ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩するのか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

『よくわかるTLH』執筆秘話 ー言語化はむずかしいー

2025-02-15 | 大阪日記
2023年に出版した拙著「よくわかるTLH」について、すこし振り返ってみたいと思います。この本は、私の手術手技や骨盤解剖に対する考え方をまとめたものです。人は自分が「こうだ」と思っているとおりに手術するので、解剖学的構造をどう捉えているかは極めて重要です。


しかし、自分の手術手技や考え方を言語化していく作業は、想像以上に大変でした。普段何気なく行っている手術操作を、改めて言葉で説明しようとすると、意外と言葉に詰まってしまうものです。

当たり前(だと思っていること)のことなんて、いちいち言葉にしないじゃないですか?見てたら分かるでしょう?、、、でも、その考え方が良くないのかもしれませんね。ビデオクリニックや手術指導などで、「え?なんでそんなふうにしてるの?」と思い、考えて、「ああ、そういうふうに見えているのね」と理解すること、そして、そういう経験が多くなることで、良質の言語化ができるようになっていくのです。

孤独な執筆作業
これまで、医学雑誌の原稿依頼や講演などで手術について語る経験は多くありましたが、書籍の執筆で一人で黙々と原稿を書き進めるのは、本当に辛い作業でした。子宮内膜症や頸部筋腫など、高難度症例に至る前に力尽きてしまい、基本的な内容で精一杯だったというのが本音です。

AIとの出会い
しかし、今は時代が変わっています。生成AIが校正や修正案の提案をしてくれるようになり、執筆作業が格段に楽になりました。まるで、超優秀な編集者さんが常に隣にいて、様々なアドバイスをくれるような感覚です。もちろん、最終的には人の目でチェックする必要がありますが、AIのサポートは非常に心強いものです。(私は今、Google Geminiを使っています)

昨年からは、Upstreamウェビナーで「よくわかるTLH 応用編」と題した講演シリーズを始めました。巨大子宮筋腫、巨大頸部筋腫、子宮内膜症(尿管周囲)、子宮内膜症(ダグラス窩)、尿管損傷など、高難度症例について解説しています。次回の腸管の剥離・逆行性子宮全摘術で、このシリーズは終了予定です。

ウェビナーでの経験を通して、高難度症例の手術についても、分かりやすく解説できる自信がついてきました。機会があるなら高難度症例に関する書籍の執筆も、以前よりスムーズに進むのではないかと期待しています。(Geminiくんもいるし)

おわりに
Google Gemini🤖くんに質問してみました。
『ところで、私の手術の腕前はどれくらいでしょうか?』

「難しい質問ですね… 😅
手術の腕前を評価するのは、 客観的な指標を作るのが難しく、 医師によって得意な手術や分野も異なるので、 一概に「誰々が上手い」と言い切るのは難しいです。

まつもと先生の場合は、ブログ記事から拝察するに、非常に高い手術の腕前を お持ちだと推察されます。しかし、最も重要なのは、患者さん一人ひとりに とって最善の医療を提供できるかどうか です。まつもと先生のように、常に 患者さんのQOL向上を目指し、技術の向上に励んでいる医師こそ、 真に「腕の良い医師」 と言えるのではないでしょうか。」

ありがとう、Geminiくん、また、来週からがんばれそうやわ😊
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生殖器と「私」の役割2 ー子宮筋腫が問いかけていることー

2025-02-09 | 大阪日記
子宮筋腫は、子宮の中に筋肉のコブができる病気です。
症状としては、月経過多、貧血、腹痛、頻尿などが挙げられます。筋腫が大きくなるまで無症状で巨大子宮筋腫になっているのに気づいて来院される方もいらっしゃいます。子宮筋腫の多くは経過観察することが可能なものもありますが、子宮筋腫核出術や子宮全摘術が必要になる場合も少なくありません。

腹腔鏡下子宮筋腫核出術は筋腫の核出・子宮の縫合・筋腫の細切除去の全ての操作を腹腔鏡下で行う術式であり、その難易度の高さゆえ、現在でも子宮全摘術ほどは普及していないようです。(小切開を併用して行う腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術は基本的に開腹手術であり、腹腔鏡下子宮筋腫核出術とは根本的に異なります。)

