タイ国経済概況(2024年11月)

1.景気動向
(1)タイ商務省の10月28日の発表によれば、2024年9ヵ月の輸出額は前年同期比+3.9%の2,231.8億米ドル、輸入額は同+5.5%の2,291.3億米ドルで、貿易収支は59.5億米ドルの赤字となった。品目別輸出額は、農産物・加工品が同+5.4%(399.7億米ドル)、そのうち米は同+40.0%(48.3億米ドル)、天然ゴムは同+39.1%(36.7億米ドル)、電子製品・同部品が同+13.5%(388.9億米ドル)、自動車・同部品が同▲7.2%(294.9億米ドル)だった。国・地域別輸出額は、首位が米国で前年同期比+12.5%の406.1億米ドル、次いで中国が同+0.0%の263.9億米ドル、日本が同▲7.3%の174.2億米ドルだった。商務省は、バーツ高や米国大統領選挙等の懸念があるが、年末に向けては農産物・食品の需要増加および輸送費の引き下げが予想されるため、2024年通年の輸出額目標の+2%を達成できるとの見解を示した。

(2)タイ工業連盟(FTI)が10月24日に発表した9月の自動車生産台数は、前年同月比▲25.5%の12.2万台だった。内訳は国内向けが同▲42.3%の3.5万台、輸出向けが同▲15.8%の8.8万台。新型コロナ前の2019年9月の生産台数16.9万台を下回った。また、9月の国内新車販売台数は同▲37.1%の3.9万台で、輸出台数は同▲17.7%の8.0万台。新型コロナ前の2019年9月の販売台数が7.6万台、輸出台数が9.8万台であり、ともに新型コロナ前の水準を下回った。

(3)FTIが10月24日に発表した9月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲6.2%の18.7万台で、15ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年9月の生産台数は20.6万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲13.3%の14.7万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+32.5%の4.1万台。また、9月の国内販売台数は同▲16.7%の11.8万台、輸出台数は同▲2.0%の2.8万台だった。2019年9月の販売台数が13.5万台、輸出台数が2.6万台であり、国内販売台数は減少であるものの、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。

(4)FTIは10月21日、「Eコマースプラットフォームで販売されている安価輸入品による影響」の調査結果を発表した。加盟企業の幹部175人が対象で、35.1%がこの安価輸入品の影響で売上高が減少したと回答した。また、61.7%が「規格を満たさない低品質のものが輸入される」と回答し、67.4%が「オンラインプラットフォーム業者にタイ法人登記および付加価値税の支払の義務付け」、46.9%が「消費者の苦情の受付、規格を満たさない商品を返品できる法律の施行」、45.1%が「規格マーク等の表示の義務付け」が必要だと回答した。一方、回答者の65.7%が「工場直販で消費者に商品を届ける」、64.0%が「国内企業に刺激を与え、競争力を向上させる」と楽観的な回答もあった。


2. 投資動向
(1)10月21日、タイ投資委員会(BOI)は、2024年1月から9月までの投資申請金額が前年同期比+42%の総額7,225億バーツ(約217億米ドル)となり、2015年以来の最高水準に達したと発表した。投資申請件数は、前年同時期の1,501件から+46%で2,195件となった。増加の要因は、外国直接投資(FDI)の大幅な流入であり、9ヵ月間のFDIは、前年同期比+38%の5,466億バーツであった。国・地域別では、シンガポールが1,808億バーツで1位であり、同+125%となった。これは主に、中国および米国企業のシンガポール法人による、電気・電子およびデータセンターへの大規模投資が影響している。2位は中国で1,141億バーツ(同+18%)。3位香港(682億バーツ)、4位台湾(446億バーツ)、5位日本(355億バーツ)と続いた。産業別では。電気・電子機器(E&E)やデジタル(主にデータセンター)等の分野への投資が目立った。

(2)BOIは11月1日、当初2024年末を申請期限としていた4種類の投資促進措置、1) 継続・拡大プログラム、2) 移転プログラム、3) 景気回復のための投資奨励措置、4) 自動車産業 のグレードアップのための投資奨励措置について、申請期限を1年間延長し、2025年末までとすることを承認した。これら4種類の投資促進措置に基づいて2023年1月から2024年9月までに提出された申請金額は、合計6,500億バーツを超えている。BOIはまた、タイで最近発生した洪水の影響を受けた奨励企業を支援する救済措置も承認した。北部および北東部地域で洪水被害を受けた企業に対するBOIの初期調査によると、農業・食品および軽工業部門の奨励企業少なくとも6社が影響を受けた。これらの企業には洪水で損傷した設備の交換に必要な機械に対する輸入関税の免除、さらに損傷または紛失した機械および原材料の控除が認められる。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の9月末時点で金融機関預金残高は25兆1,412億バーツ(前年同月比+2.6%)、貸金残高は30兆7,141億バーツ(同+0.6%)といずれも増加。政策金利は10月16日の発表による2.50%から2.25%に引き下げた。


4. 政治動向、その他
(1)バンコク首都庁では環境汚染に関する対策が続いている。10月29日に乾期に伴うPM2.5の対策として、9地区で低排気ゾーンを指定。5地区で大気中のPM2.5濃度が一般人の健康に影響を及ぼすレッドゾーンに達した場合、排気ガスの基準を満たさないトラックの低排気ゾーンでの通行を3日間禁止すると発表した。また、10月30日には、ごみを分別すると、分別しない家庭よりも収集・処理料金を安く設定すると発表した。新たなごみの収集・処理料金は官報掲載の180日後に施行される予定。

(2)10月18日の観光・スポーツ省の発表によると、2024年9月の訪タイ外国人観光者数は前年同月比+18.3%の252.1万人だった。国別にみると、マレーシアが47.2万人(同+21.8%)とトップになり、中国の47.0万人(同+64.8%)、インドの17.2万人(同+20.9%)と続いた。日本は5位で、9.4万人(同+17.3%)だった。2024年1~9月の訪タイ外国人観光者数は前年同期比+30.1%の2,608.9万人。中国が同+110.7%の525.5万人で大幅回復が続いている。日本は9位で、76.3万人(同+32.6%)だった。2024年の通年目標の前年比+25%を達成できると予測され、観光ハイシーズンに入る11月にThailand Winter Festivalsイベントや外国人観光客向けWOW! Amazing Thailand Passport Privilegesキャンペーン が開催される。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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