悶(もん)
1
そんながんじょうな扉のむこうに籠ったきりの君
心は悶々としていないかい?
自我の扉 自意識の扉 ひとりで尖っている門
そんな役立たずの囲いなんて壊してしまったらどう?
心は 窮屈な部屋から出たがっているよう
開門! そう叫びたがっているよう なんだけど
閂(かんぬき)を一本 たった一本はずしさえすれば
君の心は 門から青空へとびたつことができるんだけど
2
悶々とするのは若さのあかし かもしれない
たえず心をもてあまして
今日の息さえおもいきり吸えない
いや 今日へ息さえおもいきり吐けない
ひとはどうして
生きて二十歳を越えるのか ただ優しくて
笑う門にくるのは福ばかりではないけれど
閉じこもっていたら 君よ! 青春はちぢこまるばかりだ
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わたしの十代はそれこそ悶々の日々でした。どこから来たのか、どこへ行くのか、何も方向性がないような毎日でした。アパートの三畳一間の戸をしめきり、こたつにもぐって鬱々としていました。
そんなわたしに、いくつかの本が示されました。
椎名麟三の「深夜の酒宴」、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、フランクルの「夜と霧」、サン・テグジュペリの「人間の土地」、キルケゴールの「不安の概念」、そして石原吉郎の詩。
これらの本がわたしに指し示したこと、それは、「生きてみようよ!」ということでした。「聖書があるじゃないか!」ということでした。
せっぱつまっていたわたしは、知らずのうちに神さまに向かって、「助けて!」と叫んでいたのだと思います。