出台数は同▲17.3%の8.2万台だった。
2.投資動向
(1)タイ政府は4月19日、「通信を利用した会議に関する勅令(仏暦2563年、西暦2020年)」を官報に公示した。本勅令により参加者がタイ国外にいる場合においても、通信を利用して株主総会および取締役会等の会議に参加できるようになった。なお、通信を利用した会議は、デジタル経済社会省の告示(仏暦2557年、西暦2014年12月4日)のセキュリティ基準に準拠する必要があり、同省の公式ウェブサイトにてガイドラインが公開されている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、民間企業の間では定時株主総会の実施が困難になるといった問題が生じていた。
(1)タイ政府は4月19日、「通信を利用した会議に関する勅令(仏暦2563年、西暦2020年)」を官報に公示した。本勅令により参加者がタイ国外にいる場合においても、通信を利用して株主総会および取締役会等の会議に参加できるようになった。なお、通信を利用した会議は、デジタル経済社会省の告示(仏暦2557年、西暦2014年12月4日)のセキュリティ基準に準拠する必要があり、同省の公式ウェブサイトにてガイドラインが公開されている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、民間企業の間では定時株主総会の実施が困難になるといった問題が生じていた。
(2)タイ投資委員会(BOI)は4月13日、新型コロナウイルス対策に伴い需要が増加した、医療機器等の生産投資を促進する新たな奨励策を決定した。対象となるのは医療機器、医療機器部品、医療用品の原材料となる不繊布、診断・検査キット、医薬品およびその有効成分の生産事業で、3年間の法人税50%減免恩典が追加で付与される。2020年6月30日までの申請と、同年12月末までの生産開始、売上の計上が条件であり、加えて2020~2021年の間は生産量の50%以上をタイ国内向けに出荷する必要がある。また、医療機器等を生産する既存事業についても、生産拡大のための機械等の輸入関税を免除する。2020年9月までの申請と、同年内の輸入が条件。
3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年3月末時点の金融機関預金残高は21兆6,014億バーツ(前年同月比+8.4%)、貸金残高は25兆2,841億バーツ(同+4.1%)といずれも増加。
タイ中央銀行の発表によると、2020年3月末時点の金融機関預金残高は21兆6,014億バーツ(前年同月比+8.4%)、貸金残高は25兆2,841億バーツ(同+4.1%)といずれも増加。
4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のバーツ金利はすべての年限で大きく低下。新型コロナウイルス感染拡大による景気後退懸念で追加利下げへの期待が継続していること等が主な背景。月初、前月末に米連邦準備制度理事会(FRB)が流動性供給の強化策を発表したが、流動性への需要は依然強くタイ国債も換金売りは止まらずバーツ金利は上昇。その後、原油が減産期待で大反発したことでリスクセンチメントが和らいだことや、ソムキット副首相が新しい経済刺激策について述べたこと等で、バーツ金利は大幅に低下。その後、タイ政府は1.9兆バーツ規模の経済対策第3弾を閣議決定し、タイ中銀は0.4兆バーツを金融安定化、0.5兆バーツを中小企業向け低利融資に供給すると発表。これを受けてバーツ金利は一段と低下。中旬に米FRBが最大2.3兆ドルの新たな融資提供措置を発表したことを受け、マーケットの緊張が一層和らぎバーツ金利も緩やかに低下。下旬、原油先物価格が史上初となるマイナス圏に陥ったことでリスクセンチメントが悪化。その直後に発表されたタイ3月貿易統計で輸出が予想に反して堅調な結果となったが、バーツ金利は一段と低下。原油先物価格が反発しプラス圏を回復したことや、予想に反してタイ貿易統計が好調であったこと、タイでの新規感染者数が抑制されていることで行動規制の一部緩和への期待が高まりタイSET指数が上昇。これを受けてバーツ金利も一旦反発も、タイ景気への警戒感および追加緩和期待は根強くすぐに反落となった。月末にかけては緩やかな金利低下が続き、タイ国債10年物利回りは1.21%台、同5年物利回りは0.91%台と前月末対比それぞれ0.26%、0.17%と大幅低下。3ヵ月物は0.50%台と0.25%金利低下。
