現在のきみへ(2)
大学の希望学部を提出する時が来た。
母さんが思い描く 君の未来と
君が希望する 自身の未来の姿は
イコールじゃない。
でも
もう
いいじゃないか。
就職が心配だと言っても
蓋を開けてみなければ、何もわからない。
母さんは、ちょっと心配しすぎたね。。
そして、一番しんどいのは
母さんが勧めた道を嫌いになってしまわないか
4年間、ずっと君の顔色を伺い、心配し続けることだ。
誰の人生だよ?
君の人生は、まるごと、全部 君のものだ。
「いいんだよ。自分の好きな学部を選びなさい。
お母さんの希望とか、全然気にしなくていいからね。」
君にそう言ったら
私の顔をじっと見て
「うん」
と一言だけ言った。
自由に選べるんだと わかって
ホッとしたかな?
それから
不思議なことに
母さんの肩こりが治った。
え?
息子じゃなくて、母さんの方?
それも、母さんの肩こり??
そっか この肩こりは
息子の進路の悩みから来ていたのか。
母さん、どんだけ 力が入っていたんだろうか。
それからは、進路について、君は気軽に話すようになった。
えー、どうしよ どうしよ と言いながら
学部を記入し始めた君。
結局、君が選んだ学部は
母さんが2番目に推していたところだった。
専門性も身に付けられる。
ここに入学出来れば、最高だ。
君は、君なりに
母さんのアドバイスにも向き合って真剣に考えたんだね。
うん、絶妙な選択だと思う。
ただ、当初の所よりも、難易度は上がってしまった。
次の希望学部は、母さん、推していないところだ。
就職のところで、ちょっと不安だ。
でも、もう何も言わない。
君が行きたければ、それでいい。
ここからは、自分の実力次第。
成績が足りなければ、希望の学部には行けない。
シンプル、そして残酷な世界。
最後の怒涛の日々が始まった。
次から次へと課される提出物、課題の山。
テスト、発表、合唱コンクール、たくさんのイベント
初めて身動きが取れなくなったね。
睡眠時間が2時間。
それが何日も続いて
体が全然動かない。
どうしよう。
君は本当に倒れるんじゃないかって
母さんは、気が気じゃなかった。
そして12月。
あっという間に最後のテストが実施された。
君は、この間、ほとんど寝室で寝てなかったね。
母さんは、体調崩してしまい 君のフォローが全くできなかった。
わー、ごめん、思ったけれど
もう君は、母さんのフォローなど、必要なくなっていた。
もう中学生の頃とは違う。
高校生の勉強に、親の出る幕は無かった。
あんなに、手がかかったのに。
そして12月末の今
君は
第1希望の学部に行ける事が決まった。
羽根は小さくて脆いと思っていたけれど
君は、昔の小さい君じゃない。
これからは
1人で 飛び立っていけるかい
君が決めていく自分の人生は
まだ
始まったばかりなんだ。