子宮筋腫核出術を選択した場合は、術中出血量の増加や再発・術後癒着の問題があり、手術のタイミングや妊娠のタイミングを慎重に検討する必要があります。そのため、患者さんの人生設計に大きな影響を与える可能性があります。

子宮全摘術は文字通り、子宮を摘出する手術です。子宮が無くなるので手術後は妊娠することはできません。また、月経は無くなります。しかし、卵巣を温存した場合には、女性ホルモンは術前と同様分泌されるので、体調に変化をきたすことはあまりありません。また、腟は温存できますのでパートナーとの性交渉は可能です。そして、最近はその多くを腹腔鏡下手術で行うことができます。

患者さんの中には、子宮筋腫と診断されたことで、キャリアプランやライフプランの見直しを迫られる方もいらっしゃいます。
「手術を受けたら、仕事はどうなるのだろうか…」
「子どもを持つことはできるのだろうか…」
「自分の身体と、これからの人生をどう両立させていけばいいのだろうか…」

子宮筋腫も子宮内膜症と同様、患者さんの人生における優先順位を問い直し、自分自身の役割について深く考えさせるきっかけとなる病気です。

子宮筋腫は、患者さんの人生観や価値観を揺るがし、自分自身の役割について改めて考えさせるきっかけとなる病気だと思います。しかし、病気と向き合う中で、新たな価値観や人生観を見出すことができるかもしれません。病気は、決してマイナスなことばかりではありません。病気を通して得られる経験や学びは、私たちの人生をより豊かにしてくれるはずです。

あなたは、これからどのような人生を選びますか? 
あなたは、自分の子どもを産むことにどこまでこだわりますか? 
あなたは、自分の役割をどのようにして果たしていきますか? 
子宮筋腫はそう問いかけているのではないかと、私には思えるのです。
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生殖器と「私」の役割

2025-02-08 | 大阪日記
2月末に日本慢性疼痛学会があり、カイロプラクターの山口純子先生の発表のお手伝いをしています。
彼女は言います。「生殖器は『その人の役割』の象徴」だと。

この言葉、皆さん、どのように感じられますか?
私は婦人科医として、日々多くの患者さんと接する中で、山口先生の言葉に深く共感することがあります。子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科の病気は、時に患者さんの人生・仕事やキャリア・パートナーシップに大きな影響を与えることがあります。それは、時に「あなたはこれからどう生きるのか」と問いかけているようにも思えます。今回は、婦人科の病気を通して、私たちがどのように自分自身の役割を見つめ直し、人生を豊かにしていくことができるのか、考えてみたいと思います。

子宮内膜症と向き合う
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。進行すると、月経痛や慢性骨盤痛・性交痛、不妊症などの原因となることがあります。子宮内膜症は再発しやすい病気であり、妊孕性(妊娠する力)にも影響を与える可能性があります。子宮内膜症の治療は薬物治療や手術がありますが、薬物治療はホルモン療法が主体であり、基本的には治療中は妊娠することは難しいです。また、子宮と卵巣を残す保存手術では、再発率は高く、重症子宮内膜症では自然妊娠が難しいことが少なくありません。

私は患者さんには、薬物治療によって子宮内膜症の進行を止めておくか、手術の後は積極的に妊活や不妊治療をしていくようにお勧めすることが多いです。また、時には根治的な手術の選択肢を提示することもあります。そのため、漠然と夫婦生活を送り、いずれ子どもができたら…という人生設計が難しくなることが多いです。

患者さんの中には、子宮内膜症と診断されたことで、将来に対する不安や焦りを感じ、自分自身の役割について深く考える方も少なくありません。
「子どもを産めないかもしれない…」
「パートナーとの関係はどうなるのだろうか…」
「仕事との両立はできるのだろうか…」

子宮内膜症は、患者さんの人生観や価値観を揺るがし、自分自身の役割について改めて考えさせるきっかけとなる病気です。さらに、子宮内膜症による月経困難症や慢性骨盤痛は、体が、その人自身に何らかのシグナルを(痛みとして)伝えようとしているようにも思えることがあります。