〈金利動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のバーツ金利はすべての年限で大きく低下。新型コロナウイルス感染拡大による景気後退懸念で追加利下げへの期待が継続していること等が主な背景。月初、前月末に米連邦準備制度理事会(FRB)が流動性供給の強化策を発表したが、流動性への需要は依然強くタイ国債も換金売りは止まらずバーツ金利は上昇。その後、原油が減産期待で大反発したことでリスクセンチメントが和らいだことや、ソムキット副首相が新しい経済刺激策について述べたこと等で、バーツ金利は大幅に低下。その後、タイ政府は1.9兆バーツ規模の経済対策第3弾を閣議決定し、タイ中銀は0.4兆バーツを金融安定化、0.5兆バーツを中小企業向け低利融資に供給すると発表。これを受けてバーツ金利は一段と低下。中旬に米FRBが最大2.3兆ドルの新たな融資提供措置を発表したことを受け、マーケットの緊張が一層和らぎバーツ金利も緩やかに低下。下旬、原油先物価格が史上初となるマイナス圏に陥ったことでリスクセンチメントが悪化。その直後に発表されたタイ3月貿易統計で輸出が予想に反して堅調な結果となったが、バーツ金利は一段と低下。原油先物価格が反発しプラス圏を回復したことや、予想に反してタイ貿易統計が好調であったこと、タイでの新規感染者数が抑制されていることで行動規制の一部緩和への期待が高まりタイSET指数が上昇。これを受けてバーツ金利も一旦反発も、タイ景気への警戒感および追加緩和期待は根強くすぐに反落となった。月末にかけては緩やかな金利低下が続き、タイ国債10年物利回りは1.21%台、同5年物利回りは0.91%台と前月末対比それぞれ0.26%、0.17%と大幅低下。3ヵ月物は0.50%台と0.25%金利低下。
(2)(5月の展望)
先月初はまだマーケットのボラティリティが高く、流動性確保のパニック的な売りが見られたが、各国の中銀の緩和、流動性供給策が徐々に奏功したことや新型コロナウイルス治療薬への期待、一部の国での経済活動再開などでマーケットは落ち着いてきた。ただし、タイ中銀の指摘の通りここ1ヵ月でマーケットは落ち着いてきているが、まだ完全には戻っていないことには留意。今後はコロナ動向もさることながら各国の経済指標を確認する時間帯となるものと考える。タイ国内では18日の第1四半期GDP発表、20日のタイ中銀金融政策委員会(MPC)が注目される。
先月初はまだマーケットのボラティリティが高く、流動性確保のパニック的な売りが見られたが、各国の中銀の緩和、流動性供給策が徐々に奏功したことや新型コロナウイルス治療薬への期待、一部の国での経済活動再開などでマーケットは落ち着いてきた。ただし、タイ中銀の指摘の通りここ1ヵ月でマーケットは落ち着いてきているが、まだ完全には戻っていないことには留意。今後はコロナ動向もさることながら各国の経済指標を確認する時間帯となるものと考える。タイ国内では18日の第1四半期GDP発表、20日のタイ中銀金融政策委員会(MPC)が注目される。
〈為替動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のドルバーツ相場は下落。各国中銀・政府が積極的に政策を打ち出したことでマーケットが徐々に落ち着いてきたことや、一部の国・地域で経済活動再開が検討されたこと等でリスクセンチメントが改善しバーツが買い戻された。月初、トランプ米大統領が新型コロナウイルスとの戦いで非常に厳しい2週間になると述べたことで世界景気への懸念が一層強まり、ドルバーツは一時33.1台後半と直近高値を更新。その後、欧米の一部地域で新型コロナウイルス感染による死者数の増加ペースが鈍化したことや、タイ政府が経済対策第3弾を閣議決定したことが好感されドルバーツも32台で上値重く推移。中旬に発表されたタイ3月消費者信頼感指数が調査開始以来の低水準となり再びバーツ売りに。その後、米FRBが新たな融資提供措置を発表したことでドルバーツも30.6台後半まで下落したが、新型コロナウイルスによる経済への影響への懸念は根強く小反発。中国の3月貿易統計が予想ほど落ち込まなかった一方で、米経済指標が軒並み悪化しドルバーツは下落。さらに新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」や米経済活動再開への期待でドルバーツは一段と弱含んだ。下旬、タイ3月貿易統計で輸出が予想外に堅調であったことが好感されバーツ買いに。原油先物が史上初のマイナス圏に陥りタイSET指数を含むアジア株が全面安とリスクセンチメントは悪化したが、ドルバーツは大きな方向感を見せることなくレンジ内での推移に留まった。原油先物がプラス圏を回復するとドルバーツも緩やかに下落を続け一時32.3割れに。しかし、「レムデシビル」が臨床試験で有効性を示せなかったとの報道や、一部アジアでのロックダウン延長が嫌気されアジア株が全般に軟化するとドルバーツも反発。29日に発表された米第1四半期GDPがリーマンショック直後以来の水準まで大幅に落ち込み、米連邦公開市場委員会(FOMC)でも予想通り政策金利は現状維持、景気認識は厳しい見方となったが、「レムデシビル」の治験で前向きなデータが得られたと伝わったことでリスクセンチメントが改善し、ドルバーツも再び下落し32.3台半ばでクローズ。
(1)(4月の回顧)
