エロゲ感考おきば

エロゲの感想をメインに、時たま考察を綴ろうと思います。ネタバレありで書きますが、注意書きは入れるようにします。

銀色、遥か_瑞羽√感想

2019-02-16 11:41:13 | エロゲ感想


このゲームについて

 雪月に続いて二人目の攻略でしたが、『銀色、遥か』がだいたいどんな感じのエロゲか少しずつ分かり始めてきました。今回は二人分見て共通することというか、二人分見て、雰囲気がどんな感じか書いておこうと思います。

 まず中学生編では、えっちなしでひたすらイチャイチャするピュアな恋愛を体験できます。うぶなヒロインを見れます。
学園編では、えっちを覚え、若さゆえかひたすらセックスに励みます。そして学園編は起承転結の「承」の部分に位置するのかこの編の結びは弱いです。
 そしてアフター編では少し落ち着いてラブラブの同棲生活が始まります。恋から愛に変わるというかヒロインとの生活も穏やかなものになっていきます。一方でヒロインにとっての集大成、何かしらの成功はこの編で達成されるはずで、主人公はそれを支える立場として精一杯応援していきます。何ていうかこれら全ての編の中で、絶妙に変化していくヒロインと、失敗も成功も色々な経験を通して一緒に人生を歩んでいくというのが、このエロゲ独特の雰囲気を出しているのだと思います。そして毎回アフター編の最後の方で今までのヒロインとの思い出を振り返って泣かされます。

瑞羽について
一つ年上の幼馴染のお姉さんでフィギュアスケート選手です。
はじめ、色々世話を焼いてくれるお姉さんのようでしたが、実は根は子供っぽくて、甘えてくる時のギャップが最高でした。
あと瑞ねぇはえっちなことを無自覚に平然とやってのけるところがあって、そこが良くて、その後気づいて恥ずかしくなったりするのがまた可愛かったです。








※この先ネタバレあり(ストーリーに触れるよ)









ストーリーに関して



・中学生編
 中学生編とはいっても瑞ねぇとは小学生の頃から仲良しだったので、ちょくちょく過去の話が絡んできます。例えば、はじめ瑞ねぇは内気な性格だったことや、仲良くするうちに、お姉さんぶろうとし始めたこと、はじめは雪兎がスケートを教えたことなど。そんな過去話の中で、一番グッときたのは瑞羽が初めて金メダルを勝ち取ったときの話です。雪兎は、小学生ながらもなけなしのお小遣いを振り絞り、瑞羽の応援にピンクのバラを一本だけなんとか手に入れてプレゼントして、瑞羽もその気持ちに答えようと雪兎に喜んでもらいたくて頑張り、トライカップという子供のフィギアスケートの大会で一位をとります。この話の何が良かったかというと、もちろんこれだけでも心が暖まる話なのですが、後々まで話が広がっていくところです。フィギュアの大会で一位を取って帰って来ましたが、雪兎はあまり喜んでくれませんでした。雪兎は両親の離婚が決まってしまい自分のせいだと落ち込んでいました。瑞羽は雪兎を元気づけて彼の笑顔のため、フィギュアにより力を入れるようになり、一方、雪兎は、他人に気を使ってばかりで献身的になり、いつしか自分本位の笑顔を忘れてしまう。中学生になった雪兎は気を遣う自分を悲しむ人がいると、自らの幸せを喜んでくれる人がいると気付き、自分の嬉しそうにしない冷めた雰囲気が瑞羽に負担をかけていたと知ります。アイスリンクでそのことを瑞羽に打ち明けて、その後、お互いのしたいことを交互に言っていくわけですが、この青春してるなぁっていう雰囲気に感動しました。
 たしかアリサが出てきてやきもちを焼く瑞ねぇを見れるのがこの章で、あととうもろこしを焼いて食べさせてくれるのもこの章です。アリサが隣にいて、ツンツンしてる瑞ねぇも、精一杯甘やかしてくれる瑞ねぇも最高でした。いい子いい子してくれたり、添い寝したり、頭なでたりしてくれる瑞ねぇにはバブみがたくさんあり、たくさんオギャりました。あと瑞ねぇの鈍感なところというか、匂いが落ち着くといったり、撫でてくれたり距離感がすごく近いのに恋心に無自覚だったり、逆に付き合いだしてから散々甘えていたのにお姉さんでいられていると思ってたりするところが微笑ましかったです。幼馴染以上恋人未満の関係を思う存分楽しませていただきました。
中学生編最高です。一番良かった章でした。唯一の心残りがあるとすれば小学生編がなかったことで、小学生の瑞ねぇに更なるバブみを探求したいところであります。