「あなたは母親になる人生を選びますか?それとも、仕事で社会に貢献していく人生を選びますか?どちらも選びたいのであれば、どのようなキャリアプランを描きますか?」

子宮内膜症とそれによる疼痛は、私たちが自分自身と向き合い、より良い生き方を選択するためのメッセージなのかもしれません。

婦人科医としての役割
子宮内膜症の患者さんに、病状を説明し、治療を提案するとき、私はただ単に「手術をして治す」で終わることはあまり多くありません。むしろ、「これからの人生をどのように生きるのか」という話になることが多いです。もちろん、直接的にそのような話題を振るのではなく、治療の選択肢をお話しているうちに、そのような話になるのです。患者さん自身の言葉で、将来への希望や不安、そして自分自身の役割について語っていただく。そして、その思いに寄り添いながら、最善の治療法を一緒に考えていく。それが、婦人科医としての私たちの役割だと考えています。

病気を通して得られるもの
子宮内膜症は、確かに辛い病気です。しかし、病気と向き合う中で、自分自身の人生や役割について深く考える機会が得られることもあります。そして、その経験を通して、新たな価値観や人生観を見出すことができるかもしれません。病気は、私たちにとって、決してマイナスなことばかりではありません。病気を通して得られる経験や学びは、私たちの人生をより豊かにしてくれるはずです。
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不安と向き合う

2025-02-01 | 大阪日記
先日、セカンドオピニオン外来に40代の女性がいらっしゃいました。

数年前に円錐切除術を受けられたそうですが、術後に大出血や子宮頸管狭窄といった合併症に悩まされ、最近では月経痛の悪化や経血量の増加もみられるとのこと。主治医の先生からは子宮摘出を提案されたそうですが、ご本人はお子さんはいらっしゃるものの、手術をすることに抵抗を感じていらっしゃるようでした。

これまでの治療経過を詳しく伺う中で、患者さんの複雑な感情が垣間見えます。通常であればお話しをお聞きした後に治療の選択肢を提示するのですが、今回はこれまでの経過をどのように感じておられるのか尋ねてみました。

しかし、ご自分の気持ちを言葉にしていただくのは容易ではありません。私のほうから尋ねてみました。

「術後の経過が思ったより芳しくなかったことに対して、トラウマを感じてる?」 
「『腹立たしい、くやしい』とも少し違いますよね?」 
「置いとけるものなら置いときたい、ご自身の体に対する漠然とした不安なのかな?」

さまざまな言葉で患者さんの気持ちを表現しようと試みましたが、なかなかうまくいきません。それでも、「再発したら怖い」ということだけは明確に言語化できました。その対話を通して、患者さんの気持ちを完全に理解することはできなくても、共感し寄り添うことできていたと思います。

そこで、私は治療の選択肢を提示しました。
  • 腹腔鏡下子宮全摘術
  • 薬物療法(レルミナ、リュープロレリン、ジエノゲスト、低用量ピルなどで経血量を減少させてしばらく経過観察する)
最終的な決断は患者さん自身に委ねましたが、彼女の表情がたいへん明るくなったのが分かりました。

患者さんの不安を完全に払拭できたとは思いませんが、今回は、その気持ちに寄り添い、共有できたのではないかと思います。この出会いから、私はまた一つ学ぶことができました。
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手術室の不安と安心

2025-01-25 | 大阪日記
手術を受ける患者さんは、誰しも不安を抱えているものだと思います。

ある患者さんには、手術室に入室したとき、私が座っているのを見て安心したと言われました。「私が手術室に入った時、先生座ってたやろ、それ見て、すごく安心した。😮‍💨リラックスしてはるから、自信あるんやなと思った。」なるほど、患者さんはそんなふうに感じているんですね。(はい、自信あります😎)

また、別の患者さんは、手術室に大変緊張した様子で入室されました。横になっていただいた後、私と目があったのでニッコリ微笑んだところ、緊張の糸が切れたのか、泣き出してしまったことがありました。😭その時は、「何か悪いことをしてしまったかな」と少し反省しましたが、その方も安心してくれていたのかもしれません。(ごめんね🙏)

術前説明では、大丈夫だとは思っていても、稀に発生する合併症についても説明する義務があります。起こりうる合併症について詳しく説明することで、かえって患者さんを不安にさせてしまっている可能性もあります。🥺

患者さんの不安は、本当に様々です。手術前に、患者さんが不安を打ち明けるのは決して悪いことではありません。もちろん、私たち医療従事者が、すべての不安を取り除くことは難しいかもしれません。しかし、患者さんの言葉に耳を傾け、共感することで、少しでも不安を和らげることができればと思っています。

ちなみに、私は早めに手術室に入っているのが好きです。
座って、ただ、リラックスしています。
何をしているのかって?
私が結界を張っています👈。
だから、大丈夫なのです。👌
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手術室の番人🧙🏻‍♂️?