4月のドルバーツ相場は下落。各国中銀・政府が積極的に政策を打ち出したことでマーケットが徐々に落ち着いてきたことや、一部の国・地域で経済活動再開が検討されたこと等でリスクセンチメントが改善しバーツが買い戻された。月初、トランプ米大統領が新型コロナウイルスとの戦いで非常に厳しい2週間になると述べたことで世界景気への懸念が一層強まり、ドルバーツは一時33.1台後半と直近高値を更新。その後、欧米の一部地域で新型コロナウイルス感染による死者数の増加ペースが鈍化したことや、タイ政府が経済対策第3弾を閣議決定したことが好感されドルバーツも32台で上値重く推移。中旬に発表されたタイ3月消費者信頼感指数が調査開始以来の低水準となり再びバーツ売りに。その後、米FRBが新たな融資提供措置を発表したことでドルバーツも30.6台後半まで下落したが、新型コロナウイルスによる経済への影響への懸念は根強く小反発。中国の3月貿易統計が予想ほど落ち込まなかった一方で、米経済指標が軒並み悪化しドルバーツは下落。さらに新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」や米経済活動再開への期待でドルバーツは一段と弱含んだ。下旬、タイ3月貿易統計で輸出が予想外に堅調であったことが好感されバーツ買いに。原油先物が史上初のマイナス圏に陥りタイSET指数を含むアジア株が全面安とリスクセンチメントは悪化したが、ドルバーツは大きな方向感を見せることなくレンジ内での推移に留まった。原油先物がプラス圏を回復するとドルバーツも緩やかに下落を続け一時32.3割れに。しかし、「レムデシビル」が臨床試験で有効性を示せなかったとの報道や、一部アジアでのロックダウン延長が嫌気されアジア株が全般に軟化するとドルバーツも反発。29日に発表された米第1四半期GDPがリーマンショック直後以来の水準まで大幅に落ち込み、米連邦公開市場委員会(FOMC)でも予想通り政策金利は現状維持、景気認識は厳しい見方となったが、「レムデシビル」の治験で前向きなデータが得られたと伝わったことでリスクセンチメントが改善し、ドルバーツも再び下落し32.3台半ばでクローズ。
(2)(5月の展望)
先月は各国中銀の積極的な緩和策の効果や新型コロナウイルス治療薬への期待、一部の国・地域で経済活動再開に向けて動き出したこと等でリスク選好度が回復しバーツの買戻しが見られた。また、タイ国内での新規感染者数が減少してきていること、政府の大型経済対策等もバーツ買いの追い風になった。ただし足元出てきている各国の経済指標は極めて厳しく、経済活動が再開されたとしてもすぐに以前の水準に戻れるわけではないことを考えると、マーケットはやや楽観に傾きすぎているように感じられる。今後発表される主要国、アジア各国の経済指標には要注目。なお、今月タイでは18日に第1四半期GDP、20日にタイ中銀MPCが予定されている。
先月は各国中銀の積極的な緩和策の効果や新型コロナウイルス治療薬への期待、一部の国・地域で経済活動再開に向けて動き出したこと等でリスク選好度が回復しバーツの買戻しが見られた。また、タイ国内での新規感染者数が減少してきていること、政府の大型経済対策等もバーツ買いの追い風になった。ただし足元出てきている各国の経済指標は極めて厳しく、経済活動が再開されたとしてもすぐに以前の水準に戻れるわけではないことを考えると、マーケットはやや楽観に傾きすぎているように感じられる。今後発表される主要国、アジア各国の経済指標には要注目。なお、今月タイでは18日に第1四半期GDP、20日にタイ中銀MPCが予定されている。
5.政治動向、その他
(1)タイ政府は4月15日の閣議にて、2021年度(2020年10月~2021年9月)予算案を再編成する計画を承認。各省庁に予算の見直しが命じられた。新型コロナウイルス感染拡大に対応する財源を確保できるよう、原則として投資支出を50%、経常支出を25%削減し、緊急時に備えて中央予算に組み込む。同年度予算は歳出3兆3,000億バーツ、歳入2兆7,770億バーツ、財政赤字5,230億バーツで承認されている。
(1)タイ政府は4月15日の閣議にて、2021年度(2020年10月~2021年9月)予算案を再編成する計画を承認。各省庁に予算の見直しが命じられた。新型コロナウイルス感染拡大に対応する財源を確保できるよう、原則として投資支出を50%、経常支出を25%削減し、緊急時に備えて中央予算に組み込む。同年度予算は歳出3兆3,000億バーツ、歳入2兆7,770億バーツ、財政赤字5,230億バーツで承認されている。
(2)タイ政府は4月28日の閣議にて、非常事態宣言および夜間外出禁止令の期間を5月末まで延長することを決定した。プラユット首相は流行の第2波の発生を抑えるため、感染リスクや感染の拡大状況に応じて段階的に制限を緩和する方向で検討していると説明した。5月3日よりタイ全土を対象に一部サービス業の再開が承認され、条件付きではあるものの飲食店(イートイン)や理髪店などが営業を再開している。
(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。
情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.
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