・学園編

足を怪我してしまった瑞ねぇが復帰するまで支える話。リハビリとかストレッチとかあと栄養バランスのいい食事などを作って瑞ねぇをサポートします。
正直えっちしまくったことと瑞ねぇのアナル開発したことくらいしか覚えてないです。あとイチャイチャもしました。
食事管理ノートという名の生理周期表を完成させたのは驚きでした。



これをためらいなく無自覚にいって、後から恥ずかしくなる瑞ねぇが可愛かったです。

終始イチャイチャギシギシアンアンラブラブしていたのがこの章だったと思います。



・アフター編

 復帰が晴れ晴れしく決まり、瑞羽はいよいよ満を持してオリンピックに参戦。しかし前プログラムのアリサの演技に圧倒され、足がすくみ、結果がふるうことはありませんでした。そんなどんよりとしたスタートをきるわけですが、二人の半同棲生活は絶好調でありまして、一緒にご飯を食べてキスをして、一緒にお風呂に入ってはキスをして、一緒にお布団に入ってキスをして、そして目が覚めて見つめ合って今日もまたキスをする、そんなラブラブな生活を送っておりました。ここから四年次の幌路オリンピックまでがアフター編のお話です。大人になったけど相変わらず子供っぽい一面で甘えてくる瑞ねぇが可愛かったです。あと酔った瑞ねぇも良かったです。



 大会とは関係なくイベントで演技を披露することになるのですが、この時の衣装がウエディングドレスのようで、「婚期が遅れる」と瑞ねぇは落ち込んでいました。そこで雪兎がこのイベントに合わせてプロポーズします。このシーン語彙力が吹き飛ぶくらい凄い感動しました。なんといってもリンクに舞う花びらがピンクのバラなんですよね。昔、最初にプレゼントした花で、しかもウエディングドレスで滑るイベントに合わせてプロポーズを決めるところロマンチックで泣けてしまいました。


 
そしてお涙イベントはこれだけでは終わりません。その後、これではアリサに勝てないってことで、幌路オリンピックの二ヶ月前にプログラムを急遽変更するわけでして、他のワンルームメンバーも手伝って新たなプログラムと衣装を完成させます。当然優勝するだろうと予想ができていたのですが、結局泣かされました。最初、オリンピックのプログラムのシーンがあるのかと思っていたのですがそうではなかったのです。瑞ねぇ演技の直前で集中するため今までのことを振り返っていきます。

 広がる、白銀……
 見渡す限り銀色で……私以外には、誰もいない……
 けど、寂しさや不安は欠片もない……
 確かに感じる温もり……
 すごく、温かい……
 私は、1人じゃない……
 私のスケートには……みんなとすごした日々がある……
 そして、幼なじみとして……お友達として……恋人として……婚約者として……雪兎と歩んできた、1本のラインがある……
 遠い昔から今……そして、遥か明日へと繋がっていく、1本のライン……
 私だけの、羽……
 苦しかったことも、悲しかったことも、楽しかったことも、嬉しかったことも……
 共に歩んできた、仲間がいる……私を応援してくれる、たくさんの人たちがいる……
 今度は、はっきりと見渡せる……
 ここは、幸せで満ちあふれている……
 ようやく、ここまでこられたんだ……
 遥かにあった、世界へ……
 銀色に輝く、世界へ……

 瑞羽の想いはこうだったんだとか、タイトル回収しているところに感心していたりしているといつの間にか、EDが始まりスタッフロールが流れ始めます。そしてダイジェストで今までのたくさんの思い出を振り返えっていきます。
そしてスタッフロールの一番最後に見事に泣かされました。もう今までの頑張りとか、一番初めに金メダルとったときのこととか色んな出来事が思い浮かんできて、しかも不意をつかれたので思わず涙腺が崩れてしまいました。ほんとに良かった。瑞ねぇおめでとう!!




