「俺の何が間違っているって言うんだ、だったら証明して見せろよ。」
普段あげるはずのないがなり声とともにパンを君に投げつけた。
柔らかいから当然攻撃としては効いてないようだ。が、いかにも苦虫を噛み潰したような顔で落ちたパンを君は睨んでいた。
黙って埃を払う動作をパンに向けて、こちらに背を向けて落ちたパンを拾う。
怒鳴り声あげるのってこんなに喉痛めるもんなんだな。普段は吐き呼吸とともにフッと軽口飛ばすだけだから、
なんて頭の隅でぼんやり考えながら、自分の胸をはね除け突き破りそうなくらいにもがき始めた心臓と焦る熱い肺に自然と意識が行く。
可笑しいよな。
どこか冷静なんだ、パンのことのはずなのに。
僕の反応を最初からわかりきっていたかのような、どこか清んだ君は僕ではなく、拾ったパンと目を合わせながら呟く。
「君もわかっている筈だ。このパンの本当の意味を。」
「意味?」
「わかっているくせに、とぼけたふりをするのは相変わらず十八番芸だね。」
「だったら言ってみろ。パンのことをわかりやすく俺に言えばいいだろう。いちいちまどろっこしいんだよ。」
図星をつかれたからなのか、パンのことだからか。兎に角僕はこの現実が許せない。
頭に血がのぼり余計に使わないはずの喉を酷使して叫んでしまった。
ああ、明日は一言もしゃべりたくない日になりそうだ。
またどこか、冷静な自分がこの険悪した状況を第三者目線で見ている。
本当に冷静なのではなく、頭の中でこうすることで取り乱した自分を落ち着かせているだけなのかもしれないが。
それはさておいて。
顔が真っ赤になっているであろう僕なんぞに目もくれず、君はパンを片手に取って宙にくるくると回す。
僕を煽っているのか?真意は定かではない。
「知っているよね、パンの宿命を。なのに、それでも君が本当にパンが好きだと言い張る。いや、パンが好きだと思い込むことが君自身のための防御反応ってわけね?」
「何を言ってるんだ。俺はパンが好きだ。この気持ちは何者でもない、まやかしなんてものでもない。純粋に好きなだけだ。思い込みなんかじゃない。」
「君…いや、君こそが僕そのものだってこともわからなくなっているみたいだね。猿芝居かはさておいて。このパン、僕には……僕たちには……」
ツヅクッ
パン!🍞🥖🥐