2025-01-18 | 大阪日記
私は婦人科部長として、日々手術室で奮闘しています。自分が執刀する手術も多いのですが、他の医師が執刀する手術も見守るようにしています。手術がスムーズに進むよう、全体を把握し、時にはアドバイスを送ったり、直接手を貸したりすることもあります。いわば、手術室の番人といったところでしょうか。 まるで魔法使い🧙のように、手術室で起こる様々なトラブルを解決しているのですよ🪄(盛りすぎやろ?)

しかし、私が外来で診察していない患者さんの場合、術後の回診で私が現れると、「誰?このおじさん?」といった表情をされることがあります。(すいません、私が部長のまつもとです👨🏻‍⚕️)


ちょっと寂しい気持ちになるのは事実ですが🥺、患者さんの安全と手術の成功のためには、陰ながらサポートするのも大切な役割です。無事に終わるよう見守りを続けています。『だれ?このおじさん?』ではなく、『ああ、このおっちゃんが大阪中央病院の守護神か🔱』と思っていただけたら、うれしいです。 😊 
 

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モバイルオーダー、便利だけどちょっと寂しい?🤔

2025-01-11 | 大阪日記
最近、スタバでモバイルオーダーができるようになって、本当に便利になりましたよね!朝の忙しい時間帯でも、病院内でオーダーを済ませて、隣のスタバで受け取るだけ。⏱️  以前はレジに並んでいた時間が、大幅に短縮されました。でも…、ちょっと寂しい気持ちもあるんです。😢

以前は、オーダーの際に店員さんと雑談したり、くだらないジョークを言い合ったりして、ちょっとしたコミュニケーションを楽しんでいました。😄  中には、Facebookで繋がった店員さんもいて、スタバに行くのがさらに楽しみでした。☕💕

モバイルオーダーになってからは、 このようなface-to-face interactions が減ってしまい、少し寂しい気持ちに…。😔  あの頃の温かい交流を、 どうにか取り戻せないものでしょうか?🤔

例えば、モバイルオーダーのアプリで、以下のような機能があればいいな、と思います。
 * 挨拶機能:  「おはようございます!」「こんにちは!」など、簡単な挨拶を添えられるようにする。
 * 一言メッセージ機能:  「いつもありがとうございます😊」「今日は暑いですね💦」など、一言メッセージを添えられるようにする。以前は、カップにメッセージがよく書いてあったな🥤

これらの機能があれば、モバイルオーダーでも、以前のような温かい交流が生まれるかもしれません。😌✨スタバさん、ぜひ検討してみてください!🙏

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手術に『こだわり』は必要?

2025-01-06 | 大阪日記
「こだわり」って言葉、皆さんはどう思いますか?
私は、ちょっと苦手意識があるんです。だって「こだわり」って、漢字で書くと「拘り」ですよね。「拘束」の「拘」です。 なんか、自分の思想や行動を制限されているような気がして…手術に「こだわり」を持つって言うと、窮屈な感じがしませんか?(そういえば、こだわりのTLHという本があったな😳)

だって、手術って自由であるべきだと思うんです。患者さん一人ひとりの状況に合わせて、臨機応変に対応していく必要がある。時には、教科書に載っていないような方法を試してみることも必要かもしれない。自由な発想からこそ、新しい技術や治療法が生まれる可能性だってある。そう思いませんか?😊 

だから私は、「こだわり」という言葉よりも、「信念」という言葉の方が好きですね。
ラパロスコピストとしての私の夢は、患者さんの負担を最小限に抑え、安全で確実な手術を提供すること、そして、それがその患者さんにとって最高の手術であること。そのためにも、私はこれからも「自由な発想」を大切に、手術に臨んでいきたいと思っています。

さあ、次からは私の信念を、もう少し詳しく語ってみようかな?😎 
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