考察とまとめ



 アリサというと、ピンク髪でツインテールで、ところどころロシア語を混ぜてくるような女子フィギュア界の絶対女王でキャラが立っていましたが、サブヒロインで、むしろサブヒロインというのが不自然なまででした。彼女の経歴を追っていくと、人付き合いが苦手だった頃に母親に連れられてスケートを始めたようです。そしてただ滑っているうちに才能を認められ、大人たちの言われるがままにフィギュアスケート選手になりました。そして彼女は勝ち続けた。しかし彼女にとってスケートは楽しいものだったのでしょうか。ただただアイスリンクで滑って、勝って、勝ち続けるうちに勝つのに慣れて喜びは消えていったのではないかとどうしても思ってしまいます。
アリサと瑞羽の掛け合いのシーンで、一番印象深かったのが、アリサが瑞羽に引退宣言するときのシーンです。
瑞羽「なにを弱気になってるのかしらないけど、勝ち逃げは許さないんだから」
アリサ「弱気…?ふふ」
アリサ「弱気というのは、弱さを見せられる相手がいるからこそ、成り立つ」
   「私に、弱気という言葉は、存在しない」
   「世界女王は、常に上だけを見つめていなければならない。夜空に輝く星を掴むように、遥か遠くを目指して」

 絶対的な強者は、誰もついて来られないような先頭をただ一人一番初めに歩まなくてはならないのである。
 彼女は孤独であった、いや孤高と言ったほうがいいかもしれない。孤独というのはどんな体験をも寂しくつまらないものにしてしまうと何かの本で読んだことがありますが、孤高というのも似たような状況なのかもしれません。むしろ優れている部分が役にたってないぶんやるせないというかそういう考えもあります。
 
 結局のところアリサはフィギュアスケートに疲れたのか、飽きていたのかそういう状況だったのだと思います。とはいっても引退宣言をしたのは、瑞羽を焚きつける目的があったようですが。彼女は瑞羽だけが自分と渡り合える近しい存在だと思っていたのでしょう。たった一度きり瑞羽に打ち負かされた。しかしそれは彼女が抱いた感情は、負けた悔しさとかではなくて、憧れでした。トライカップで瑞羽が優勝したとき、アリサは瑞羽の内側に自分にはない特別なものを感じていおり、嬉しさとか楽しさを与えてくれるそれを彼女はずっと求め続けていたのです。もちろんそれの正体は雪兎をはじめとした支えてくれる人間の存在でしょう。そしてそういった応援してくれる人たちの気持ちに応え喜びを分かち合えるのが瑞羽なのだと思います。実力で勝利し続けてきたアリサにとって、支えてくれる人間は必要なかったので、孤高におちいり苦しみも喜びも語られないままトップに君臨し続けたのでした。そんな彼女は弱気になることはなかったけれど、大切な人と支え合う瑞羽をうらやましく思う気持ちはきっとあったのだと思います。あるいはもしかしたらありえたかもしれない自分の姿を、瑞羽に重ねていたのかもしれません。
 考えれば考えるほどアリサが可哀想になってくるのですが、幌路オリンピックで瑞羽と渡り合えたことで一応は救済されたのだと思ってます。

 瑞羽√のテーマみたいなものはおそらく『孤独との戦い』だと思っております。
瑞羽はアリサのプログラムに圧倒され、中国の五輪では結果はふるいません。そのことを彼女はアリサに負けたのではなく、自分自身に負けたのだと言います。フィギュアスケートではアイスリンクの上でたった一人で滑ります。リンク上には応援してくれる人も、一緒に競争する人もいません。そんな中で不安や緊張が生じるのは無理のないことだと思います。
 瑞羽が中学生の頃、ヴィルヴァルディの「冬」をプログラムに取り入れています。この曲自体冷たくて何も寄せ付けないような雰囲気があります。そしてそんなこの曲が象徴するかのように、彼女は雪兎の笑顔のためにがんばりますが一人よがりで空回りが続きます。足の怪我から復帰したときはリンク上を滑ることすら難しくなってしまいます。中国でのオリンピックでは雪兎すら応援に来ないまま、アリサに圧倒され、上手く滑れませんでした。
 そんな瑞羽を支えたのが雪兎たちでした。足のリハビリを手伝い、食事をサポートし、怪我のトラウマの克服を手助けし、落ち込んだ時は慰め、そしてみんなで衣装と音楽を用意して応援しました。瑞羽はたった一人では気弱だったのかもしれませんが、自分を支えてくれた仲間たちとの思い出を元に孤独を克服したのだと思います。弱さとは言いますが、だからこそ支えてくれる人がいて、辛さも嬉しさも共有してきた人がいるからこそ、そんな人のことを想って力を出すことができることは素晴らしいと思います。この強さの源を考えると、弱さというのは案外かけがえのないものなのかもしれません。そして、たった一人冷たいアイスリンクの上、銀色に遥か続く世界で、心を暖めてくれるものは、大切にしてきた人との思い出なのだと知りました。しかし同時にこの寒さとか孤独があるからこそ、思い出がより暖かく感じるのだとも思いました。