先日、セカンドオピニオン外来に40代の女性がいらっしゃいました。
数年前に円錐切除術を受けられたそうですが、術後に大出血や子宮頸管狭窄といった合併症に悩まされ、最近では月経痛の悪化や経血量の増加もみられるとのこと。主治医の先生からは子宮摘出を提案されたそうですが、ご本人はお子さんはいらっしゃるものの、手術をすることに抵抗を感じていらっしゃるようでした。
これまでの治療経過を詳しく伺う中で、患者さんの複雑な感情が垣間見えます。通常であればお話しをお聞きした後に治療の選択肢を提示するのですが、今回はこれまでの経過をどのように感じておられるのか尋ねてみました。
しかし、ご自分の気持ちを言葉にしていただくのは容易ではありません。私のほうから尋ねてみました。
「術後の経過が思ったより芳しくなかったことに対して、トラウマを感じてる?」
「『腹立たしい、くやしい』とも少し違いますよね?」
「置いとけるものなら置いときたい、ご自身の体に対する漠然とした不安なのかな?」
さまざまな言葉で患者さんの気持ちを表現しようと試みましたが、なかなかうまくいきません。それでも、「再発したら怖い」ということだけは明確に言語化できました。その対話を通して、患者さんの気持ちを完全に理解することはできなくても、共感し寄り添うことできていたと思います。
そこで、私は治療の選択肢を提示しました。
- 腹腔鏡下子宮全摘術
- 薬物療法(レルミナ、リュープロレリン、ジエノゲスト、低用量ピルなどで経血量を減少させてしばらく経過観察する)
最終的な決断は患者さん自身に委ねましたが、彼女の表情がたいへん明るくなったのが分かりました。
患者さんの不安を完全に払拭できたとは思いませんが、今回は、その気持ちに寄り添い、共有できたのではないかと思います。この出会いから、私はまた一つ学ぶことができました。