北海道子宮内膜症・腺筋症セミナー2023の講演内容
続きです。
なぜ、コミュニケーション(の型)で月経痛が発生してしまうのか?山口純子先生の理論を私なりに解説します。
・ここは私の独断と偏見です。山口純子先生によると生殖器は役割の象徴となる臓器だそうで、自分の役割を超えたところのことを考えると身体がアラートを出すらしいです。これは『おせっかい』ともいえるのですが、『お母さん体質』すなわち面倒見がいいとも言えると思っています。人類、とくにホモ・サピエンスは未熟な状態で生まれ自分のことが自分で出来るようになるまで数年はかかります。なので、我が子が小さいうち(6歳くらいまで)は、過剰なくらいの『おせっかい』が必要です。そうでないと子どもは生き延びることが出来ません。ですから、これは、人間としては好ましいことでもあるのではないかと思います。
・では、月経困難症やPMSにはどのように対処するのがよいのでしょうか?いろんな方法があります。
①LEP(いわゆる低用量ピル、現在は月経困難症に対しても保険適応となっている)、排卵を抑制し、ホルモンの状態としては妊娠に近い(偽妊娠療法)ですから、多少の『おせっかい』は身体がゆるしてくれそうです。
②ジエノゲスト1mg/日(0.5mg×2)は、2mg /日投与の場合とは違ってエストラジオールがあまり下がらないので、偽妊娠療法に少し近くなります。基本的には月経も消退出血もなくなるので、これもよいのではないかと思います。(副作用としては多少の不正出血はあるかも)
③コミュニケーションの面では、感情ことばが使えるようになる(意外と難しい)、そして感情ことばを使えるようになると次、相手が感情ことばを使えるように誘導すること、交換条件で合意することなどですが、これらは容易ではありません。
・では、もしこのような対策(コミュニケーション)で月経困難症が改善したときには、ホルモン療法は不要なのでしょうか?
機能性月経困難症のある女性は将来的に子宮内膜症を発症する可能性が高いと言われています。(すでにある程度の、すなわち診察や画像診断などでは診断できない腹膜病変が存在している可能性がある)つまり、この対策で仮に月経痛が改善したとしても、子宮内膜症の発症リスクが低くなるとは言えないので、痛みがなくなったとしても、子宮内膜症の進行予防を図るうえでLEPやジエノゲストを服用したほうがよいのではないかと思います。
この点については、まだ進行予防という点で医学的なエビデンスがあるとは言えません。でも、もし娘さんの月経痛がひどいのであれば、LEPやジエノゲストを勧めてあげてほしいですね。